50代からは皮膚感染症に注意!「帯状疱疹」「水虫」はうつる?家庭内で予防するポイント【医師解説】

50代からは皮膚感染症に注意!「帯状疱疹」「水虫」はうつる?家庭内で予防するポイント【医師解説】

9月30日(火) 9:55

年齢を重ねると、体の免疫力が徐々に低下し、皮膚のトラブルが起こりやすくなります。特に50代以降は「帯状疱疹(たいじょうほうしん)」や「白癬(はくせん)」などの皮膚感染症にかかりやすくなるため注意が必要です。そこで今回は、LIKKAスキンクリニックの林瑠加院長に、原因や症状、日常生活で気をつけるポイントなどを詳しく伺いました。 帯状疱疹とは? 帯状疱疹とは、50代以降に急増する水ぼうそうのウイルスが原因の皮膚疾患です。一度水ぼうそうになると、治ったあともウイルスは体内に潜伏し続けます。健康なうちは問題ありませんが、加齢や疲労などで免疫力が低下すると、体内に潜んでいた水ぼうそうウイルスが再活性化し、帯状疱疹が発症します。そのため、体に不調が出やすい50代以降に帯状疱疹が急増するのです。 また、水ぼうそうは人に感染する病気ですが、帯状疱疹は自分の体の中にあるウイルスが原因で発症するため、自分以外の人へ感染することはありません。 帯状疱疹の症状 帯状疱疹の代表的な症状は、痛みとかゆみです。症状は神経節に沿って生じるため、基本的には体の左右どちらかに発症します。 帯状疱疹は、経過とともに症状が変化していくのが特徴です。まず、初期症状として、ピリピリとした皮膚の痛みやかゆみ、違和感が出現します。その後、皮膚に赤い小さな発疹が見られるようになり、水ぶくれを形成。水ぶくれは膿がたまったり、血液を含んで黒ずんだりすることもあります。1週間ほど経つと、水ぶくれや膿は破れ、かさぶたへと変化。発症から3~4週目には正常の皮膚状態へと戻ります。 このように、さまざまな症状をもたらす帯状疱疹ですが、中でも厄介なのが痛みです。その痛みは「焼けるような痛み」「針で刺すような痛み」と表現されるほど強く、日常生活に影響を及ぼすこともあります。 また、帯状疱疹後神経痛(たいじょうほうしんごしんけいつう)という後遺症を生じれば、痛みやしびれが長期間にわたり続くことも。特に、免疫力が低下している人や基礎疾患がある人ほど後遺症が出やすく、患者さんにとっては大きな負担となります。 帯状疱疹の治療法 帯状疱疹の治療は、水ぼうそう・帯状疱疹ウイルスの増殖を抑制する抗ウイルス薬が中心です。痛みが強い場合には、ロキソニンなどの鎮痛剤や、神経の修復を促すビタミン剤を使うこともあります。 帯状疱疹の治療は、早ければ早いほど効果的です。特に抗ウイルス薬は、72時間以内に服用することでウイルスの活動をすみやかに抑制し、神経への負担を軽減できると考えられています。しかし「72時間を過ぎたら治療を始める意味はないか」というと、決してそうではありません。1週間以内であれば治療効果は十分に期待できます。早ければ早いほど治療効果は高まるので、「もしかして」と思ったら皮膚科を受診することが肝心です。 帯状疱疹を予防するには? 日常生活で気をつけたいポイント 中高年世代に注意が必要な帯状疱疹ですが、予防するにはどうすれば良いのでしょうか? ここでは、日常生活で気をつけたい4つのポイントをご紹介します。 規則正しい生活を心がける 帯状疱疹の予防には、免疫力をできるだけ落とさない工夫が必要です。そのためには、食事や睡眠、運動など毎日の生活習慣を整えることが肝心。普段の生活を振り返りながら、以下のポイントを意識してみましょう。 <食事> ・タンパク質やビタミン類、亜鉛などの栄養素をとり入れる ・3食規則正しく摂取する <睡眠> ・寝る前はスマートフォンの使用を極力控える ・ぬるめのお風呂に浸かる <運動> ・30分~1時間程度、日常の中でこまめに体を動かす たとえば、ウォーキングやサイクリング、家事の合間にできる簡単なスクワットなど 疲れやストレスをためない 疲れやストレスがたまると、自律神経が乱れて免疫力が低下する原因になります。