井上尚弥の防衛戦を田口良一が語る井上尚弥&中谷潤人と拳を交えた元世界王者はこの先のビッグマッチも展望

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井上尚弥の防衛戦を田口良一が語る井上尚弥&中谷潤人と拳を交えた元世界王者はこの先のビッグマッチも展望

1月20日(月) 21:55

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【急遽、チャレンジャーが変更になった井上】WBA/WBC/IBF/WBOスーパーバンタム級チャンピオン、井上尚弥(31歳)の次戦が2025年1月24日に催される。IBFとWBOの指名挑戦権を持つオーストラリア人、サム・グッドマン(26歳)が左目の上を負傷して、キャンセル。前座に出場予定だったWBO11位の韓国人ファイター、キム・イェジョン(32歳)を相手に4冠統一戦が行なわれることとなった。

グッドマンは2018年4月にプロデビューし、母国のフェザー級、WBOオリエンタルのスーパーバンタム級、IBFインターコンチネンタルの同級タイトルを獲得しており、今回が世界タイトル初挑戦となるはずだった。2022年5月11日には、日本の富施郁哉(26歳・第76代日本バンタム級王者)に判定勝ちしている。

その富施が所属するワタナベジムから生まれた3人目の世界王者であり、日本タイトルを懸けて井上尚弥と拳を交えた元WBA/IBFライトフライ級チャンピオン、田口良一(38歳)が語った。

2013年8月25日に井上尚弥(左)と対戦した田口良一photo by Hiroaki Finito Yamaguchi

2013年8月25日に井上尚弥(左)と対戦した田口良一photo by Hiroaki Finito Yamaguchi





田口にとって井上戦は、日本タイトルの初防衛戦だった。フルラウンドを打ち合って判定負けを喫したが、それ以降、「『対戦相手に、井上くんほどの強さはない』という思いでリングに上がったからこそ、世界のベルトを巻き、WBAタイトルを7度防衛できた」と振り返る。

一方の井上も、ノニト・ドネアとの第1戦まで、「自分が拳を交えたなかで、最も強かったのは田口さん」という言葉を残している。

「グッドマンはまとまりがあって、すばらしい選手だなという印象でした。左ボディとショートのワンツーがいいですよね。ともに瞬間的なスピードが見えました。

でも、井上くんの勝ちは揺るがなかったでしょう。グッドマンも、ほかの人に挑戦すればチャンスありと感じますが、井上尚弥が相手となると、勝つのは難しい。いいパンチを持っていますが、井上くんにはなかなか当たらなかったんじゃないかな。ところどころでヒットする場面もなくはなかったでしょうが、自分はチャンピオンが圧倒するシーンしか思い浮かばなかったです。

序盤、井上くんが様子を見て、中盤にノックアウトすると予想していました。彼はどんなパンチでも、相手を倒せますよね。今回は、顔面へのパンチでフィニッシュすると思っていました」

元WBA/IBFライトフライ級チャンプは、常に井上の活躍を我がことのように喜ぶ。決して大言壮語はしないが、2013年8月25日に死力を尽くして闘ったあの日を誇りに感じていることが伝わる。田口は、"モンスター"井上尚弥が唯一ダウンを奪えなかった男である。

グッドマンについて、田口はこんな言葉を漏らした。

「グッドマンがリングに上がれないという事態は非常に残念です。勝つ可能性を上げるにはスパーリングをするしかなかったですし、12月24日の予定が延期になって、焦りが相当あったかと思います。運がなかったとしか言いようがありません。もう井上くんと戦うことはないと思うと悲しいですが、彼は彼の道を進んでいってもらいたいです」

そして、キムと拳を交える井上尚弥についても触れた。

「対戦相手が変更になっても、井上くんのパフォーマンスにおいて特に変化はないかと思います。どんな相手でも、ファンの期待に応えていい内容で勝ってくれることでしょう」

グッドマンであれ、キムであれ井上の牙城を崩すレベルにはない。モンスターは、今回も圧勝するであろう。

【若き中谷とスパーリングして感じた「巧さ」】今年5月、東京ドームに4万3000人を集めた井上尚弥だが、ドネア戦以降、強力なライバルが見当たらないまま無双を続けている。その4冠統一スーパーバンタム級王者を猛追するのが、WBCバンタム級チャンピオンの中谷潤人(27歳)だ。



インタビューに答えた田口氏photo by Soichi Hayashi Sr.

インタビューに答えた田口氏photo by Soichi Hayashi Sr.





2023年1月13日に井上が返上した主要4団体のバンタム級王座は、現在、それぞれ日本人の腰に巻かれている。しかし、中谷の力量はほかの3名とは比較にならない。中谷もまた、これといった対戦相手が見当たらず、ビッグマッチが用意されない悩みを抱えている。そうなると、1階級しか変わらない両者の対戦が現実味を帯びてくるのは自明の理だ。

田口は言う。

「中谷くんともスパーリングをやったことがあります。自分が世界チャンピオンだった頃のはずですが、ほとんど覚えていないんですよ。サウスポーとやったということは、2016年4月のファン・ランダエタ戦の前かな......本当に、ほぼ記憶にないんです。

ただ、巧さが際立っていた憶えはありますね。もし採点されていたら、ポイントを失っていたんじゃないかな。"強い"より"巧い"選手で、『あぁ、この子は世界チャンピオンになるだろう』と感じました。今後、4階級目を狙うんですよね。これほど何階級も制覇するとは想像していなかったです。井上くんと同じで、彼も予想を超えた場所に到達しているなと」

