昨年5月に日本デビューを飾ったドブロ。黒く塗られた樹脂パーツは男心をそそる。アウトドアなどで使い倒したくなるクルマだ
強豪ひしめく日本のミニバン市場。そこでひそかに熱視線を浴びているのが、フィアット自慢のドブロ。正直、海外ブランドのミニバンってどうなのよ?国産のミニバンとは何が違うの?つーわけで、公道試乗したカーライフジャーナリストの渡辺陽一郎(わたなべ・よういちろう)氏が特盛り解説する!!
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■ドブロは商用車と基本部分を共通化
渡辺
今回試乗したのはフィアット・ドブロです。このクルマは商用車をベースに開発されたミニバンですね。
――そもそもの話ですが、フィアットってどんな歴史を持つ自動車メーカーなんスか?
渡辺
1899年に設立されたフィアットはイタリアの大手自動車メーカーです。いち早く巨大な工場を建設し、大量生産を開始したメーカーとしても有名です。また、第2次世界大戦後にはフィアット500などの小型車を中心に据えて販売を伸ばしました。
――日本市場におけるフィアットの人気というのは?
渡辺
1980年代から90年代にかけてウーノ、ティーポ、パンダといった小型車が旋風を巻き起こしました。特にウーノはハンドリングが機敏で、赤いボディが若い人たちに人気でしたね。
――へぇー。
渡辺
ちなみに現在のフィアットは欧米14のブランドを抱える自動車業界トップ級の規模を誇るステランティスグループの一員です。
フィアット ドブロ価格:399万円ドブロと同じステランティスに属するプジョー・リフター、シトロエン・ベルランゴと骨格などを共有する
――そんなフィアットがぶっ放したドブロってどんな経歴のミニバンなんスか?
渡辺
初代ドブロは2001年にデビュー。現行モデルは3代目でニッポン初導入。また、ボディを拡大させた3列7人乗りのドブロ・マキシも用意されています。
――欧州でのドブロの立ち位置というのは?
渡辺
日本では目新しく映りますが、欧州の定番車です。
――ドブロと国産のミニバンは何が違うの?
渡辺
ドブロはスライドドアが装着されており、国産のミニバンに似ていますが、中身はかなり違います。
ボディサイズは全長4405㎜×全幅1850㎜×全高1850㎜。左右スライドドアは手動タイプ
8インチのタッチスクリーンなどを標準装備。ちなみにATはシフトレバーではなく、新感覚のダイヤル式
――具体的には?
渡辺
繰り返しになりますが、商用車と基本部分を共通化しているので、ドブロは道具感が強い。インパネなどは国産のミニバンより質素です。
――逆にそういうドブロの道具感ギンギンの見た目や内装が男心をたぎらせます。
渡辺
質実剛健だった昔のベーシックな欧州車を彷彿とさせる仕上がりですよね。
日本車と違うのは後席が3名分にキッチリ分割されている点。ちなみに後席は折りたためる
――国産のミニバンよりドブロが優れている点は?
渡辺
シートの座り心地は国産のミニバンよりも優れています。骨盤を包むように支えるため長距離移動も快適です。
――もしやドブロは基本的なクルマの機能を重視して造られたミニバン?
渡辺
そう思います。国産ミニバンと違って豊富な収納設備や多彩なシートアレンジ、2列目に座った乗員の足を支えるオットマンなどの機能は用意されていません。
――確かに。
渡辺
その代わりインパネの視認性や操作性、シートの座り心地、荷物の積みやすさは文句のつけようがない。
エンジンは直4の1.5リットルクリーンディーゼルターボを搭載。最高出力130馬力。ATは8速
――走りはどうです?
渡辺
直進安定性は優れていますし、高速道路を走行中に強い横風にあおられても左右に振られにくい。峠道のカーブも、どっしり安定していました。
――気になる点は?
渡辺
エンジンは直列4気筒1.5リットルクリーンディーゼルターボです。運転しやすいエンジンですが、車外ではディーゼル特有の少し粗いノイズが響きます。車外騒音は昔から日本車が気を使ってきた部分なので見劣りしますね。
ホイールベースは2785㎜。車重は1560㎏。燃費は18.1km/リットル(WLTCモード)
荷室容量は597リットルだが、2列目シートを全部倒すと2126リットルに拡大。長尺物も積み込める
――ほかに気になった点は?
渡辺
全幅が1850㎜とワイド。しかも最小回転半径は5.6m。狭い裏道での取り回しには注意が必要ですね。
――ドブロはどんなユーザーに推せるクルマですか?
渡辺
〝オラオラ系〟と呼ばれる国産ミニバンを好まないユーザーにピッタリです。
撮影/望月浩彦
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