【漫画】マスコミの在り方について、その価値を問う記者の話に「権力を持っている人が変わらないと」の声
コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョンマンガ部」。今回は、「ヤングアニマルWeb」にて連載中の『マスゴミ未満』(白泉社刊)を紹介する。原作のみずほ大さんが、2024年11月28日にX(旧Twitter)に本作を投稿したところ、3000件を超える「いいね」やコメントが多数寄せられた。本記事では、原作のみずほ大さんと作画の松浦ショウゴさんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。
■報道機関のあり方を強く考える青年の行動
JBK鳥根支局報道部オフィスで、原稿のルビ(よみがなのこと)を振り間違えた部下を激しく叱責する上司がいた。確認を取ったと言う部下を強い言葉で責める上司に、記者の加山雄一が「それは違くないですか?」と声をかける。しかし3年会社にいて特ダネを持ってきたことのない加山に上司は「口だけ達者」と繰り返しながら加山の頭を何度も叩く。一方デスクが求める「意義のないスクープ」に興味のない加山。人一倍正義感の強い彼は「人の生死より動物園のニュースが先とか…報道機関として終わってます」と告げ取材に向かう。
その後加山は自分と同様に現在のマスコミの異常さを感じていた同期の編集マン・五条ゆかりとカメラマン・柳川友吾の協力を得る。そして加山、五条、柳川の3人は、生放送のニュース番組で行動を起こすことを決意――。
放送中も被害者遺族を悲劇的に映すことに注力し、視聴率を確保しようとする上司。遺族らの気持ちを考えることなく、悲劇的に映すためにその心を傷つける報道。そんな自分の都合を第一に報道する上司や周りの会話を聞きながら、五条は怒りに震えていた。そんな中、番組では事件を取材した加山が映し出される。しかし、打ち合わせと違う加山のようすに困惑するスタッフたち。そんな彼らを気にもせず、加山は「今、どんな気持ちですか?」と台本にはない言葉を生放送の現場で語り始める。そして、現在のマスコミを揺るがす、“報道の使命”を説く…。
“マスゴミ”とも呼ばれてしまうこともある、加山たちマスコミとその異常性。現状を正し、マスコミのあるべき姿を果たすため加山は声明を発表する――。
この記者たちを描いた漫画を読んだ人たちからは、「現実にいてくれたらなぁ」「権力を持っている人が変わらないと」「熱血さが良い」「見習いたくなるまっすぐさ」など、多くのコメントが寄せられている。
■メディアへの思いが変わりつつある今だからこそ読んで欲しい作品
●原作・みずほ大さん
――本作は自分の正義や信念を曲げずに行動するテレビ局スタッフの話でしたが、非常に強い問題提起の意図を感じました。お話の発想の源はどこだったのでしょうか?
みずほ大:日々メディアに対する違和感のようなものを抱えていました。ただそれは漠然としたものでしたし、自分自身が業界の出身でもないので胸にしまい込んでいました。そんな折に白泉社さんでお仕事をさせていただける機会がありまして。そこで担当していただけることになった編集者さんの前職が報道記者だったこともあり、「これは千載一遇のチャンスだな」と。
――ストーリーを考えるうえで気をつけていることや意識していることなどについてお教えください。
みずほ:業界のディテールの部分は出身者の担当さんが教えてくれますので、僕はとにかくそこを活かしながら、エンターテイメントとして成り立つように意識し、気をつけています。あまりに職業としての部分が色濃く出てしまうと、現役や元記者の方々が出版している書籍には及ばないと思ったので、「マンガ」として読者の方々に楽しんでいただけて、且つ少し思惟してもらえればと。
――今後の展望や目標をお教えください。
みずほ:この作品がもっと拡がり、沢山の人に届いて欲しいです。何故なら皆様にも色々と考えて欲しいからです。僕はメディアは悪い部分だけでなく良い部分もあると思います。オールドメディアだけではなく、ネットなどの新規メディアも同様です。どちらも鵜呑みにしてはいけない。自分で考え、自分で本当の情報、必要な情報を手に入れて欲しい。それの一助になるような作品に育っていかせたいというのが当面の目標ですね。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
みずほ:矛盾するような物言いになるかもしれませんが、楽しんで欲しいです。楽しむだけでもかまいません。楽しんで、その先にある何かを、あわよくば感じ取っていただけたらと思います。感じ取れなくても構わないんです。だって「マンガ」ですから。読んでくれた人が面白かった〜って一瞬でも心が豊かになってもらえたら幸いです。
●作画・松浦ショウゴさん
――主人公の加山がマスコミの現状を変えようと決意した際の表情が非常に印象的でした。印象に残る場面を描くうえで大切にしていることはありますか?
松浦ショウゴ:主人公の加山は複雑な過去を抱えた人物なので、表情も単純な感情表現にならないように意識しています。楽しそうに見えても哀愁が漂っていたり、怒りの中にも悲しみのニュアンスを出すことで、印象に残る場面になると嬉しいなと思っています。
――漫画は静止画ですが、デスクの怒りからくる言動などに躍動感がありました。感情を表現するシーンを描く際に意識していることをお教えください。
松浦:躍動感や感情の表現で意識しているのは、あえて頭や手を極端に大きく描いたり、普通は顔に入らない皺を描いたりしています。正確なデッサンを意識しすぎると地味になりがちなので、破綻しない程度にくずしたりして、描きながら調整しています。
――今後の展望や目標をお教えください。
松浦:まだまだ作画技術が足りていないので、もっと作品にリアリティが出せるよう鍛錬を積みたいと思います。
――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします!
松浦:昨今マスコミのあり方について問われるニュースを見聞きする機会が増え、時代が変わる空気を感じています。その時代の変わり目にこの作品が始まったことに特別な縁があると思っています。今が一番この作品を楽しめると思いますので、ぜひリアルタイムで読んでもらえると嬉しいです!
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