今後の方向性や2025年の注目作は?賞レースで快進撃を続ける独立系映画スタジオ、A24の動向を探る

賞レースで快進撃を続ける独立系映画スタジオ、A24の2025年注目のラインナップとは?

今後の方向性や2025年の注目作は?賞レースで快進撃を続ける独立系映画スタジオ、A24の動向を探る

1月31日(金) 5:30

アメリカのインディペンデント映画を牽引するA24は、映像制作と配給の2本柱、会員組織構築や出版、マーチャンダイズの成功によって単なる独立系映画スタジオから、映画を起点とした複合的なポップカルチャープラットフォームへと変貌を遂げている。日本の配給会社であるハピネットファントム・スタジオは、2023年よりA24が世界配給権を所有する新作映画の独占的国内配給など、独占パートナーシップ契約を締結。そんなA24について、公開作品ラインナップ、制作予定作品など最新情報を一挙にお届けする。
【写真を見る】ニコール・キッドマン、ハリス・ディキンソンによる大人の駆け引き…A24が放つ新時代のエロティックエンタテインメント、『ベイビーガール』にも期待大

■2025年も映画賞レースで強さを発揮

第89回アカデミー賞で作品賞を受賞し、A24が注目されるきっかけにもなった『ムーンライト』

A24は2012年にローマン・コッポラ監督の『チャールズ・スワン三世の頭ン中』の北米劇場配給からスタートし、2016年には初めて制作に携わった『ムーンライト』で第89回アカデミー賞作品賞を受賞、第95回アカデミー賞では『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(22)の作品賞や主演女優賞など5部門、そして『ザ・ホエール』(22)でブレンダン・フレイザーが主演男優賞を受賞し、計6部門受賞という快挙を成し遂げた。海外映画祭にも積極的に出品し、『関心領域』(23、ジョナサン・グレイザー監督)が第76回カンヌ国際映画祭でグランプリを獲得、『ベイビーガール』(3月28日公開)主演のニコール・キッドマンが第81回ヴェネチア国際映画祭最優秀女優賞を受賞している。

『ベイビーガール』では、主演のニコール・キッドマンが第81回ヴェネチア国際映画祭にて最優秀女優賞を獲得

■アレックス・ガーランドやアリ・アスターら常連監督多数!次世代の才能に投資しする、制作スタジオとしてのA24

A24の姉妹スタジオ、2AMなどが制作する作品では、クリエイターの独自性を尊重し、自由な制作環境を約束するスタジオとしての信頼を得ている。『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(24)のアレックス・ガーランド監督は、来日時の取材においてこう語っている。「A24と仕事をする長所は、監督の“自由”にあると考えてます。(中略)例えば、『シビル・ウォー』のような映画でも、彼らは脚本を読んで、『いいね、資金を提供しよう』と言ってくれる。会話はそれですべて終わり。あとは私がそれを台無しにするか、いい仕事をするか、そのどちらかです。だから、私はA24と仕事をすることを選びます」。A24の常連と言えるアレックス・ガーランドやアリ・アスター、そしてバリー・ジェンキンス、ルル・ワン、ダニエルズ、セリーヌ・ソンといった次世代監督らに投資し、映画界の潮流を変える役目を担っている。

A24だから制作できたともいえる、近未来のアメリカを描いた『シビル・ウォー アメリカ最後の日』

1月23日から2月2日までユタ州パークシティで行われている米インディペンデント映画の祭典、サンダンス映画祭ではA24の新作がいくつかプレミア上映された。アヨ・エディブリ、ジョン・マルコビッチ、ジュリエット・ルイス共演、30年前に失踪した伝説のアーティストの新作視聴イベントに参加したジャーナリストが経験する恐怖体験を描いた『Opus(原題)』。『The Legend of Ochi(原題)』は、“オチ”と呼ばれる謎の生物を恐れる人里離れた村を描く。「ストレンジャー・シングス」のフィン・ウルフハード、ウィレム・デフォー、そしてエミリー・ワトソンが出演。『If I Had Legs I'd Kick You(原題)』は、病弱な娘と不在がちな夫に挟まれ追い詰められたリンダ(ローズ・バーン)を中心としたコメディ。グレタ・ガーウィグ主演の『Yeast(原題)』(08)で注目を集めたメアリー・ブロンスタインの久々の監督作。2023年は『パスト ライブス/再会』(23)、2024年は『LOVE LIES BLEEDING(原題)』と『I Saw The TV Glow(原題)』などがプレミアを行い、サンダンス映画祭とA24はとても相性が良い。

恋人関係の2人の女性が、厄介事に巻き込まれていくフィルム・ノワール、『LOVE LIES BLEEDING(原題)』

■注目の公開待機作を一挙紹介!

天才的なIQ、全ての宗教に精通した謎の男…ヒュー・グラントの演技に期待が高まる『ヘレティック(原題)』

今後の作品群にも、A24が掲げる独自性を享受し、オリジナリティあふれる作品を作り続ける監督たちの作品が並ぶ。『ベイビーガール』は、『BODIES BODIES BODIES/ボディーズ・ボディーズ・ボディーズ』(22)のハリナ・ライン監督によるエロティック・スリラー。テック企業のCEOであるニコール・キッドマンが、ハリス・ディキンソン演じるインターンに隠れた欲望を操られる物語。『Heretic』(4月25日公開)の監督は、『クワイエット・プレイス』(18)で脚本を手掛けたブライアン・ウッズとスコット・ベック。モルモン教の布教活動中の若い女性2人が、ヒュー・グラント扮する男の家に足を踏み入れたが最後、脱出不可能な状況に陥る。不治の病を患う娘と母親(ジュリア・ルイス=ドレイファス)を、喋るオウムが死後の世界に導く異色のファンタジー作品『終わりの鳥』(4月4日公開)、『X エックス』『Pearl パール』(ともに22)のタイ・ウェストとミア・ゴスによる三部作ホラーの最終節『MaXXXine』も控えている。

『X エックス』から始まった三部作の最終章『MaXXXine(原題)』の公開も待ち遠しい

そのほかにも、公開待機作には、先に述べた『セイント・モード/狂信』(19)のローズ・グラス監督の新作で、クリステン・スチュワートとケイティ・オブライエンによるフィルム・ノワール『LOVE LIES BLEEDING』、エマ・ストーンがプロデューサーを務めた超常ホラーファンタジー『I SAW THE TV GLOW』。またそれ以降も、A24歴代最大規模の制作費をかけて作られるティモシー・シャラメ主演、ジョシュア・サフディ監督で1950年代の卓球カルチャーを描く『Marty Supreme』、アリ・アスターがプロデュースし、ドラマやMVで活躍するヒロ・ムライの映画初監督作で日本を舞台にした時代劇『BUSHIDO』などの制作を控えている。

2024年のサンダンス映画祭でも注目を集めた、超常ホラーファンタジー『I Saw The TV Glow(原題)』にも期待!

A24は映画を鑑賞体験のみに留まらせずに、AAA24という独自の会員組織を持ち、オリジナルグッズの販売やシナリオブックの販売なども積極的に行っている。ポスターのデザインから広告、グッズ展開まで一貫した宣伝マーケティングでブランディングを行い、映画を鑑賞し楽しむ体験をカルチャーイベントにまで高めている。2025年も、A24作品から目が離せない。

文/平井伊都子


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