ストレスは目に見えないため、自分で気づかない内にため込むことも少なくありません。疲れやストレスをためないためには、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切。音楽を聴いたり意識的に休息をとったりして、免疫力の低下を防ぎましょう。 アルコールを過剰に摂取しない 過度な飲酒は、免疫力を低下させます。飲酒によって血中アルコール濃度が高まると、免疫細胞の働きが阻害されたり、傷付いたりする可能性があります。飲酒がストレス解消になる人も中にはいると思いますが、適量を守ることが大切です。節度ある飲酒を心がけることが、免疫力の維持につながります。 50代以上はワクチン接種を検討 帯状疱疹を予防する方法として、ワクチンを接種するという選択肢もあります。特に50代以上は、発症や重症化を防ぐために、接種を検討するのがおすすめです。帯状疱疹の予防接種に使われるワクチンは「生ワクチン」と「不活性化ワクチン」の2種類があります。どちらも、帯状疱疹の発症や合併症の予防効果が認められており、1回の接種で10年程度効果が持続すると報告されています。 小さな違和感を見逃さない 帯状疱疹を重症化させないためには、小さな違和感を見逃さないことも重要です。帯状疱疹は、体の片側だけに痛みやかゆみが出るという特徴を持ちます。普段と違うかゆみや湿疹、衣類が擦れたときにピリピリとするような痛みがあれば、できるだけ早く皮膚科を受診しましょう。 白癬(水虫)とは? 白癬とは、白癬菌というカビが原因で生じる皮膚感染症。足にできる白癬を、俗に「水虫」と言います。 水虫は「趾間型(しかんがた)」「小水疱型(しょうすいほうがた)」「角質増殖型(かくしつぞうしょくがた)」の3つに分類されます。 ・趾間型… 足の指の間に赤みや小さな水ぶくれが出現。ジュクジュクしたりカサカサしたりして強いかゆみを伴う。 ・小水疱型… 足の裏や側面に小さな水ぶくれを形成し、強いかゆみを伴う。 ・角質増殖型… 足の裏全体が赤みを帯び、特にかかとの角質が厚くなる。ひび割れなどの症状が強く出るが、かゆみはない。 足の角質で増殖した白癬菌が、爪へと侵入することもあります。そのため水虫は長引きやすく、趾間型・小水疱型の場合は1カ月、角質増殖型は2~3カ月、爪に感染した場合は爪が生え変わるまで3~6カ月程度の治療を要するケースもめずらしくありません。もちろん個人差はありますが、長引く治療に根気強く向き合うことが大切です。 水虫の治療法 水虫の初期治療には、抗真菌薬というカビを殺菌する外用薬が用いられます。治療を始めてしばらくするとかゆみなどの症状が治まってきますが、角質の奥に入り込んだ白癬菌が生き残って再発することがあるため、自己判断で中断するのはNGです。医師の判断にもよりますが、ターンオーバーによって皮膚が新しく入れ替わるまで、1~2カ月は治療を続けましょう。 外用薬で十分な効果が見込めない場合、もしくは感染が広範囲に及んでいる場合は、抗真菌作用のある内服薬が検討されることもあります。特に爪水虫の場合、外用薬だけでは完治させるのが難しいため、内服薬との併用が一般的です。体の内側と外側から、白癬菌の増殖をしっかりと抑えていきます。 水虫が重症化しやすい人の特徴 水虫は、免疫力が低下すると感染しやすくなります。中でも重症化しやすいのは、以下のような人です。 ・糖尿病やHIV感染症などの基礎疾患がある ・妊娠中 ・長期的にステロイドを服用している ・抗がん剤治療を受けている これらに当てはまる人で水虫が疑われる場合は、症状が軽いうちから早めに皮膚科を受診するようにしましょう。専門医による適切な診断と治療を受けることが、回復へとつながります。 家庭でできる水虫の再感染予防 水虫は、性別に関係なく、誰もが発症する可能性のある病気。