いまや韓国作品のヒット作の多くはウェブトゥーン漫画が原作だ。「女神降臨」「社内お見合い」「わかっていても」は、漫画のキャラクターとシンクロ率120%と絶賛されSNSでも話題に。アニメーションとドラマを融合した「ユミの細胞たち」は想像を超える仕上がりで違和感なく楽しめ、登場人物も含め本国ではシンドロームが巻き起こった。CGを駆使したソンビや怪物ジャンルの「Sweet Home -俺と世界の絶望-」や「地獄が呼んでいる」は好評でシーズン作となり、社会派作品の「D.P. -脱走兵追跡官-」もシーズン2が配信されている。大きく話題にはなっていないが、「国民死刑投票」や「もうすぐ死にます」は現代社会の闇、生きる意味は何かという問題提起がされており、見応えのあるラインナップだ。映画では観客動員数1000万人を超えた「神と共に」シリーズに続き、メガヒットした『インサイダーズ/内部者たち』(15)や『シークレット・ミッション』(13)がある。
【写真を見る】ハズレなし!『勇敢な市民』などウェブトゥーンを原作とした韓国映画・ドラマを一挙紹介
作品があふれる時代に、ウェブトゥーン漫画が原作かどうかを基準にして選ぶのも1つだろう。すでに原作ファンが多く人気を得ているため、間違いない作品が多いからだ。そこで最近のおすすめ作品を紹介していきたい。
■ただの青春ストーリーではない!格別の爽快感を味わえる『勇敢な市民』
まずは日本で1月17日に公開された『勇敢な市民』。元ボクシング王者の非正規教師と極悪生徒のアクションコメディだ。非正規教師のソ・シミン(シン・ヘソン)は、金も権力も握る高校生のハン・スガン(イ・ジュニョン)が牛耳る学園に赴任した。正規職員になるために同僚や上司には嫌な顔一つせず笑顔を振りまき、生徒の悪事は目をつぶって耐える日々。ところが、いじめの標的である生徒とその家族にまで残虐な行為を繰り返す悪魔のようなスガンに、シミンは猫のマスクを被り立ち向かうことに。
本作のおもしろさは教師と生徒に絆が生まれるという青春ストーリーではないという点にある。自分の生徒であろうが悪は悪であり、正義と悪が本気でやり合うからこそ爽快感が生まれる。後ろ盾があるスガンは何をしても罰せられることはない。組織も社会も世間も成敗してくれないのなら、市民が立ち上がって闘うしかないという社会的メッセージも含まれている。また、どんな役も吸収してしまうシン・ヘソンの体当たりの演技と180度開く足技にも注目してほしい。
■“ダメ男”イ・イギョンとソン・ハユンの悪役っぷりが見どころ!「私の夫と結婚して」
2024年上半期の韓国ドラマで盛り上がったのは「私の夫と結婚して」ではないだろうか。カン・ジウォン(パク・ミニョン)は、だらしない男パク・ミンファン(イ・イギョン)と結婚したために借金まみれになり、気づいた時には末期癌に。そんなとき、不倫に走ったミンファンと親友のチョン・スミン(ソン・ハユン)に殺されてしまう。気づいたら10年前にタイムスリップしたジウォンは、運命を変えることを誓う。
2度目の人生で堂々とたくましくなる主人公の変化、着々と復讐を遂行する姿にスカッとする。それぞれのキャラも作り込まれており、ダメ男ミンファンを魅力たっぷりに演じるイ・イギョン、親友スミンを熱演したソン・ハユンの悪役っぷりには拍手を送りたくなるほど。ピクッと動く細かい表情の演技が絶賛され、彼女の代表作となったドラマでもある。
■“スクールカースト系”が好きなら、学校暴力を違った視点で描く「ピラミッドゲーム」がおすすめ
スクールカースト戦争を題材にした「ピラミッドゲーム」は、学校暴力や社会の不条理な構造をこれまでとは違った視点で描く。転校生ソン・スジ役のキム・ジヨン(アイドルグループ宇宙少女での活動名はボナ)をはじめ、シン・スルギ、チャン・ダアなど新しい俳優たちが際立ちフレッシュさも感じられるドラマだ。
