爆風スランプの名曲にインスパイアされ、令和と平成を舞台に手紙やノートを通じて育まれた2つの恋の物語を描く映画『大きな玉ねぎの下で』(2月7日公開)。
【写真を見る】神尾楓珠と桜田ひよりを撮りおろし!顔も知らない相手と最初に会う約束をするなら…2人が選んだ場所とは?
夜はバー、昼はカフェになる「Double」という店でそれぞれ働く丈流と美優は、実は顔見知りだと気づかぬまま、連絡用のバイトノートを通じて交流を深めていく。顔を合わせれば互いにそっけない態度を取ってしまうが、文面では素直になれる2人は、やがて武道館で会う約束をする。一方、あるラジオ番組では文通相手との恋が語られていた。
神尾楓珠が夜のバー「Double」でアルバイトをする将来に希望の持てない大学4年生の丈流を、桜田ひよりが自分の夢をまっすぐに追う看護学生の美優を演じ、令和を舞台にした恋物語を紡ぐ。MOVIE WALKER PRESSでは本作でW主演を務める神尾と桜田にインタビュー。撮影現場の思い出や共演の感想、映画誕生のきっかけになった楽曲「大きな玉ねぎの下で」の印象や心の支えにしている音楽、さらに映画の設定にちなんで、素顔を知らない人との恋についても考えを聞いた。
■「ストレートな目力に吸い込まれる瞬間が何度もありました」(神尾)
――丈流と美優という性格が異なる2人に対してどのようなイメージでしたか?演じる際に心掛けていたことを教えてください。
神尾「丈流からは将来への不安や葛藤をリアルに感じたので、作りすぎずに等身大の大学生でいようと心掛けました。キャラクターの色が強い役ではないので、素朴なイメージに映ることも意識していました」
桜田「よくも悪くもまっすぐなところがある美優が、自分がやりたいことや夢に向かって突き進む姿はやっていてすごく楽しかったです。自分の意思をすごく強く持っている子なので、ふとした時に相手の目をきちんと見るタイミングやその瞬間はかなり意識しながら演じました」
神尾「自分の目標に向かって突き進む美優は、丈流から見たらすごく眩しくて。それこそ目を見られるとちょっとドキッとするというか、ストレートな目力に吸い込まれる瞬間が何度もありました」
桜田「まっすぐ目標に向かっているほうが人ってわかりやすかったりするもの。やりたいことがちょっと宙ぶらりんな状態の丈流は掴みどころがないけれど、そこが人間らしさを感じる部分でもあります。神尾さんだからこその丈流が目の前にいる感覚がありました」
――共演をとおして感じたお互いの印象を教えてください。一緒にいるとお互いに笑いをとりに行くというお話も出ていましたが。
神尾「どんなにスケジュールがきつくても常に明るく笑顔でいるのは本当にすごいと思いました。役に入る時のスイッチの切り替えもすごく上手でうらやましかったです」
桜田「神尾さんからは居心地のいい感じの空気が出ています(笑)。私は変なところで緊張したり、気を張ってしまうタイプですけど、神尾さんがいるだけですごくフラットな状態でいられました。初対面では特に構えてしまいがちなのですが、最初から素でいられたのは神尾さんの雰囲気のおかげ。無理せずに済むのですごくありがたかったです。どの現場にも神尾さんの欠片を持っていきたい!と思ったくらい(笑)」
神尾「欠片?」
桜田「別の現場に行った時に神尾さんがいたらなって何度も思って。欠片だけでもそっと忍ばせておいたら落ち着ける気がします(笑)。物事もちゃんと見ているし、動けるところもすごい。力まずにそれができるのは見習いたいし、ちょっとずつでも近づけるようにと頑張っているところです。作品をとおしてすごく影響を与えてもらったと思っています」
神尾「僕も変なとこで緊張しちゃうタイプだから、そういうストレスを少しずつ減らしていけたらというのもあって。主演ということを意識するとどうしても硬くなったりするものだから、意識しないように意識しています(笑)。“主演”というのは呼び名のようなもの。作品はみんなでつくるものという考え方にシフトして、意識しすぎないように心掛けています。ある種他力本願のようなところもあるけれど…」
桜田「本当にありがたかったです!」
神尾「よかったです!」
■「asmiさんのカバーは弾むようなテンポが印象的」(桜田)
――心の声を綴りながら関係を築いていく2つの恋物語をどのように感じましたか?
