1月21日(火) 2:00
ガソリンには、冬用と夏用があります。とはいえ、そのような名称で販売されているわけではないため、購入者が選択することはできません。石油メーカーが、「気温が低いシーズン用」と「気温が高いシーズン用」にガソリンを調整して販売する仕組みです。
冬用と夏用に分ける背景には、ガソリンが持つ「揮発性」という特性があります。ガソリンの沸点は35〜180度のため、気温が高くなると活発に気化し、気温が低くなると気化しにくくなります。
季節による温度変化に対応するために、夏は気化しにくく、冬は気化しやすくなるようにガソリンを調整しているのです。
ガソリンの切り替え時期は、明確に「何月何日から」と決まってはいないようです。ただし、多くのガソリンスタンドでは、夏用から冬用への切り替えは10月頃、冬用から夏用への切り替えは5月頃としています。
冬用と夏用のガソリンは、気温の変化に対応するように調整されています。燃料を季節ごとに最適化し、車両のエンジン性能を安定させるためです。ここからは、冬用と夏用のガソリンが持つ、それぞれの特徴について解説します。
冬用のガソリンは、気温が低い状態でもエンジンがかかりやすいように作られています。冷えた環境でもガソリンが気化しやすくなるように、揮発性を高めに調整しています。これにより、点火がスムーズになり始動性が向上します。
北海道や東北地方など、冬の気温が低い地域では、特に重要な仕様調整です。
夏用ガソリンは、気温が高いときに蒸発しすぎるのを防ぐため、揮発性を低くおさえる調整がされています。これはエンジンによる「べーパーロック現象」を防ぐための調整です。
タンク内で蒸発してできた気体が燃料の通路を塞いでしまうと、エンジンの始動性悪化や、走行中のアイドリング不調、エンジンの停止につながります。特に高速道路などで、べーパーロック現象によるエンジン不具合が生じると、非常に危険な状態となるでしょう。
夏用ガソリンは、揮発性が低くおさえられています。そのため、夏用ガソリンを入れたままの車で冬場に走行すると、ガソリンが蒸発しにくいためエンジンの始動性が悪くなるかもしれません。とはいえ、エンジンの故障につながることはないでしょう。
一方、冬用ガソリンで真夏に走行すると、揮発性が高く調整されているため、燃料の気化が進み、べーパーロック現象につながるかもしれません。
暖かい地方で冬用ガソリンを使用した場合も、同様のリスクがあります。夏用ガソリンを冬場に使用するよりも、冬用ガソリンを夏場に使用する方が、リスクが高くなるため注意が必要です。
国のガソリン価格への補助が段階的に無くなっているため、2024年11月以降、値段が徐々に高くなっています。2025年1月6日時点でのレギュラーガソリンの価格は、1リットルあたり180.6円です。
普段あまり自動車を使わない方が、冬場に「1リットル180円」のガソリンを30リットル給油した場合は5400円かかります。一方、冬場に満タンにせず5月に「1リットル200円」のガソリンを30リットル給油した場合は6000円です。冬場に給油して5月までもたせた場合は、600円得する計算になります。
しかし600円得するためだけに、冬用ガソリンを入れたままで夏場に車を走らせて事故を起こすと、数十万円の損害につながるかもしれません。そのため、シーズンの変わり目に給油できるように、タイミングをあわせるとよいでしょう。
ガソリンには、気温の変化に合わせて冬用と夏用があります。燃料の揮発性が調整されているため、冬用ガソリンの夏場使用や、夏用ガソリンの冬場使用は、エンジンの不調や事故につながるおそれがあります。
毎月1回以上給油している場合は、季節違いのガソリンを使うことはないでしょう。しかし、あまり運転しない場合は、真冬に夏用ガソリンのまま、真夏に冬用ガソリンのままといったことも考えられます。このような場合は、リスク削減のために給油のタイミングを考えるとよいでしょう。
経済産業省資源エネルギー庁石油製品価格調査
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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