「1人1万円」の入場料は高すぎる…テーマパークに行けない“庶民の受け皿”が好調である納得の理由

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「1人1万円」の入場料は高すぎる…テーマパークに行けない“庶民の受け皿”が好調である納得の理由

4月25日(木) 8:53

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中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。

ゴールデンウィークシーズンを迎え、行楽地が賑わいを見せ始めました。テーマパークや観光地、道路が混雑しているのはいつもの光景ですが、 レジャー市場は二極化が進行しています。 背景にはインフレがあり、 賃金上昇がそれに追いつかない一般庶民の姿が浮かび上がります。

「家計に余裕がない」から旅行に行かない人は9.5%増加

JTBが行ったゴールデンウィークに対する意識調査(「2024年ゴールデンウィーク(4月25日~5月5日)の旅行動向」)によると、2024年のゴールデンウィーク期間中の旅行者推計値は2280万人で、前年比0.9%の増加となる見込みです。しかし、2019年のこの数字は2401万人でした。 コロナ前と比較すると5%程度下がっています。

1万人を対象に旅行の意向を尋ねたところ、「行く」との回答は10.8%。2019年の同じ調査では12.1%でした。

更に旅行に行かない理由を聞いたところ、 「家計に余裕がないので」 との答えが24.0%。前回の調査と比較して9.5%も増加しました。「旅行費用が高いから」も2.6%高まって33.2%に達しています。コストプッシュ型のインフレで家計は圧迫されているのです。

観光ホテルやテーマパークにも値上げの波が

観光ホテルの宿泊費は上昇しています。

複数のホテルに投資をする大江戸温泉リート投資法人によると、鬼怒川観光ホテル、伊東ホテルニュー岡部、大江戸温泉物語レオマリゾートなど同社が所有するホテルの2022年12月-2023年11月の平均客室単価は3万3033円。コロナ前は3万158円でした。

更に2023年はレジャー関連施設の値上げラッシュもありました。繁忙期の大人の1日券は1万円を超えました。 夫婦二人と中学生、高校生の子供4人家族(大人2枚+中人2枚)の場合、トータルのチケット代は4万円近くかかることになります。ちなみに90年代後半から2000年代前半は5000円台でした。

また、 ユニバーサルスタジオジャパンも、2023年8月から繁忙期の最高料金が1万円を超えました。

帝国データバンクは遊園地の値上げに関する調査(「2023年「主要レジャー施設(テーマパーク)」価格調査」)を行っており、 約4割のレジャー施設が2023年に値上げを行ったことを明らかにしています。

優先的に乗れるチケットが「2万5900円」

レジャー施設が値上げを行う目的は主に2つあります。1つは 混雑の緩和 。もう1つは 人件費や光熱費など施設運営費の高騰 です。

東京ディズニーリゾートに限っていうと、混雑の緩和はされていません。2023年4-12月のオリエンタルランドの売上高は4662億円。2019年4-12月は3902億円でした。コロナ前と比較して700億円以上増加しています。

上期の売上高は過去最高となりました。

ポイントは値上げを行ったのに客数が増加していること。オリエンタルランドは価格のハードルを下げて国民的なテーマパークを目指すのではなく、 多少値段が上がってもこの場所を訪れたいという熱烈なファン向けの施設へと変貌を遂げたのです。

2024年6月には新アトラクション「ファンタジースプリングス」がオープンします。オリエンタルランドはこのアトラクションに優先的に入園できるチケットを販売すると発表しています。 価格は最高で2万5900円となる見込みです。

ディズニーの特別なファンでもなく、庶民的な感覚であれば、間違いなく高いと感じるでしょう。

一方で売上を伸ばし続けるラウンドワン

二極化するレジャー市場において、庶民の受け皿となっている施設があります。ボウリング場などを運営する ラウンドワン です。

2023年4-12月の売上高は、前年同期間比11.8%増の1133億円でした。店舗数は153。1店舗当たりが同期間で稼ぐ金額は、単純計算で7億4000万円です。

2019年4-12月の売上高は770億円でした。店舗数は142。同じく店舗売上を算出すると5億4000万円ほどです。コロナ禍を経て、 ラウンドワンは1.4倍も収益性を高めることに成功しているのです。

特に好調なのが「ギガクレーンゲームスタジアム」。300~600台ものクレーンゲームが並ぶアミューズメント施設です。

ゲームセンターのクレーンゲームが大盛況

イオンのグループ会社で、ショッピングモール内のゲームセンターを運営する イオンファンタジー も、景品の獲得を目的としたプライズゲームが好業績をけん引しています。

同社は2020年から戦略的に小型店を出店。2024年2月期の売上高は644億円となり、コロナ前の2020年2月期を上回りました。特に子供向けのプレイズゲームの稼動が高まっていて、構成比率はコロナ前の29.4%から37.9%まで拡大しました。

ゲームセンターのゲーム機は今や下火で、プライズゲームが市場をけん引しています。 お金を時間に消費するだけのアーケードゲームは廃れ、対価として景品が手に入るプライズゲームが人気と考えれば、コストパフォーマンス重視の消費動向と合致します。

家計に余裕がない家庭が、お金のかかるテーマパークや遊園地、観光地への旅行を控えるのは当然でしょう。必然的に近場のレジャー施設が余暇の受け皿となります。 ショッピングモールに足を運び、買い物の合間にプライズゲームを楽しんでいる家族が増えている。 そのような図式が浮かび上がってきます。

レジャー市場は、好きなことにとことんお金をかける人と節約志向の人の二極化が鮮明になり、各社がその動向に合わせたサービスを展開するようになりました。

<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界

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