神尾「令和と平成、どちらの時代のストーリーもそれぞれ魅力的。2つの物語だけど1つのストーリーとしてまとまっているというのは脚本の段階でも感じたし、それがこの映画の魅力にもなっていると思います」
桜田「自分が出ていない平成の物語はどうなっているのか、すごくワクワクしていました。自分が出ている作品はどうしても客観視できないものだけど、今回は自分が出ているシーンも含めていち観客として楽しむことができました。要所要所で心が温かくなる瞬間や共感できる部分があったからこそ、そんなふうに感じられたんじゃないかと思っています」
――爆風スランプの楽曲「大きな玉ねぎの下で」の感想をお聞かせください。
神尾「“ペンフレンド”など馴染みのないキーワードも出てくるけれど、その時代の背景を感じるし、男性側のまっすぐな感情が歌詞に現れていると感じました」
桜田「確かに馴染みのない単語もあるけれど、共感できる部分はいくつも散りばめられていて。すごく聴きやすいと思いました」
神尾「爆風さんはとても男らしい印象で、全力で行っている感じ」
桜田「asmiさんのカバーは弾むようなテンポが印象的ですよね」
神尾「熱全開って感じではないけれど、歌詞がしっかり入ってくる感じがあって。聴こえ方に違いはあるけれど想いはちゃんと伝わってくる感じがしました」
――楽曲「大きな玉ねぎの下で」には文通相手を意味する“ペンフレンド”の女性を一途に想う、ある男性の淡い恋模様が描かれています。共感できるポイントも多い歌詞とのお話もありましたが、お2人には「この曲は自分の物語だ!」と心の支えにしている楽曲はありますか?
神尾「BUMP OF CHICKENさんの『ベル』。やるせなさをストレートに歌っている楽曲で、人間関係や仕事などがうまくいっていなかった時に聴いて救われました。いまでもちょっと嫌なことがあった時などに聴くと気持ちが楽になります。テンションを上げたい時はいきものがかりさんの『いつだって僕らは』。シチュエーションや心情によって聴きたくなる曲、聴きがちな曲は結構ある気がします」
桜田「ロスト・キング feat. サブリナ・カーペンターさんの『First Love』のサビの部分に“まるで初恋みたいだ”という歌詞があります。恋をすると毎回初恋のような気持ちになるという意味。それって恋に限らずすごく大事なこと。いろいろな物事に対して新しいものを発見できた時の高揚感や前向きな気持ちはいつでも持っていたいと思える歌詞にすごく惹かれるし、曲のテンポ感もすごくよくてヘッドフォンとかで聴いているとすごく引き込まれます。仕事前にやる気を出す時にはXGさんの『WOKE UP』。働いている!って感じの曲で、仕事に行く前に気合を入れるために、自分を鼓舞させようと最近聴いている曲です」
神尾「自分の物語だと思うような曲は特にないかな。それよりも気持ちがわかるみたいな感じが多いかも」
桜田「曲に合うような人になろうという気持ちにもなりますよね。曲の主人公も頑張ってるし!みたいな感じで」
神尾「確かに!」
■「いまの時代なら可能性としては全然あるだろうなとは思います」(神尾)
――手紙やノートでのやり取りをとおして育まれる、素顔を知らない人との恋について、どのように感じましたか?
神尾「実際に経験はないけれど、いまの時代なら可能性としては全然あるだろうなとは思います」
桜田「私も経験はないけれど、いまの世の中には起こり得ること。そういう形で恋をするのもいいなと思います。ただ、私自身には多分ないだろうなあ」
神尾「僕は字がきれいな人が好き。字を見て気になって、どんな人なんだろう?という気持ちにはなるかもしれない。字に限らず、なにかしらのきっかけで相手が気になって会ってみたくなる可能性はあるんじゃないかな」
――劇中では自分がやりとりをしている相手のことを知りたくなり、どんな人なのか覗きに行くシーンも。お2人なら、どのタイミングで相手を「見てみたい!知りたい!」と思いますか?