また、水虫は1度完治しても、白癬菌に感染すれば何度も繰り返し発症します。家庭内感染や再感染を予防するには、日常生活での工夫が不可欠! 以下のポイントを参考に、できることから取り入れてみてください。 ・マットや寝具、スリッパなど足が触れるものを家族間で共有しない ・床や畳など、足が触れるものをこまめに掃除する ・せっけんやボディソープで毎日足を清潔に保つ ・通気性の良い靴下、靴を選ぶ ・菌の繁殖を防ぐために、靴は数足をローテーションさせる ・靴下はよく洗浄し、毎日履き替える 白癬菌はジメジメとした湿度の高い環境を好みます。そのため、感染を予防するには、足や靴を清潔に保ち、湿気をためないことが重要です。特にバスマットは湿気がたまりやすく、白癬菌の温床になる可能性も。毎日洗浄し、しっかりと乾かすことが感染を防ぐポイントになります。 こんな症状には要注意! 水虫の受診の目安 「たかが水虫」と思うかもしれませんが、放っておくと症状が悪化したり指が腫れたりするリスクがあります。軽度のかゆみや赤みが見られる程度であれば、市販薬でも治る可能性はありますが、以下のような症状が出た場合は要注意です。 ・市販薬などを使用しても改善が見られず、かゆみなどの症状が悪化している ・強いかゆみや痛み、ただれなどが出現し、日常生活に支障をきたしている ・発疹や水ぶくれ、膿などの出現 ・爪が変色・変形するなどの症状がある ・家族にも同様の症状が出ている 水虫を完治させるには、根気強く治療を続ける必要があります。なるべく早く皮膚科を受診し、症状の悪化や再発を防ぎましょう。 まとめ 帯状疱疹も水虫も、50代以降に発症リスクが高まる皮膚感染症であり、免疫力の維持が予防のカギとなります。免疫力の維持には、規則正しい生活やストレスをためない工夫が欠かせません。しかし、気をつけていても何らかの原因がきっかけで発症してしまうこともあるでしょう。違和感に気づいたときには、なるべく早い病院受診が回復への近道です。皮膚の健康を保ち、快適な生活を送るために、今日からできることを実践してみてくださいね。 ※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。 ※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。 取材・文:生垣育美/産科・婦人科領域の医療現場において医師の事務作業を専門にサポートする産婦人科ドクターズクラークとしての勤務を経て、第1子出産をきっかけにWebライターへ転身。夫・息子と3人暮らし。やんちゃな息子に振り回されながら、なんとか仕事と家庭を両立させる日々……。 シニアカレンダー編集部では、自宅介護や老々介護、みとりなど介護に関わる人やシニア世代のお悩みを解決する記事を配信中。介護者やシニア世代の毎日がハッピーになりますように! シニアカレンダー編集部 「人生100年時代」を、自分らしく元気に過ごしたいと願うシニア世代に有益な情報を提供していきます! 監修者:医師 LIKKAスキンクリニック院長 林瑠加先生 慶應義塾大学形成外科学教室に約10年間在籍し、一般形成外科、小児、再建分野を幅広く担当。2015年からは4年半、カンボジアに居住し現地での臨床にも従事した。帰国後は形成外科に加え皮膚科、美容皮膚科の経験を積み、2024年11月に品川区西五反田に「LIKKAスキンクリニック」を開業。患者の身近な悩みに対応すべく、保険・自由診療双方からのアプローチで診療をおこなっている。 【関連記事】 「キスマークを隠す熟女に見える!?」帯状疱疹のかき防止で患部にガーゼを貼った結果<熟女系> 「帯状疱疹!?」じんましんだと思っていたら、まさかの診断をされて<帯状疱疹> 「よく我慢しましたね」帯状疱疹の激痛に対し夫は?

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