ペクヨン女子高校の2年5組では毎月第4週の木曜にアプリ投票が行われる。投票数によってA〜Fのランクに分けられ、いじめの対象を決める仕組みだ。転校生のスジはターゲットにされてしまい、残酷なゲームを変えるために頭脳で勝負する。予期せぬ裏切りや心理戦は緊張感があり、一気見してしまうこと間違いなしだ。冷静で理性的なスジは自分だけが抜け出せればいいと利己的な一面も見せる。善と悪に区別しないのが本作の興味深いところ。過激な描写もあるが、いじめの根本の原因は何か、大人が生み出した社会の縮図から目をそらせてはくれない。この作品が好みの人には男子校が舞台の「弱いヒーローClass1」(こちらもウェブトゥーン漫画が原作)もチェックしてもらいたい。
■ベテラン俳優陣の名演はもちろん、伝統芸能“パンソリ”も魅力的!「ジョンニョン:スター誕生」
「ジョンニョン:スター誕生」は天性の歌声を持つユン・ジョンニョンが女性国劇のスターになることを夢見る物語。何がすごいって俳優たちの圧巻の演技、そして韓国の伝統芸能である“パンソリ”を披露するシーンは迫力満点で観劇しているような臨場感を味わえる。
舞台は1956年。港町の木浦(モクポ)で貧しくも平凡な生活を送っていたジョンニョン(キム・テリ)。町を訪れた人気劇団のスター団員のムン・オッキョ(チョン・ウンチェ)に引き抜かれ、親の反対を押し切って上京し劇団の研修生からスタートする。
ジョンニョンが才能を開花させるとキム・テリの演技も光り鳥肌が立つ。毎話、心が揺さぶられ感動させられた俳優は初めてだ。チョン・ウンチェ、ラ・ミラン、シン・イェウン、ウ・ダビなど脇を固める俳優もすばらしく「ジョンニョン:スター誕生」の世界にあっという間に引き込まれる。ぜひ映像で見てほしい作品であり、舞台が好きな人にもおすすめしたい。
■「ムービング」「照明店の客人たち」に「魔女」まで…期待を裏切らないカンプルの最新作は?
制作費約650億ウォンが投じられた超大作「ムービング」は、超能力者の親子2世代に渡った戦いが繰り広げられるアクションヒーロー。実写化も人気が爆発したのは周知の沙汰だ。釜山国際映画祭や百想芸術大賞、青龍映画賞などの授賞式で賞レースを席巻したのは記憶に新しい。当時は原作者のカンプルが脚本も担当することで話題を呼び、待望の新作「照明店の客人たち」が同じディズニープラスで配信されている。「ムービング」に続き、チュ・ジフン、パク・ボヨン、イ・ジョンウン、オム・テグら豪華キャストが出演する。
暗い路地裏にある照明店。サングラス姿の店主ウォニョン(チュ・ジフン)は怪しげだが、訪れる客も事情がある人ようで奇妙である。いつも同じ場所に座っている女性、毎晩歌いながら夜道を歩く男子学生、毎日電球を買いに来る女子学生、必死に事件を追いかける刑事…。そのほかにもクラスの生徒たちの変わった名前など、予測がつかないミステリアスな空気が漂う。なぜ客人たちがこの場所にたどり着いたのか。丁寧に物語を追っていけば全てが腑に落ちる。伏線回収は見事なので、1回目はできるだけ情報を入れずに観てほしい。2回目は違う見え方で楽しめるはずだ。
ちなみにカンプルの次回作「魔女」は、韓国で2025年の上半期に放送される予定(日本での配信は現時点では未定)。自分のことを好きになる男たちに不幸が訪れる女性の不運の法則を命がけで救おうとする男性のミステリーロマンスだ。除隊後の復帰作となるパク・ジニョンとノ・ジョンウィが主演を務める。私たちの身近にある愛の描き方が秀逸な彼の次回作は、どんな愛を伝えてくれるのだろうか。
文/ヨシン
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