◆2024年「この3冊」
◇<1>『近代出版史探索Ⅶ』小田光雄著(論創社)
◇<2>『人口は未来を語る 「10の数字」で知る経済、少子化、環境問題』ポール・モーランド著(NHK出版)
◇<3>『ルーヴル美術館 ブランディングの百年』藤原貞朗著(講談社)
<1>は著者・編集者・出版社・印刷所などの要因がどのように出版ネットワークを形成していったかを考察する「近代出版史探索」シリーズの第七巻。明治末年に完成した日本独自の出版流通形態の源流に迫ろうとした前代未聞の試みであったが、著者の急逝により頓挫。無念極まりないが、近々、遺稿である第八巻が世に出るとのこと。
<2>国会では少子高齢化や低賃金などが延々と議論されているが、国会議員は全員この本を読むべきである。答えは全部書いてあるからだ。
<3>はインバウンド戦略の一環として文化・芸術を位置付け、成功を収めたフランスのブランディング戦術の起源が一九三〇年代のルーヴル改装でサモトラケのニケが大きくフィーチャーされたことにあるのを突き止めた新鋭の意欲作。

『近代出版史探索Ⅶ』(論創社)著者:小田光雄
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『人口は未来を語る: 「10の数字」で知る経済、少子化、環境問題』(NHK出版)著者:ポール・モーランド
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『ルーヴル美術館 ブランディングの百年』(講談社)著者:藤原 貞朗
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【書き手】
鹿島 茂
フランス文学者。元明治大学教授。専門は19世紀フランス文学。1949年、横浜市生まれ。1973年東京大学仏文科卒業。1978年同大学大学院人文科学研究科博士課程単位習得満期退学。元明治大学国際日本学部教授。『職業別パリ風俗』で読売文学賞評論・伝記賞を受賞するなど数多くの受賞歴がある。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。新刊に『日本が生んだ偉大なる経営イノベーター 小林一三』(中央公論新社)、『フランス史』(講談社)などがある。Twitter:@_kashimashigeru
【初出メディア】
毎日新聞 2024年12月14日
