ここ数日、「大好きなももクロ(ももいろクローバーZ)グッズを新婚の妻に捨てるよう言われ」、言われた通り処分したものの、生きる気力をなくした男性のSNSへの投稿が話題になっている。
興味深いのはそのグッズが新婚宅ではなく、彼の実家にあったものだということだ。つまり新居が狭くなるから処分してほしいという要望ではないこと。このふたり、マッチングアプリで出会って2ヶ月で結婚したという。
交際期間の短さから、お互いのことをよく知らないままに結婚してしまったのではないか、あるいは妻がよほど嫉妬深いのではないかとも推察できるが、彼によれば「妻はももクロが嫌いなわけではなく、アイドルにはまる人が嫌い」なのだという。
ただ、彼にとってももクロは自分がつらかった時期、生きる支えになった存在でもあったため断腸の思いで処分したようだ。
「相手をコントロールしたい」気持ちの表れ
好きで集めているものを夫に捨てるように言われた、という女性はあまり多くないように思う。ところが今回のように妻から、自分が蒐集(しゅうしゅう)しているものを処分しろと言われる男性の話はときどき耳にする。男性のほうが蒐集癖があるからなのか、あるいは蒐集癖のある男性を嫌う女性が多いからなのか……。
新婚時だからこそ、今のうちに「私の色」に染めたい願望があるのかとも感じたが、結論からいえばどう考えても「相手をコントロールしたい」気持ちの表れなのだろう。夫がはまっているのが女性アイドルだったことが、その気持ちに拍車をかけた。
これがスニーカーやジーンズ蒐集だったら、妻はそこまで処分することに固執しなかったかもしれない。彼女の気持ちの中に、「男性が女性アイドルにはまるのはみっともない」という価値観があるからこその「支配欲」ではないだろうか。
フィギュア用にアパートを借りている男性も
結婚するとき夫の大好きな女性アイドルのポスターをすべて捨ててもらったという女性がいる。
「つきあっているとき、夫はそのアイドルが好きだったことを話してくれなかったんです。いざ結婚して新居に合流したとき、夫の荷物の中にアイドルのポスターがたくさんあった。
新居に貼るつもりはないというから、だったら捨ててよと。オレの青春だったんだと言っていましたが、私と一緒に新しい生活を始めるのに他の女性の影があるのが嫌だった。結婚して10年以上経った今思えば、芸能人のアイドルが好きだっていいじゃないかと思うんですが(笑)。
あの当時は嫉妬もあったけど、私の言うことをどこまで聞いてくれるのか試していたのかもしれません」(40代女性)
相手の愛情を試したかった。一見、かわいい動機に聞こえるが、よく考えるとそれもまた支配の第一歩ともいえそうだ。
40代男性からも、こんな声があった。
「僕はアニメ系のフィギュアにはまってしまいまして……。数年前、そのことを妻にちらっと話したらものすごく軽蔑したような目で見られてビビりました。
どう考えても賛同してもらえそうになかったので、ある程度、フィギュアを集めたところで小さなアパートを借り、そこに好きなように並べて愛でています。その部屋に行くと自分が自分でいられるような気がするんです」
理解してもらえないなら、こっそりと自分の世界を大事にしていくしかないのだろう。
相手をコントロールしたい気持ちは誰にでもある!?
相手を支配したい心理は誰にでもあるのかもしれない。支配というと言葉が強烈すぎるが、「自分の知らない世界をもってほしくない」という気持ちというとわかりやすい。
もう少し広げてそう考えると、それは「モラハラ」のひとつの大きな特徴にもなる。
蒐集癖に限っていえば男性にありがちな趣味だが、それ以外だとたとえば妻が自分の知らない友だちと会うのを極端に嫌う夫はよくいるし、それがDVのひとつでもあることはよく知られている。
つまり、どういう状況であれ、相手の気持ちをコントロールしようとすること自体がモラハラであり、DVになりうるということだ。
相手を好きならば、何もかも知りたい欲求というのはある。恋愛には欠かせない心理だ。つきあいが長くなったり結婚したりする関係なら、相手への希望や要望も出てくるだろう。
だが大事なのは、相手の価値観を尊重する気持ちだ。それがなければ関係は対等ではなくなる。
妻が友人と会うのを嫌がる夫の支配欲
「相手をコントロールしたいのは、結局、自分に自信がないからでしょうね。元夫がそういう人でした。
新婚当初から私が友だちと会うのを嫌がった。当時は『一緒にいたいから』という理由だったけど、実はそうではなかった。私が自分の世界をもって楽しそうにしているのが気に入らない。
なぜなら私は夫の“所有物”だから。オレの言うとおりにしろというわけです。
支配欲ってエスカレートしていくんです。だから『あれ?』と思うようなことがあったら、これは愛情の証などと思わないできちんと疑って、きちんと自分の意見を言ったほうがいい。
それで怒るような相手なら関係は継続できません。私はうっかり結婚してしまったけど、4年で乳飲み子を抱えて夫から逃げました」(30代女性)
支配欲はエスカレートして妄想となり、人をモンスターに変えていく。相手に支配の芽が見えたら、まずは摘むために話し合うしかないのかもしれない。
<文/亀山早苗>
【亀山早苗】
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『
復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio
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