「いやー、これ欲しいな!」ケン・オクヤマが話題のシンガーをテストドライブ

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「いやー、これ欲しいな!」ケン・オクヤマが話題のシンガーをテストドライブ

1月23日(木) 3:11

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「彼らのロサンゼルスにあるファクトリーを訪問して、シンガーのやりたいことが解りました。ピニンファリーナで私たちが作ってきたワンオフカー、たとえばグリッケンハウスのために作ったフェラーリP4/5などと比べると、レストモッドの世界はまったく違うものだとそれまで思っていました。コーチビルダー(カロッツェリア)という新しい価値を生み出すモノと違ってレストモッドはクラシックカーを現代風に美しく高いパフォーマンスに仕上げたに過ぎないと。

【画像】奥山清行氏がTHE MAGARIGAWA CLUBでシンガーに乗る!(写真13点)

ところが、シンガーは新しい価値を作るという意味で、思っていたレストモッドとはまったく違うものだったのです。つまり、レストアし、改造するという域を超えたシンガーたる拘りがそこにありました。特にハイパフォーマンスに拘ったモデルでは、フロアパンとクランクケースくらいしかオリジナルのパーツを使っていないのですから。ゼロから新車と同様に行われる開発プロセス、緻密に構築されたアッセンブリーラインがそこにありました。彼らは自動車メーカーとしてのフィロソフィーを持ち、そのファクトリーもまさに自動車メーカーそのものだったのです」と奥山清行は興奮を隠さずに語った。

そう、まさにNASA、テスラをはじめとする新しいテクノロジーの開発拠点でもある、南ロサンゼルスの新しいモーターヴァレーに構築された新ファクトリーでは500名程のスタッフ達が働き、年間200台もの新たなシンガーを生み出しているのだ。ちなみに今回、モントレーカーウィークでシンガーのファウンダーであるロブ・ディキンソンと”デザイナー同志”意気投合した奥山がファクトリーへ招待を受けたのだ。

シンガー・ヴィークル・デザインは2009年にロブ・ディキンソンが設立したポルシェ911(それも964のみ)を素材として彼ら流に仕立て上げる”レストアラー”である。ナロー911テイストのクラシックスタディは大きな反響を呼んだ。CFRP製の軽量で美しいボディワークや、レザーを使用しながらもナロー系の世界感をエレガントに表現したインテリア、そして何よりシャープな911パワートレインのテイストを活かしつつも普段使いを可能にする使い勝手など、世界中のスポーツカーファンが、ロブのこだわりあるレストレーションに首ったけとなった。

「911へのパッションは幼少のころにすでに私に根付いていました。しかし、私は同時に音楽を作るというパッションにも取りつかれていました。バンド活動も成功をおさめ、忙しくなって911への取り組みは少しお預けとなりましたが、止むに止まれぬ想いでシンガーのプロジェクトを始めたのです」とロブ。

イギリス生まれのロブはキャサリン・ホイールというバンドで成功を収めたが、その前にはアート・カレッジでアートデザインを学び、続いてコベントリー大学でデザインを専攻。さらには、ロータスに籍を置き、ピーター・スティーブンスらと共にカーデザインに没頭した時期もあるという多才さだ。その彼がシンガー・ヴィークル・デザインのファウンダーであり、すべてのモデルのデザイナーでもある。レストアラーといえば、オイルまみれの世界をイメージするかもしれないが、ロブはタブレットやPCを駆使して理想のモデルを構築するというデザイナーの世界で奮闘しているのだ。

