2月18日(火) 1:40
お子さまの誕生とともに準備したいのが、大学進学などに使う教育費です。人生の3大支出に数えられるほど高額ですが、削減はお子さまの夢を経済的理由で諦めさせることにつながるため、節約することが最も難しい支出であると考えられます。
ご両親にとって教育資金を準備することは重大な関心事であり、ファイナンシャルプランナーに寄せられる相談としても多いテーマです。
今回は学資保険で元本割れが生じたりしないか、学資保険の返戻率の仕組みやメリット・デメリットに第三者に相談したいとのことでした。
学資保険はいわゆる「貯蓄性のある(掛け捨てでない)生命保険」で、保険契約が終了する「満期」があります。満期は長くとも大学卒業までの22年間で、それ以後は保険契約を継続することはできません。
満期まで保険契約を維持した場合、支払った保険料よりも受け取る金額のほうが大きくなります。どれくらい増えるかは、返戻率によって表されます。
返戻率は学資保険ごとによって異なりますが、「契約者の年齢」「保険期間」「保険料の払い込み方法」によっても左右されます。2024年の時点では110%前後が多いようですが、パンフレットなどに記載されている返戻率は最高利率のため、契約内容によってはこれを下回ることになります。
また、返戻率は契約時期のほかに保険特約によっても影響を受けます。学資保険には医療費関係の特約などを付けることができますが、これらは無料で付いているわけではないので、特約保険料により掛け捨て部分が多くなり返戻率が低下していきます。特約を多く盛り込み、返戻率が100%を下回れば、満期を迎えても元本割れが生じることになります。
NISAなどで投資を行っている方にとっては、「返戻率108%は高いのか?」と疑問を感じるかもしれません。たしかに、返戻率108%は、年払いで積み立てた場合、年利1%で18年間複利運用することで同様の成果を得ることができるので、より利回りの高い株式や投資信託などを活用すればより大きな成果を得られる可能性があります。
しかし、教育費のような損失が許されず支出の時期が決まっている資金について、元本保証のない投資を行うと、必要なタイミングで十分な資金が確保できないおそれがあるので、元本保証があって現金化しやすい運用を行うようにしましょう。
学資保険は元本保証なので、同じく元本割れのない預貯金や個人向け国債などと比べると利回りが高く、保障の面でも有利といったメリットがあるので教育費の準備に適しているといえます。
一見スキがなさそうに見える学資保険ですが、教育費に特化しているため、2つの大きなデメリットがあります。
ひとつは途中解約した際、元本割れを生じるリスクがあることです。これは教育費以外の用途、例えば医療費などで緊急でお金が必要になった場合に活用するハードルが高くなることを意味します。
もうひとつは、満期があることです。
保険の貯蓄部分は、時間経過とともに返戻率が高まります。終身保険などの貯蓄部分を使わなかった場合は、払い済み保険にしておけば、以後の保険料負担なしで比較的高い利回りで運用成果を得ることができます。
しかし、学資保険は、満期があるので当初契約した返戻率以上の成果を得ることができません。満期後に他の保険に加入しなおすと払い済み保険にするよりも運用成績が低下するおそれがあります。
教育費を学資保険で準備することは、保険効果と元本保証の運用方法として比較的高い利回りが得られるメリットがあります。
一方で途中解約すると元本割れをする、進資金転用がしにくいなどのデメリットがあります。
そこで、学資保険の代わりに終身生命保険の利用をおすすめします。低解約返戻金型終身保険は、通常の終身保険よりも貯蓄性が高く、保険料を抑えているのが特徴です。保険料の払込期間が終了すると解約返戻率が上昇するため、子どもの進学時期に合わせて払込期間を設定することで教育資金として活用できます。
ただし注意点として、小分けにして返戻金を受け取ることができないので、負担額の大きい大学進学費用に重点的に充てることになります。教育資金の準備方法は必ずしも学資保険だけではないので、メリット・デメリットを把握し、他の準備方法と比較・検討することをおすすめします。
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表
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