今年のレトロモビルの主役は、シトロエン DS の70周年だ。イベントのポスターなどにも DS が使用されている。その中でも特に目を引くのが、シトロエン DS 19 Sur Ballons(風船に乗った DS) だ。このビジュアルは、1959年に DS 19 の革新的なハイドロニューマチック・サスペンションシステムによる、滑らかで快適な乗り心地を象徴的に表現したものだ。そして今回のレトロモビルでは、この「風船に乗った DS」が再び会場で展示された。
【画像】70年前に誕生したとは思えない!常に時代の最先端を行っていたシトロエンDS(写真26点)さらに、それを囲むようにいくつかの DS が特別展示されており、その中には1962年のパリで展示された、直立に建てられたDSのトーテムも含まれていた。
シトロエンは、常にその時代の最先端を行く車を生み出してきたが、その中でも DS は、スタイリングやメカニズムの面でまさに「未来の車」だった。その特別な存在である DS の精神は、現在、DSオートモビルというブランドとして引き継がれている。今回の特別展示では、そのフラッグシップモデルであるDS No.8 も公開された。
ルノーの挑戦
同じくフランスのメーカーであるルノーは、好調なルノー5をはじめとする電動モデルを展示。その中でも注目されたのは、1925年にルノーが製作したスピード記録車「40CV デ・レコード」の100周年を記念してデザインされた「フィランテ レコード 2025」の初公開だ。このモデルは、流線型のデザインと先進技術を融合させ、航続距離とエネルギー効率の新記録に挑戦するという。常に記録への挑戦を続けてきたルノーらしい展示といえる。
アドルフ・ケグレスの特別展示
ホール1と2をつなぐ渡り廊下では、毎年特別展示が行われているが、今回はアドルフ・ケグレスの業績を称えた展示が行われた。
ケグレス・システムは、シトロエンのアフリカやアジア探検遠征で使用されたハーフトラックの技術として有名だ。ケグレスはもともと、ロシアのニコライ二世の専属自動車技師として活躍し、極寒や悪路を走行できる車両の開発に取り組んでいた。その中で、ゴム製の連結ベルトを使用したハーフトラック技術を考案。ロシア革命の勃発後、フランスへ帰国し、その技術をシトロエンに提供した。今回の展示では、彼が手掛けた車両の数々が紹介された。
パリオートサロンに出展しなかったメーカーも登場
パリオートサロンでは姿を見せなかったメーカーが、レトロモビルでは大々的にブースを構えているのも特徴的だ。その代表例がメルセデス・ベンツである。
1971年式 メルセデス・ベンツ 600 ”グランド・メルセデス”(W100)は伝説的なオペラ歌手、マリア・カラスが所有していた車両で、シルバーグレー・メタリックとブルーメタリックのツートンカラーが特徴。特別仕様のベッカー・グランプリ・オーディオシステムを装備。
1953年シーズン向けに開発された300 SL ”ホーベル”(W194/11)はレーシングプロトタイプで、角ばったフロントセクションから「ホーベル(ドイツ語で「大工の鉋」の意)」と名付けられた。
1957年から1963年にかけて生産されたオープントップモデルの300 SL ロードスター(W198)。今回の展示では、メルセデス・ベンツ・クラシックによって美しくレストアされた2台が販売された。
日本メーカーの動向
日本メーカーもレトロモビルにブースを構えた。電気自動車を推し進めるフランスにおいて、日本メーカーの電動化の遅れが指摘される中、それを払拭するような展示を行ったのがトヨタだ。トヨタは、電気自動車への取り組みが60周年を迎えることを強調し、最初のハイブリッドカーである「ヨタハチ」から、WRC(世界ラリー選手権)での活躍までを紹介した。
マツダ は、MX-5(ロードスター)35周年を記念した展示を実施。三菱は、4X4(四輪駆動)技術の40周年を記念する展示を行った。
【次回予告】
次回は、3万ユーロ以下のクラシックカーやエンスージアスト向けコーナー、ショップなどの展示をご紹介する予定だ。お楽しみに!
写真・文:櫻井朋成Photography and Words: Tomonari SAKURAI
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