【写真】真剣な表情…成田(藤森慎吾)の運転姿
クリエーターの発掘・育成を目的に、映画製作のきっかけや魅力を届けるために生まれた短編映画製作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS」のSeason6がLeminoで配信中。同プロジェクトは「誰でも映画を撮れる時代の幕が開く」を合言葉に2020年に発足し、年齢や性別、職業やジャンルに関係なく、メジャーとインディーズが融合した自由で新しい映画製作に挑戦している。今回は1月24日より配信が始まったSeason6の作品の中から、小栗旬が監督を務める短編映画「1/96」を中心に紹介する。(以下、ネタバレを含みます)
■疲れ切った父親がわずかな自由時間でこぼす本音を描く
小栗が監督を務め、藤森慎吾が主演を担う同作は、仕事と育児に追われ、疲れ果てた男が“逃避行”を通じて、父親の本音をあふれさせ、つかの間の自由を謳歌(おうか)する様子を、モノローグ形式で描き出した短編映画。約16分の作品には、藤森演じる40歳の父親・成田のセリフはほとんどなく、彼の独り言のようなぼやきの他、心の声を藤森のナレーションで構成している。
お笑いコンビ・オリエンタルラジオの“チャラ男”キャラで鳴らした藤森だが、2024年に結婚、そして同年に第一子が誕生したリアル父親でもある。今作の撮影当時はまだ独身だったと劇場公開記念の舞台あいさつで明かしており、「こんなこと言っていいのか分からないですが、今のところこの作品に全く共感していないんです(笑)。監督に怒られちゃいますね」と冗談交じりに振り返っていた。
そんな藤森にオファーした監督の小栗は、“共感していない”藤森を見事に一変させ、劇中では仕事、子育て、人生に疲れ切った主人公に見えるようしっかり演出している。ありとあらゆる不満を垂れ流す成田の逃避行には、かつて独身だった人が懐かしく思うような“平凡でぜいたくな日常”が組み込まれており、そのシーンが妙にリアルなところも見ていて印象に残ったし、思わず共感してしまった。
例えば、カップラーメンを無心ですするシーンや趣味に没頭していた自分を回顧するシーンなどは、劇中の成田も今の生活が嫌なわけではないと吐露していたものの、独身時代のふとした瞬間が懐かしく恋しくなってしまう、“心の叫び”が自然な形で表現されている。
■監督デビュー作は、高校生バンドの人生を描いた青春映画
2010年公開の映画「シュアリー・サムデイ」以来13年ぶりに監督業に再挑戦した小栗。監督デビュー作ではバンドを組む5人組の高校生たちが文化祭中止を抗議するためにとった行動により学校で大爆発を起こしてしまい、中退した後の人生をやり直す姿を描いた。公開当時はまだ今ほど名が通っていない若手俳優だった小出恵介、勝地涼、綾野剛、鈴木亮平、ムロツヨシをキャスティングし、小栗が俳優仲間たちと全力で製作した青春映画に多くのファンから共感の声が寄せられた。
あれから時がたち、20代後半だった小栗も40代となり、今では日本を代表する実力派俳優としてキャリアを積み上げ、満を持して再びメガホンをとったのが「MIRRORLIAR FILMS」プロジェクトで製作された短編映画「1/96」だ。同作では「シュアリー・サムデイ」のような青春群像劇は描かれていないものの、どこか“青臭さ”が抜けない主人公・成田の“青春時代”が劇中の余白からは感じ取れることができる。そしてエモさあふれる映像と藤森の表現力が見事にマッチした見応えのあるショートフィルムだ。
なお、小栗監督作の他には“TAO”名義でモデルとして活躍し、ハリウッドデビューも果たしている岡本多緒が企画、監督・脚本・出演した異母きょうだい同士の2人の会話劇「サン・アンド・ムーン」が1月31日から、ショートフィルムを中心に製作している鬼木幸治監督作で、チンピラとゴルフクラブを握り締めながら笑顔を浮かべる異様な男のやりとり、その後の展開も面白い「FAAAWWW!!!」が2月7日からそれぞれ配信されている。
◆文=suzuki
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