おぼろ気な田口の記憶どおり、2016年に行なわれたスパーリングだとしたら、中谷にとってプロデビューからおよそ1年後のことだ。東日本新人王戦を控えた"4回戦ボーイ"ながら、すでに世界チャンピオンの胸を借りるどころか、存在感を示していたことになる。井上が世界タイトル2階級を制し、WBOスーパーフライ級タイトルの2度目の防衛戦を控えていた頃だ。

28戦全勝 25KOの井上と、29戦全勝 22KOの中谷は5歳違いだが、対峙する運命にあったのかもしれない。

【2年後、フェザー級で実現したら「面白い」】中谷は、2023年5月にWBOスーパーフライ級でタイトルを獲得した試合あたりから、「自分のやりたいボクシングが実戦で出せるようになってきました」と語る。

そんなWBCバンタム級チャンピオンの言葉を耳にした田口は、うなずき、冷静に話した。

「自分も、スパーリングでやれていたことが、なかなか本番で出せない時期がありました。緊張しすぎていたり、上体が高かったり、スタミナが足りなかったり......、力を発揮するのに、デビューから15、16戦ほどかかりましたね。

中谷くんは『パフォーマンスが出せるようになった』と発言しているんですよね。それって、まだまだこれから強くなるってことですよ。発展途上なんでしょう。このレベルでは終わらず、数段上にいくはずです」

RING誌が2024年10月26日に発表したパウンド・フォー・パウンド・ランキングでは、井上は2位、中谷が9位。ポーツ総合チャンネル、ESPNが12月27日に報じたものでは井上が3位、中谷が10位。さらに、RINGおよびCBS Sportsが2023年末にセレクトしたKO of The Yearも中谷のアンドリュー・モロニー戦が受賞した。

「井上くんがバンタム級だった頃の劇的な勝ち方と、ここ数戦の中谷くんのパフォーマンスは似たような感じですね。でも、自分は中谷くんがスーパーバンタムに上げて1戦目で井上くんとやるのは、勧めません。今戦ったら、井上くんが有利です。時が経てば差は縮まっていくでしょうが、現時点でふたりが試合をした場合、仮に10回やったらほぼほぼ井上くんが勝つと思います。ただ、10回やったら10回勝つと言えないところまで、中谷くんが近づいてきているとも感じますね。

中谷くんには、スーパーバンタムにアジャストする時間、試合が必要ですよ。自分もラストファイトとなった試合でいきなりフライ級に上げて田中恒成くんとやりましたが、ちょっと差があったような気もします(0-3の判定負け)。田中くんはパンチがありましたから、彼のパワーなのか階級差によるものなのかはハッキリしませんが、1.9㎏の違いが大きかったのかもしれません。中谷くんはスーパーバンタムに上げて、3戦はこなすべきでしょうね。

間違いなく差は縮まってきていますから、いつ、どの階級でやるかで明暗が分かれるんじゃないでしょうか。自分は、機が熟したらフェザー級でやったら面白いと考えます。時間はかかってしまいますが、2026年の末くらいなら中谷くんが肉薄しているでしょうから、フェザーでの激突が見たいです。井上くんは今、減量がキツいらしいので、お互いがハイパフォーマンスを出せるのはフェザーじゃないかとも感じますね。中谷くんも、どのパンチでもKOできるレベルまで自分を持ってきた。2年後は、より筋肉がついて技術も向上しているでしょう」

そう語る田口だが、本当に試合が実現したらどんな試合になると見ているのか。

「2年後も井上くんが有利かなとは思うものの、展開はいろいろと想像してしまって......。(ルイス・)ネリやグッドマンが相手なら、井上くんが圧勝する姿しか思い浮かばないんですが......。井上くんがいつものようにワンサイドで仕留めるシーンも、中谷くんがパンチを効かせている様もイメージできます。

2023年7月の統一ウエルター級タイトルマッチで、テレンス・クロフォードがエロール・スペンス・ジュニアに完勝したように、井上くんの手が上がる展開もある気がします。ただ、中谷くんは『打ち合いは望むところだ』と感じているんじゃないですか。序盤はじっくりと見合いそうですね。お互いに『絶対にKOしてやる』と考え、手数の多い試合で、判定決着とはならないでしょう」

両者の手合わせは東京ドームが有力だ。述べるまでもないが、超満員に膨れ上がるだろう。

元ライトフライ級2冠王者はこう結んだ。

「日本ボクシング史上、間違いなく最高の頂上決戦ですよね。世界でも有数のカードじゃないかな。チケット代は跳ね上がりそうですが、絶対に見に行きたいです。あくまでも中立のファンとして、ボクシングを堪能したいですね」

ドリームマッチ実現へ──。田口が希望したように、両者が存分に力を出し切れる状態での実現を期待したい。

◆田口良一(たぐち・りょういち)

1986年12月1日生まれ、東京都出身。2006年7月にプロデビューし、2007年にライトフライ級の全日本新人王に輝く。2013年4月、同級の日本王座を獲得。2014年12月にWBA王座、2017年12月、メリンド(フィリピン)との統一戦を制してIBF同級王座を獲得した。2019年12月に現役を引退。プロ戦績は27勝(12KO)4敗2分け。

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