神尾「できるだけ早いほうがいいよね?」
桜田「私もできるだけ早く、かも」
神尾「できるだけ早く知るか、ずっと知らないがいいかな。知るなら自分の芯の部分をさらけ出す前に知っておきたい気もするなあ…」
桜田「そうですよね。連絡事項程度のやりとりなら顔を知らないままでいいけれど、恋愛してみたいという想いが芽生えそうなら、早めに相手を知りたいです。私なら会って直接話したいと思っちゃうはず。だってそのほうが楽しそうだから。恋愛するなら顔は知りたい、顔だけでなくむしろ個人情報は少しでも多く知っておきたいです!」
神尾「顔を知らないからこそ言える悩みもあったりするから、もし自分の芯まで話してしまっていたら、一生顔を知りたくないって思っちゃうかも。いろいろなことをさらけ出したあとに会うのってちょっと恥ずかしいですよね。恋愛感情が出た場合は素顔が見たいと思うかもしれないけれど」
桜田「私はネガディブな感情や自分の悩みをあまり人に話すタイプではなくて。5年くらい一緒にいる友だちに最近になってやっと話せるようになったくらい慎重というか時間が必要なタイプです。正直、何年もかけて素性を知らない相手と築き上げていく関係性は私には難しいと思います」
――ノートや文通をとおして、顔も知らない相手と恋に落ち、素性を知らないまま“大きな玉ねぎの下(武道館)”で会う約束をする2組の恋の物語。神尾さんと桜田さんが顔も知らない相手と最初に会う約束をするなら、どんな場所を選びますか?
神尾「好きなアーティストが一緒ならライブに行きます。お互い好きなものなら、初めてでも話は弾むと思うし。映画の話が出たら『今度その映画を観に行こう!』って自然な流れだからいいんじゃないかな」
桜田「私はごはん屋さんかカフェ。会話が得意ではないので、その人の持つ空気感や話のテンポ、好きな食べ物などを知るためにごはん屋さんに行きます。もし自分とは合わないと思ったらしゃべらずひたすら食べていればいいですし…(笑)」
神尾「黙って食べ続けるの?」
桜田「合わないと思ったら、そうなっちゃうかも。映画館だと映画の世界に入っちゃうから相手を知ることって難しくないですか?映画が終わってから相手を探る時間を設けるんですか?」
神尾「終わってから感想話したりするでしょ」
桜田「私は少しでも早く相手を知りたいから、話したい!とにかく空気感と話のテンポと笑いのツボが合うかどうかは早めに知りたくなると思います」
神尾「笑いのツボって映画を観ていてわかったりしない?」
桜田「そうなると映画はコメディを観るんですか?」
神尾「初めて会うならコメディがいいかもね」
桜田「ホラーとかはどうですか?」
神尾「ホラーもハードル高いんじゃない?」
桜田「日本の作品か海外の作品かによるかな」
神尾「いろいろと探る気満々だね(笑)」
――ちなみに劇中の2人は好きなアーティストが同じというきっかけで距離が縮まっていきます。趣味や好みは違っても距離は縮められる、もしくは、趣味や好みが同じだとグッと惹かれていくパターンも。お2人はどちらのタイプですか?
神尾「同じだったらいいなと思うけれど、趣味や好みが違うのも全然構いません。知らない価値観を知れる楽しさがあって、それはそれで楽しそうだと思います」
桜田「確かに一緒だったらいいなとは思いますけど、されて嫌なこと、うれしいことが一緒の人のほうが大事かも。価値観とまでは言わないですけど、人間的な部分で感じることが一緒だったら趣味とか好みは違っても全然構わないかな。好きなことをやっている時間がお互いにあってもいいんじゃないかなって思います」
取材・文/タナカシノブ
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