箱根駅伝國學院大・前田康弘監督が総合優勝へのカギと捉える山区間の"メソッド対決"「勝とうと思うなら、戦略的にやらなければ」

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箱根駅伝國學院大・前田康弘監督が総合優勝へのカギと捉える山区間の"メソッド対決"「勝とうと思うなら、戦略的にやらなければ」

1月27日(月) 22:00

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来年度の國學院大のエース格として期待される高山豪起photo by AFLO

来年度の國學院大のエース格として期待される高山豪起photo by AFLO





後編:國學院大・前田康弘監督インタビュー

今季、出雲駅伝、全日本大学駅伝を制して臨んだ第101回箱根駅伝で総合3位に終わった國學院大。優勝を明確な目標として臨んだからこそ初めて身に沁みて感じたのが、戦略的に山区間の人材を育成する必要性だった。

山上り・下りに適した人材を発掘し、結果につなげるためには、戦略的な方法論を確立することが重要。前田康弘監督は、悔しさという感情を晴らすには、より戦略的なアプローチが必要と、すでに動き始めている。

【「山に対する私の考え方が甘かった」】山区間への認識をあらためた國學院大の前田康弘監督は、箱根王者の青山学院大を頭に浮かべ、すっきりした表情で口を開いた。

「原(晋)さんの言う『メソッド対決』とは、山に対するそれぞれの考え方のことなのかって。私はそう解釈しました。『年間を通した戦略を立てないと、いつまで経っても勝てませんよ』と言われている気がして。いまは"絶対に勝ったろう"と思っています。本格的に気持ちのモードが入りました。こじ開けますんで。ここからは箱根駅伝の総合優勝をメインに考え、山対策も戦略的に年間ベースで考えていきます」

101回大会が終わって1カ月も経過していないが、早くも特殊区間の有力候補はほとんど絞り込んでいる。あとは選手本人と面談し、本格的な準備は3月から始めていくつもりだ。ただ、「山の特化型ランナー」を育成する考えはないという。

「世界選手権やオリンピックの種目に駅伝があり、そのコースに必ず山区間があれば、別ですけどね。日本代表のクライマーを目指せますからね。でも、現実はそうではありません。箱根駅伝にしか、あのようなコースはない。山のトレーニングを先にこなし、ある程度めどがついてから平地でも練習し、レースにも出る。年間計画をしっかり立てれば、専用機(スペシャリスト)でなくてもいいと思っています。トレーニングするタイミングが大事かなと。どうなるのかはわかりませんが、チャレンジしていきますよ」

あくまで独自のメソッドにこだわり、他大学の手法をそのまま真似ることはない。山下りの6区も同様に早い段階で候補者を絞り、1年間かけて準備を進めていく。昨年度までも山対策はしていたが、前田監督は自らを戒めていた。

「山に対する私の考え方が甘かったです。指導する立場の自分自身からまず変わらないといけないと思いました。負けて気づき、悔しいと思えるかどうかが大事。何が何でも勝とうと思えば、もっと戦略的にやるしかないんです」

山にフォーカスしながらも、新たなチームづくりはさっそく始まっている。今春、卒業するエースの平林清澄(→ロジスティード)、山本歩夢(→旭化成)らが抜けるものの、箱根駅伝の出走メンバーは7人残る。前田監督が2025年度の大黒柱として期待を寄せるのは、キャプテンの上原琉翔、副キャプテンの青木瑠郁、高山豪起の3年生トリオ。2年生の辻原輝、野中恒亨、吉田蔵之介らの経験者たちも、主軸を担う存在になってくるはずだ。

101回大会のスタートラインに立てなかった選手のなかにも有望株はいる。今回は故障の影響で出走を回避した6区経験者の後村光星(2年)をはじめ、前回大会で区間1ケタの鎌田匠馬(3年)、田中愛睦(2年)らも実力は十分。メンバー入りしていた伸び盛りの飯國新太、岡村享一、尾熊迅斗ら1年生たちも台頭してきているようだ。

「平林という精神的な支柱が抜けた穴は大きいですが、新年度も選手層は充実しています。2月の日本学生ハーフマラソン(丸亀ハーフマラソン)、宮古島駅伝で見ていただければ、と思います」

【102回大会での箱根総合優勝に向かって】冬のロードシーズンで前田監督が名前を挙げて、奮起を促すのは山上りの5区で苦杯をなめた高山である(区間14位)。2月2日の別府大分毎日マラソンに平林とともにエントリーし、初めての42.195kmに臨む。ハーフマラソンのタイムは卒業する4年生を除けば、チーム最速の1時間01分42秒。長い距離に強く、指揮官の期待値も高い。

「いま、すごく成長しているひとり。このままいけば、高山の2区もあるかな、というくらい強いですよ。別大マラソンでは平林と勝負してくれると、面白いかな。このマラソンで思いをぶつけて、強くなっているところを見せてもらいたいですね」

チームにプラスアルファをもたらす新戦力からも目が離せない。前田監督が即戦力候補として楽しみにしているのは、今春に高知工高から加わる高石樹。昨年12月の全国高校駅伝の1区で区間3位となり、1月19日の都道府県駅伝でも1区で区間6位の力走を見せたばかり。5000mは13分58秒23の自己ベストを持つが、育成に定評のある指導者はタイム以上のポテンシャルに目を向けていた。

「メンタルは13分30秒くらいの強さがありますね。1区の走りを見ていても、沸点(限界)に達してから粘れますから。きっと距離が伸びても、生きるのかなって。高石がチームに面白い化学反応を起こしてくれるかもしれません。箱根駅伝向きのランナーだと思います。大学で一緒に練習してみないとまだわからない部分はありますが、非常にいい選手に育てていく自信はあります」

高校時代は全国で名を馳せるエリートではなかったが、大学の4年間で世代トップランナーまで成長した平林の姿に重ねていた。1年時から学生三大駅伝のすべてに出走し、2年時からは3年連続で箱根駅伝の2区を走ったエースである。

「『第2の平林』のような存在になるといいな、と思っています。それくらいの潜在能力はあるかもしれません。平地でのスピード勝負よりもタフなコースになればなるほど、力を発揮するタイプです。起伏に強くて、単独走でも押していける。山上りでも、2区でもいけそうな気がしています」

前年度に吹き荒れた"國學院旋風"を一過性もので終わらせるつもりはない。常に先を見据えながらスカウトにも注力する。良いサイクルをつくることにも余念がない。箱根後も忙しなく全国各地に足を運んで、見えないところでもライバルたちとしのぎを削っている。「それこそ、もう一つの箱根駅伝ですよ」と冗談まじりに笑う。

「箱根駅伝は面白いゾーンに入っていくと思いますよ。青学さんは山区間を走ったふたりが卒業しますけど、きっと数年のうちにまた出てくるはず。駒澤さん、早稲田さん、中央さんもいますし、うちも追っかけていきたいです。平林たちの涙を無駄にしてはいけないので。来年度も存在感を示せるように、私ひとりではなく、スタッフ、選手たちみんなでチームをつくっていきます。見ていてください」

大学駅伝界の勢力図は、すでに書き換えられている。強豪の一角として、國學院の歴史を変える新たな挑戦が始まった。

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