レトロ遺産を掘り返す山下メロ氏
記憶の扉のドアボーイ・
山下メロ
です。記憶の底に埋没しがちな平成時代の遺産を今週も掘り返していきましょう。
さて、今回紹介するのは1998年に登場した「ジターリング」という玩具です。もともとニュージーランドでチャッターリングと呼ばれていたものが、ハワイで製品化され、それをバンダイが日本で発売しました。
直径20㎝ほどの、手品でも始めそうなステンレスのリングに、真鍮製の小さな穴開きビーズが5つ通されているという、玩具とは思えない業務用器具のようなインダストリアルなルックスが特徴です。その武骨な見た目もあり子供向けではなく、ストリート志向の強い若者がターゲットでした。
重力、遠心力など科学の原理が満載のジターリング
金属製の大径リングに、小さいビーズが複数通されていて、それをはじいて回し続けるバンダイの「ジターリング」。もともと100年以上前から似たような仕組みの玩具があり、それが発展して今の形になったといわれています
遊び方は、ビーズを親指で強くはじいて高速回転させ、直後に素早くリングを手前に手繰るように回していくとビーズが摩擦音を出しながら延々と高速回転するというもの。コツをつかむまでなかなかうまく回すことができない難度で、玩具店では遊び方のビデオが流されていました。
また、うまく回せると達成感があるものの、一度回し出すと変化が起きないため、リングを反転させたり、片手で回して手を離すなどの技(トリック)を競うような遊び方となります。
難度が高すぎるのもはやらなかった要因!?バンダイはハワイのアイランドエッジ社から販売権を取得し、1998年にハイパーヨーヨーと同じ「ハイパーゲームス」ブランドからジターリングを発売。遊び方は親指でビーズをはじき、リングを回転させるだけですが、難度はかなり高め
ジターリング自体や、そのビデオのパッケージを見ると、まさにストリートカルチャーを意識したイラストが描かれています。
当時は、路上文化の転換点でした。平成元年に創刊されたレディース(女性による暴走族)の雑誌『ティーンズロード』も〝路上〟を単車で暴走する不良文化を中心とした誌面構成から、同じ路上でもダンスやスケートボードのトリックを競う〝ストリート〟に移行しました。
しかし、ティーンズロードはジターリングの発売と同じ98年に休刊。そして、BMXやスケボーには手が出せない人でも、お手軽にトリックに励めるはずだったジターリングも、ハイパーヨーヨーのように普及することはありませんでした。
なんでもデジタルの今こそ、究極のアナログ玩具の輪っかを回してみましょう!
撮影/榊 智朗
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