メルセデス・ベンツ・クラシックは、2025年2月5日から9日まで開催される「サロン・レトロモビル」において、二台の歴史的名車を披露する。その一台は、伝説のオペラ歌手マリア・カラスが愛用したメルセデス・ベンツ600”グランド・メルセデス"（W100）。この特別な個体は、彼女がヨーロッパを移動する際に選んだ一台であり、短いホイールベースを持つ1971年式のセダンだ。当時ニューヨークに住んでいたカラス自身が、フランスでの登録手続きを手紙で行ったという逸話も残る。

【画像】伝説のオペラ歌手マリア・カラスのメルセデス・ベンツ600などが展示される（写真8点）

「メルセデス・ベンツ600は、王侯貴族から映画・音楽スターにまで愛された特別な一台です。このマリア・カラスが所有していた個体は、当時のラグジュアリーの象徴ともいえる存在。メルセデス・ベンツ・クラシックセンターが専門技術を駆使して慎重にレストアし、販売の準備を整えました。この名車を再びパリに迎えられることを大変誇りに思います」と、マーカス・ブライチシュヴェルト氏（メルセデス・ベンツ・ヘリテージGmbHCEO）は話す。

この個体はシルバーグレー・メタリック（DB180）のボディに、ブルーメタリック（DB387）のルーフという独特のツートンカラーをまとったエレガントな仕様だ。カラスはこの車に特別仕様のベッカー・グランプリ・オーディオシステムを装備し、後部座席から操作できるようカスタマイズ。音楽への深い愛と特別なこだわりを感じることができる。また、オリジナルの整備記録からは、サンレモ、ミラノ、パリなど、彼女が活躍した都市を共に巡ったことがわかる。

さらに、メルセデス・ベンツは、同イベントで2台の300SLモデルも販売する。一台は1955年製の300SL"ガルウィング"（W198）で、現在メルセデス・ベンツ・クラシックセンターでオリジナルを尊重したフルレストアが施されている。展示では、修復途中のボディシェルが披露され、職人たちの精巧な技術と、オリジナルパーツの保存にかけるこだわりを間近で見ることができる。この個体は、当時の仕様通りシルバーグレー・メタリック（DB180）のボディに、ブルーグレーのギャバジン生地のインテリアを備えたエレガントな仕上がりとなる予定だ。

また、もう一台の300SLは、1988年製のR107型で、驚くべきことにオリジナル走行距離3,587kmというほぼ未使用の状態を維持している。サーフブルー（DB900）という非常に珍しいボディカラーに、グレーのレザーインテリア、さらにマニュアルトランスミッションが組み合わされ、スポーティかつ洗練された雰囲気を放つ。

革新の象徴、C111-IIとFIAが展示するメルセデス・シンプレックス
メルセデス・ベンツの技術革新を象徴する車両として、C111-IIも展示される。この1970年製のスーパースポーツカーは、ヴァンケルエンジンの可能性を探る実験車両として開発され、革新的なデザイン手法が取り入れられた。当時の技術的挑戦の結晶ともいえるこの一台は、オリジナルの4ローター・ヴァンケルエンジンとともに展示され、技術愛好家にとっては見逃せない存在となるだろう。

また、FIA（国際自動車連盟）のヒストリック部門は、メルセデス・ベンツ・クラシックのコレクションからメルセデス・シンプレックス28/32hp（1904年式）を展示。この一台は2024年のロンドン・トゥ・ブライトン・ベテランカーランに参加し、20世紀初頭におけるメルセデス・シンプレックスの成功を象徴するモデルである。5,322ccの4気筒エンジンを搭載し、最大出力は32hpを発揮する。

サロン・レトロモビル2025
サロン・レトロモビルは、世界有数のクラシックカートレードフェアであり、パリ・エキスポ・ポルト・ド・ヴェルサイユで開催される。2025年2月5日から9日にかけて、世界中のコレクターや愛好家が集い、貴重なヴィンテージカーが一堂に会する。メルセデス・ベンツが誇る歴史的モデルが、この「美しき自動車の都」パリの舞台でどのような輝きを放つのか、期待が高まる。

【関連記事】
・2024レトロモービルレポート第3弾｜アーキュリアルオークションと、会場で出会ったバイク達
・パリの旧車祭り「レトロモービル」の会場から｜まずは全体の雰囲気をお届け
・レトロモービルで活気づくパリ｜ボナムスのオークションではエンツォが6億円超えで落札！
・75台限定のメルセデス・ベンツSLRマクラーレン・スターリングモス、最終生産車に秘められ「王」の痕跡
・連載：アナログ時代のクルマたち｜Vol.30メルセデス・ベンツSLS