今回はクラシックターボとDLSターボという最新ラインナップがシンガーの日本代理店となったコーンズのアレンジで、日本へと送りこまれた。彼らのTHE MAGARIGAWA CLUBにて初のサーキットデビューだ。現在受注を受けているモデルはクラシックターボとDLSターボのレストアサービス。クラシックターボは空冷ポルシェのアイコンの一台でもある”930ターボ”へのオマージュであり、ブロック以外はすべてオリジナルの2バルブのシリンダーヘッドのエンジンが搭載される。DLSターボは4バルブヘッドのツインターボエンジンが用意される。1977年SCCAトランザムシリーズで圧倒的な勝利を遂げたポルシェ934/5へのオマージュモデルであり、最高出力700ps+を誇る。どちらも生産台数限定モデルであり、オーダーを入れる顧客は964のドナーカーを用意する必要がある。これだけの凄いことを行いながらも、オフィシャルには”レストアラー”と自らを称すところがシンガーのユニークなポイントだ。

今回の2台は顧客へプレゼンテーションを兼ねて日本におけるシェイクダウンを行った。ロブも主要スタッフを率いて現場に訪れ、そこに招待された奥山との会話も弾む。ロブと奥山の二人が盛り上がるのもワケがあるのだ。カーデザイナー同志であるという点はもちろんだが、奥山は1990年~1992年までポルシェのデザイナーとして996、ボクスターをはじめとして多くのプロジェクトに関与したからだ。

「あの涙目ヘッドライトは空力特性の向上と共に生産効率を上げるために考案したんだ。でも僕は丸目が一番好きなんだけどね」と奥山が語れば、「そうなんだよね、僕も72年までの低いバンパーとターボフェンダーが好きでね、現代のタイヤを組み合わせたりや911デザインの破綻を直してたらここまで来ちゃったんだ。そしたら今度はビッグバンパーも弄りたくなってね」とロブ。二人のポルシェのデザインの会話は終わることを知らない…

奥山がクラシックターボのステアリングを握ると、ロブは早速パッセンジャーシートへ乗り込んだ。二人を乗せたマシンはTHE MAGARIGAWA CLUBの高低差の大きいタイトなコースへと飛び出していく。パドックからも、二人が盛り上がっている様子が手に取るようにわかる。どうやら、ロブはガンガン踏み込めとあおっているようだ(笑)

「一言で言って、この車の外観は 911ですが、中身はまったく違います。僕も964は長く乗ってきましたが、ステアリングはシャープだし、トランスミッションも別物で、シフトが気持ちいいことこの上ない。スロットルのオンオフで、安心して挙動をコントロールできるし、いやー、これ欲しいな!この車は私のイメージにある、レストモッドじゃ全然なくて、これはシンガーという新たなスポーツカーですよ。ハンドリングやシャーシチューンも僕の友人のプロレーサー、ダリオ・フランキッティが担当しているし」と奥山はファクトリー見学の時以上にエキサイトしている。

そう、あの最新のテクノロジーを活用したコンポーネントを少量生産するファクトリーがまさしく新しいシンガーというまったく新しいスポーツカーを構築したのだ。冒頭でも語ったように、奥山に言わせれば、レストモッドという存在への偏見がなくなったというか、殊シンガーに限ってはレストモッドであるかどうかなどという問いは意味をなさないほどの新しい価値を構築したと高い評価をしている。

「シンガーがロブの911への情熱から生まれたことは間違いないですが、彼は最初からここを目指して突き進んできたわけではないとも話してくれました。それはコーチビルダーとして情熱でワンオフカーを作ってきた私にもよくわかります。彼らはオリジナルを尊重しながらレストアしているうちに、結局、存在すらしなかった理想の911を追って全部作り直すということになってしまったんです。そして台数を作るうちにどんどんノウハウも貯まるし、新しいテクノロジーも使えるようになる。ポルシェのコンセプトを尊重し、情熱をもって作っていくと、そのまま作ってもしょうがないというレベルになってしまったということなのです」と奥山は結論づけた。

なによりデザイナーであるロブは顧客をよく見ている。言うまでもないが、デザインするというのは線を引くだけではない。911ファンとしてどんなシフトフィーリングに感銘するか、はたまたどんなシートのクッションがしっくりくるか…そんなロブのこだわりがまさにシンガーの魅力を作り上げているのだ。


文:越湖信一写真:SINGER取材協力:SINGER
Words: Shinichi EKKOPhotography: SINGER
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