日刊アメーバニュース

ネット選挙運動総括 果たして「サロン」は議論の場になるのか

2013年08月13日 14時54分
提供:アメーバニュース/特集

ネット選挙運動解禁が注目を浴びた参議院選挙も終わり、新しいメンバーの下、国会が始まりました。

今回の選挙では、候補者はもちろん、有権者も積極的にネット上で情報発信をしましたが、一方で、あるアンケートでは、大多数の人が投票においてネット選挙運動を参考にしないとも回答しており、ネット選挙運動が有権者の投票行動に与えた影響ははっきりしていません。多くの候補者がネット選挙運動を精力的に行ったにもかかわらず、投票行動に対する影響がはっきりしなかったのは何故でしょうか。

原因はいろいろ考えられるでしょうが、候補者による情報発信が、支持者の間だけで盛り上がり、未だ投票行動を決めていない人、浮動票へのインパクトがいまひとつ足りなかったからではないでしょうか。たとえば、候補者のTwitterを見てみると、もちろん政策論の掲載も少なくないのですが、かなりの割合が、いつどこで遊説をした、支持者と写真を撮ったので掲載します、というどちらかというと「既に自分を支持してくれている人向け」の発信がほとんどです。今回のネット選挙運動は、政策議論の場というより、候補者を中心にその支持者が互いに褒め称え、支持を確認し合う、一種の「サロン」を形成したにとどまるケースが多かったといわざるを得ません。

もちろん、新しく支持を獲得することは難しいですから、それよりも支持を固めるために、こういった情報発信が中心になるのはある程度仕方ないことなのかもしれません。また、無数の閲覧者がいて、しかも絶え間なく入れ替わるインターネットでは議論を成立させることが困難ですので、政策議論をしろといっても難しいかも知れません。

一方で、議論よりも今回のネット選挙運動で印象的だったのは、ネガティブ情報(候補者に対する否定的な情報)の流通・拡散による影響の大きさと、それに対する候補者の対応の重要性です。ある副大臣経験を有する候補者について、その候補者の副大臣時代の決定・言動が非難されたケースがありました。その情報の真偽や評価については、肯定派・否定派双方が激しく議論を戦わせていましたが、問題の候補者本人からなされたインターネット上の情報発信は、ネガティブ情報のイメージを覆すには至らず、結局ネガティブ情報が有権者の判断に一定の影響を与えたのではないでしょうか。

もちろん、インターネット上のネガティブ情報に対して、安易に反論することは、いわゆる炎上の問題などで収拾が付かなくなることもあり、慎重を期するべきです。しかしながら、ネガティブ情報に対して、候補者が公式ページで反論をする場合には、感情的に反論するのではなく、まず「実際にはどういう事実があったのか」という点を具体的に示し、(その候補者の考える)正確な情報を拡散していくことが重要です。

今後の地方選などでは、ネガティブ情報の影響が大きくなることが予想されます。日本人は議論が苦手といわれますし、特にインターネット上の「反論」は多くの注意が必要なので、候補者がネガティブ情報に的確に反論し、有権者がそれを読んで理解して有益な議論ができるようになるには、まだまだ時間が必要であると考えられます。

ただ、せっかくネット選挙運動が解禁されたのに、その結果が、ネット上に候補者と支持者の「サロン」を提供したというだけでは、寂しいものがあります。「サロン」にとどまらず、議論の場に進めることは出来ないでしょうか。

今回の選挙で選挙運動の道具は大きく進歩しました。今後は、それを使う私たちも、進歩が求められているのかも知れません。


服部啓法律事務所
弁護士 深澤諭史

鳥飼総合法律事務所
弁護士 神田芳明

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