ママ友が子どもに処方された「保湿剤」を自分にも使っているのを目撃! 最近「不適切な利用」が問題になっているけど、少しなら大丈夫? 社会・健康への悪影響もあわせて解説

ママ友が子どもに処方された「保湿剤」を自分にも使っているのを目撃! 最近「不適切な利用」が問題になっているけど、少しなら大丈夫? 社会・健康への悪影響もあわせて解説

2月13日(木) 20:00

冬は乾燥が気になる季節ですよね。特に子どもは肌は皮脂の分泌が少なく、角質層が薄いのですぐに乾燥してしまいます。子どもの医療費は多くの自治体で無料になっているので、気軽に保湿剤を受け取ることができるのですが、処方薬なので基本的には本人が使うものです。しかし「ついでだから」と親自身が使用する場合もあるでしょう。 今回は、親が「子どもに塗るついでに自身の手肌に塗り広げる」という行為に、社会・健康への悪影響があるのか調べてみました。

保湿剤は幅広い用途で処方されている

皮膚科を受診すると、処方薬の中によく「保湿剤」が入っています。筆者の場合、夏の肌の痒(かゆ)みや冬の乾燥、湿疹ややけど跡など、「皮膚疾患といえば保湿剤」というかのように高頻度で処方を受けてきました。
 
重篤な症状でなくても、幅広い用途で処方されているのが医療用の保湿剤です。乳幼児でも使える安全性で、皮膚疾患だけでなく、外傷後の腫れ、腱鞘(けんしょう)炎、筋肉痛、関節炎などにも用いられます。
 
保険適用なので、子どもの医療費が無料になる自治体では、当然ながらこの保湿剤も無料で手に入ります。
 

ヒルドイド事件と、その後

10年ほど前に、ヘパリン類似物質を含む「ヒルドイド」という保湿剤が流行したことがあります。ヒルドイドは70年という長い期間使われてきた医薬品ですが、急に一部の雑誌やインターネットで「保湿効果が高い」と紹介され、美容目的の利用が爆発的に増えたのです。化粧品のように扱われて本来の患者に行き渡らず、大きな問題になりました。
 
全国健康保険協会からは税金や保険料で賄う医療財政を圧迫するとして注意喚起され、厚生労働省は2018年の診療報酬改定で処方量を制限する方針を固めました。2024年10月にはヒルドイドの自己負担額増額が決まり、薬剤師が後発品をすすめる動きが強まるなど問題の波及は続いています。
 
写真1

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後発品の保湿剤2025年1月筆者撮影
 
現在、子どもの医療費が無料である自治体で皮膚科にかかると、ヒルドイドの後発品である保湿剤が多数用意され、薬剤師のおすすめを聞きながら種類を選択することができます。筆者は乳液状の「ラクール」、ローション状の「日医工」を利用したことがあります。基剤が異なるだけで、含まれるヘパリン類似物質の割合は先発品と変わりません。
 

ヘパリン類似物質の効果と副作用

そもそも、ヘパリン類似物質が含まれる保湿剤は、本当にハンドクリーム・美容クリームの代わりになるのでしょうか?
 
ヘパリン類似物質の効果は、以下のとおりです。

・アトピー性皮膚炎における正常発汗を促す
 
・皮膚の血行促進
 
・炎症を沈める

「皮膚の水分保持能力を高めることで乾燥を防ぐ」という効果をそのまま「保湿力が高い」と捉えるのは安易な考えで、「保湿性自体はおまけみたいなもので、優れた保湿剤ではない」という医師もいます。皮膚が潤っているときに塗るものであって、乾いた手肌に塗るものではありません。
 
ヘパリン類似物質の利用を続けると、以下の副作用が出ることがあります。

・皮膚炎
 
・そう痒(発疹や湿疹がないのに、かゆみが出る)
 
・発赤(紅斑ができること)
 
・発疹(赤み、ぶつぶつ、水ぶくれができること)
 
・潮紅(循環血流の増加による充血)
 
・過敏症
 
・皮膚刺激感
 
・紫斑

ヘパリン類似物質を含む保湿剤は、ほかの外用薬と比較しても低刺激で、副作用が少ないとされています。しかし、まったく副作用がないわけではありません。「皮膚の血行がよくなりすぎて赤ら顔になった」という笑えない結果になる可能性もあります。
 
たとえリスクが低くても、ハンドクリーム・美容クリームの代わりとして使うには適切ではないでしょう。
 

まとめ

子どもに処方された薬剤を、「ついでに自分にも塗る」程度で処方の数を増やしているわけではないのなら、医療財政は圧迫されていないので「子どもの医療費無料制度を悪用している」とまではいえません。
 
しかし、疾患の出ていない箇所に、自身に処方されたわけではない医薬品を利用することは、やはり問題があります。医薬品には副作用がありますから、安易に利用するのは控えましょう。ヘパリン類似物質が医薬品と同等の割合で含まれた市販品もあるので、そちらを使うのがよいですね。
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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