トートバッグは、リュックやショルダーバッグとは違い、片手が塞がってしまいます。この不便さを上まわるメリットは、服に余計なシワが入らないことでしょう。この“余計なシワ”こそが、
「清潔感を損なう原因」
だと知っている人は、トートバッグを好む傾向にあるのではないでしょうか。
しかし、一方でトートバッグを使っていても「清潔感がない人」も一定数存在するのも事実。「余計な色遣い」や「安っぽい質感」など、要因はさまざまですが、根本的な問題は「形状を認識しているか否か」だと私は考えています。どれも似たように見えても、カジュアルからドレスまで、実は幅広い形が存在しているのです。
そこで今回は、
「清潔感あるトートバッグ選びのコツ」
について、『男の服選びがわかる本』(池田書店)の著者が解説します。
「主役」ではなく「脇役」として選ぶべき
バッグの種類で、選び方の正解も変わります。たとえばPCケースのような見た目のクラッチバッグ。流行も終わり、最近はあまり見かけませんが、これはアクセサリー感覚で選べるバッグです。
ところがトートバッグの場合、存在感が強すぎるものは、清潔感を損なうもの。どんなに小さかったとしても、トートである以上、「バッグと服を馴染ませること」が正解です。そういう意味では、
全身のコーディネートに無害なトートバッグをおすすめします。
色遣いについても、
1色もしくは2色までが良いでしょう。
3色以上でパーツ毎に余計な色が散りばめられたトートでは、「服に余計なシワがついていない」ことよりも、「バッグの存在が悪目立ちする」というように見えかねません。
トートバッグ自体が主役にはならない、服装に馴染むシンプルなものを選ぶことが大切です。
カジュアルな恰好には合わせづらいものも
シンプルなトートバッグのなかには、
ビジネストート
と呼ばれるものが含まれます。カッチリしたジャケット姿に負けないレザーの上品な質感や、黒・紺・茶など、ビジネスカジュアルに合う配色のものが多いため、ジャケット姿にマッチします。ただしカジュアルな恰好には合わせづらいのです。
分かりやすい例として、
パーカーなどのリラックス系カジュアルに、黒レザーのビジネストートでは違和感しかありませんよね。
これはバッグの
「ドレス感が浮いてしまっている」
状況です。
カタチ・色・素材が似ていたとしても、革のなめし方やステッチなどの縫製によって、「トートバッグのドレス感」も変わります。言語化は簡単ではありませんが、トートバッグを形状で認識するのではなく、バッグの「しっかり感」を意識してみてください。
似たような色合いなのに、「実物が安っぽく見える」という現象は、まさに「しっかり感のちがい」だと私は考えています。そしてドレス感あるビジネストートが万能というわけではなく、
服装のカジュアル具合やシーン毎にトートの正解も変わるのです。
カジュアルならば、キャンバス生地も候補に
これからの季節、
キャンバス生地のトートバッグ
も人気です。ハンドルなど一部パーツのみレザーをあしらったキャンバス系トートは、程よいカジュアルな雰囲気のため、シャツアウターなどの着こなしにハマります。
ところが、時折キャンバス生地のトートバッグのような「ペラッとした布バッグ」をお持ちの方も見かけます。いうなれば、買い物したときについてくるショッピングバッグのようなものです。
これでは清潔感云々の前に安っぽい印象になりかねません。
もちろん、ジムに行くときの着替えなどを入れるサブバッグとしては構わないのですが、お出かけするバッグに向いているとは言えませんから、注意したいところです。
形状のみで判断せず、全体のしっかり感を意識してみてください。レザー素材ではなく、キャンバスのようなカジュアルな生地感だったとしても、しっかりした雰囲気のものがあります。購入する際の参考にしてください。
<TEXT/森井良行>
【森井良行】
“あなたのお抱えスタイリスト”として、その違和感を言葉で可視化する。著書『38歳からのビジネスコーデ図鑑』(日本実業出版社)など5冊。MENSA会員。公式サイト「エレカジ」では、80件を超えるコーディネート事例を公開。
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