Artcurial(アールキュリアル)は、2011年からレトロモビルの公式オークションハウスとして指名され、それ以来、毎年「Artcurial Motorcars Auction」を開催している。このオークションは、レトロモビルの中でも最大のハイライトのひとつであり、数百万ユーロ規模の取引が行われる世界的に注目されるイベントだ。
【画像】今年のレトロモビル、アールキュリアル・オークションに出品された希少なクラシックカー(写真26点)
Artcurialは1975年に設立され、当初は現代美術やデザインを中心としたオークションを開催していた。しかし、2000年代に入ると自動車オークションに本格参入し、短期間で欧州屈指のクラシックカー専門オークションハウスへと成長した。
2025年の注目車両
今年のオークションには、世界的に注目される希少車が多数出品された。特に以下の車両は、コレクターたちの関心を集めた。
・2019年製 マクラーレン・セナ(世界限定500台)
極限のパフォーマンスを追求したスーパーカー。4.0リッターV8ツインターボエンジンを搭載し、カーボンファイバー製ボディによる軽量設計が特徴。
・1904年製 グラディエーター 9L「グランプリ」
1900年代初頭のレース用マシン。9リッターの大排気量エンジンを搭載し、黎明期の自動車レースを象徴する一台。
・1936年製 ドラージュ D6-70 スペシアル(フィゴニ製ボディ)
フランスのエレガントな名車。6気筒エンジンを搭載し、フィゴニによる流線型の美しいボディデザインが特徴。
・1930年製 ブガッティ タイプ51 グランプリ ウジーヌ
ブガッティのワークスカーとして製造され、ルイ・シロンやロベール・ブノワといった名ドライバーによってテスト走行が行われた。その後、スウェーデンのベルティル王子やファッションデザイナーのラルフ・ローレン氏の所有を経て現在に至る。シャシーナンバー51154、エンジンナンバー17を持ち、2.3リッター直列8気筒DOHCスーパーチャージャー付きの歴史的な一台。
・1955年製 メルセデス・ベンツ 300 SL ”パピヨン”
伝説のガルウィングドアを持つスポーツカー。1955年8月9日に工場を出荷後、アメリカへ渡り、4人のコレクターを経て1980年代にイギリスへ移動。現在もオリジナルのエンジンと特注のラゲッジを備え、エレガントなブラックの外装とレッドレザーの内装にレストアされている。
・1966年製 フェラーリ 275 GTB アルミニウム
クラシック・フェラーリの名車。アルミ製ボディの軽量仕様で、V12エンジンを搭載し、高性能を誇る。
・1974年製 ホンダ Z600
ホンダの初期軽自動車。欧州向けに918台のみ製造された希少車で、現存数が少ないため注目の一台。
オークションの様子
今年のオークションは、例年とは異なりホールを変更し、ここ数年で人気の「3万ユーロ以下で買えるヴィンテージカーコーナー」のすぐ隣で開催された。
出品車両は前半2日間がビューイング期間となり、入札希望者のみが会場に入り、直接車両を確認できる。とはいえ、バリケードが設けられているため、中には入れないものの外からその様子を見ることは可能だった。そのため、多くの来場者が希少な車両を一目見ようと集まり、会場は人で溢れていた。
レトロモビルのオフィシャルオークションとしての役割
先日お伝えしたレトロモビルの外で行われた二つのオークションは、レトロモビル初日までに販売が終了した。一方、Artcurialのオークションはレトロモビル会場内で行われ、イベントの佳境を迎える週末に開催されるため、さらなる盛り上がりを生み出す。
Artcurialは、単なるオークションハウスではなく、レトロモビルの公式オークションとしてイベントの魅力を最大限に引き出す存在なのだ。
次回からは、2025年のレトロモビルの様子を詳しくお伝えする。お楽しみに!
・・・次回のレポートに続く
写真・文:櫻井朋成Photography and Words: Tomonari SAKURAI
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