かつての鈴木誠也を彷彿とさせる練習量とスイングスピード カープ3年目の内田湘大に期待したくなるワケ

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かつての鈴木誠也を彷彿とさせる練習量とスイングスピード カープ3年目の内田湘大に期待したくなるワケ

2月4日(火) 21:55

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沖縄の青空に、白球が美しい放物線を描いた。広島3年目の内田湘大(しょうだい)が、自主トレ期間の1月、バックスクリーン右へ豪快な一発を放った。中堅122メートルのフェンスを越えるその打球は、たしかな成長を感じさせるものだった。

1月5日から始まったカブス・鈴木誠也らとの自主トレを経て、内田はさらなる進化を遂げた。そして同23日、広島に帰ってきた直後に、自身初となる一軍キャンプスタートが球団から発表された。「勝負の1年」と位置づけるシーズンが幕を開けた。

昨季最終戦でプロ初安打をマークした内田湘大photo by Sankei Visual

昨季最終戦でプロ初安打をマークした内田湘大photo by Sankei Visual





【昨季最終戦で待望のプロ初安打】内田は2022年秋、就任した新井貴浩監督のもと新体制で臨んだドラフトで、利根商(群馬)から広島の2位指名を受け、プロ入りを果たした。

1年目のウエスタン・リーグでは87試合に出場し、打率.163、0本塁打、22打点と苦しんだが、2年目の昨季は106試合で打率.232、4本塁打、31打点と成績を向上させた。だが、本人はまだ納得していない。

入団と同時期に広島の二軍打撃コーチに就任した新井良太コーチの指導を受けながら、内田はプロの世界での成長を模索し続けた。オフにはチームメートの紹介で目標とする鈴木誠也に弟子入り。スイングの力強さは増し、飛距離も着実に伸びていった。

迎えた昨年10月5日、内田は一軍デビューを果たした。シーズン最終戦となったヤクルト戦で「7番・三塁」として先発出場。3回の第1打席では山野太一の内角球を引っ張り、レフト前にプロ初安打を放った。思い切りバットを振り抜いたあと、足元を滑らせながらも懸命に一塁へ駆ける姿は、がむしゃらにプロ生活を送ってきた彼のひたむきな姿勢を象徴していた。

ルーキーイヤーの2023年は、とにかく実力不足を痛感する日々だった。二軍の本拠地・由宇で試合がある日は、夕食後も寮に隣接する室内練習場でバットを振り続けた。納得するまでスイングを繰り返し、気づけば日付が変わっていることもあった。疲労が抜けきらないまま翌日の試合に臨むこともあったが、それすら気にならないほど必死だった。

プロ2年目の昨季も前半戦は思うような結果が出ず苦しんだが、シーズン途中から自主練習の時間を試合後から試合前へと変更した。朝5時に起床し、ストレッチや準備を整えたあと、マシン相手にバットを振った。

朝食後に球場へ移動し、試合前の打撃練習では朝の練習で得た感覚を新井コーチと話し合いながら調整を重ねた。その結果、昨季8月以降は打率.280、2本塁打、11打点と安定感が増し、OPSもシーズン平均の.588から.679に向上した。

【タイミングの取り方を模索】シーズン終了後の秋季キャンプでは2年連続で一軍キャンプに選出。紅白戦や練習試合などの実戦9試合では結果を残せなかったが、首脳陣からは結果を求められていたわけではなかった。

内田の課題は「タイミングの取り方」にある。昨季はノーステップ打法を試したが、秋季キャンプでは「自分に合った形を探る時間」と位置づけられた。新井監督や新井コーチは、20歳の内田がもがきながら方向性を探る姿を温かく見守った。新井監督は言う。

「練習では意識してできるけど、試合で実践するのは難しい。練習と試合を繰り返しながら、少しずつレベルを上げていく。バッティングの成長は、地道な作業の積み重ねだから」

新井コーチも、昨秋最後の紅白戦での2四球を評価した。

「メカニック的にはよくなかったけど、2つフォアボールを取れた。今までなら4タコ(4打数無安打)で、ひどい三振をしていたと思う。3年目は一軍で勝負させたいと思って、2年間やってきました。間違いなく成長しているし、楽しみです」

オフには再び鈴木誠也と自主トレを行ない、悩み続けたフォームがついに定まった。両足を狭めた構えから、投球に合わせてスイングを始動するスタイルに落ち着いた。

「飛距離もだいぶ伸びたし、手応えを感じています。タイミングの取り方が苦手なので、シンプルに、無駄なくいける形にしました。今が一番しっくりきていて、打球や飛距離を見ても、今のほうがいいのかなと思う」

試行錯誤を重ねたからこそ、今の形にたどり着いた。内田自身、最短距離で成長できるタイプではないことを理解している。

「自分は練習しなくても打てるタイプじゃない。とにかく練習して、練習して、練習して......。感覚をつかむには、打ち続けるしかない」

その姿は、かつての鈴木誠也を彷彿とさせる。高卒1年目で一軍デビューした鈴木も、驚くほどの練習量を自主的にこなしていた。成長曲線は鈴木のように順調ではないかもしれない。しかし内田には、それを一変させるだけのスイングスピードとパワーがある。

二軍で主戦場としていた三塁には、侍ジャパンの常連・小園海斗、そして昨秋ドラフト1位指名の佐々木泰(青学大)と強力なライバルがいる。プロ3年目で初めて名を連ねた春季キャンプでのポジション争い。現時点での序列は決して高くはない。しかし、この1カ月で成長した姿と可能性を示せば、首脳陣の評価は変わるはずだ。

スター不在の新井広島で、その穴を埋める存在となるか──。内田湘大の春の戦いに注目したい。

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