海外でも、年初にはエンスージアストのミーティングが多々、開催される。それは一種、毎年恒例の賀詞交歓会でもあるが、お揃いのブレザーを着込んで集まるクラブやヒストリックカーのそれとは違って、日本では一般の観客も広く巻き込んだカスタム&チューニングカーのイベントが、東京と大阪で1月と2月、それぞれ異なる主催者によって盛り上がりを見せる。「東京オートサロン」と「大阪オートメッセ」のことだ。
【画像】ランボルギーニ・ミウラをリバティーウォーク流に仕上げる!ディテールやインテリアにも注目(写真13点)そして前者の来場者投票によるコンテストのインポートカー部門で最優秀賞に選ばれ、続く2月の大阪でもひときわ大きな注目を集めたイタリアン・エキゾチックがある。それが愛知を拠点とする著名なカスタムカービルダー「リバティーウォーク」が、約2年の歳月を経て完成させたという「LB-シルエット ワークス・ランボルギーニ・ミウラ」だ。
ミウラといえば目敏い人ならご存知のように、今では優に億越えで3億円近い価格で取引される、世界各地のオークションで必ず目玉の競売物件とされるヒストリック&ヴィンテージ。黎明期のランボルギーニが生み出した初のミドシップ市販車で、ベルトーネ期のマルチェロ・ガンディーニによるデザインと、ジャン・パオロ・ダラーラのエンジニアリングが注入された、名車中の名車だ。そこに敢えて改造の手を入れる大胆さが、リバティーウォークが海外からも注目される日本のカスタムチューナーである理由だ。
「ベースは西日本の某所にあったオンボロのミウラP400S。本当は去年、このミウラを発表したかったんですが、間に合わなかったから去年はカウンタックを発表したんです」と、スタッフの一人は述べる。
リバティーウォークはここ数年、他にもフェラーリF40などストリック・スーパーカーのカスタマイズを矢継ぎ早に発表しているが、じつはランボルギーニとの関わりは深くて2008年に遡る。ムルシエラゴ用のオリジナルボディキットを「LB☆パフォーマンス」のブランド名で開発して翌年、アメリカはラスベガスで開催されるカスタムショー、SEMAで発表したのだ。数年後、リバティーウォークは同じくムルシエラゴのボディを電動カッターで切ってはフェンダーをリベット留めする「ワークスフェンダー」を「LB☆ワークス」の名で再び発表。数千万円のスーパーカーを果敢にモディファイするボディワークは、「ワークス」スタイルとしてリバティーウォークの代名詞となった。
同社を率いる加藤渉代表ははそのスタイルを表現するのに昭和の時代の街道レーサー、好みのハッキリ分かれる暴走族スタイルであると、事も無げに言い放つ。今でこそ、過去にあった昭和の暴走族スタイルは、海外では日本のクールなストリート・カルチャーで、国内でもエモーショナルなものと捉えられているが、このカスタムスタイルをハイエンドな車にも臆さず貫き通すからこそ、リバティーウォークは世界的に知られる存在となった。
その後、リベット留めによるワークスと並行してキレイに面で繋ぐ「シルエット」スタイルも確立し、リバティーウォークは日欧のスーパーカーやスポーツカーをベースに、圧倒的なカスタマイズドカーを世に問うていく。
「オリジナルをリスペクトする人もいるし、もちろん賛否両論ありますよ。でも好きなスタイルで乗るを自分たち流に貫く、そのためにミウラらしさを残しながら、リバティーウォークらしさを出すのに苦労しました」
カスタムして手を加えることは、その車に対する好きのあり方のひとつでもある。好きが高じて、オリジナルの車がもつ世界観の純度をより高めてしまうのがリバティーウォークのアプローチでもある。ポルシェ935を彷彿させるロングテール化を施されたRX-7や、チーム・インパルを彷彿させる仕着せをまとったシルエットフォーミュラのS14シルビアなど、誰もが知っている文脈の中にある様式やシルエット、カラーリングの中に、カスタムベースの車を置き換え直すからこそ、リバティーウォークのカスタム手法は観る者に、新鮮な驚きとなって迫ってくる。
シルエットそしてワークス双方のアプローチで仕上げられた、今回のミウラも同様だ。ミウラが元来もつレトロフューチャーかつ空力的なボディラインが、カナード翼をもつ現代的な前後そしてサイドのディフューザーと、意外なほどマッチしている。前後カウルから美しく張り出したフェンダーはブリスター気味ながらも綺麗な面で繋がれ、フェンダーの後端からは猛々しいルーバーが覗く。オリジナルより明らかにワイド化されているのに、アドオン感あふれる巨大リアウイングが、全体のバランスやプロポーションすら引き締めている。当時のランボルギーニには無かったはずのモータースポーツのストーリー、イオタのような異端児を生んだが潰えたレーシング・ブリードが、きわめてIDEAL(イデアル)のサスペンションや横浜アドバンのような日本のパーツサプライヤのエキップメントによって、具体的に実現されたかのような錯覚すら覚えるのだ。
ちなみに加藤代表は、まだシェイクダウンは済んでいないものの、このミウラにもガンガン乗ると公言しているそうで、もちろんミウラ・オーナーが興味あれば同じボディワークを施すことも可能という。
インスピレーションやセンス、果敢な行動力だけではなく、オリジナルの車に対する深い知識とリスペクトがなければ生まれえないカスタムカーだからこそ、リバティーウォークのそれらは、どこへ行っても注目の対象なのだ。
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