会社から支給されるボーナスは、受け取る前に社会保険料などが天引きされることが当たり前だと感じているかもしれません。しかし、20年以上前には、こうした天引きが行われていない時代がありました。 では、当時と現在のボーナス支給における仕組みには、どのような違いがあったのでしょうか。本記事では、「特別保険料」と「総報酬制」の違いや導入の経緯を解説し、現在の制度における注意点についても紹介します。
昔と今ではボーナスからの保険料徴収の仕組みが違う
ボーナスから社会保険料を徴収する方法は、昔と今で大きく変わりました。その違いは、1995年4月から2003年3月まで適用されていた「特別保険料」と、2003年4月以降導入された「総報酬制」の仕組みです。
そもそも、かつてはボーナスから社会保険料は引かれていませんでした。しかし、保険料逃れなどの不公平をなくすため、1995年4月から「特別保険料」が導入されました。
特別保険料の仕組み
「特別保険料」では、ボーナスに対して1%の厚生年金保険料が徴収されていました。これは労使折半され、労働者負担分は0.5%でした。この保険料は労働者自身の年金には反映されず、当時の高齢者年金給付に充てられる仕組みでした。
総報酬制の仕組み
「総報酬制」は、ボーナスも月給と同じく社会保険料の対象となる仕組みです。現在は、ボーナスからも所得税、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、さらに40歳以上の場合は介護保険料が天引きされます。保険料率は給与や扶養人数によって異なりますが、一般的には20%前後が控除されます。
「総報酬制」になった背景とは?
「総報酬制」が導入された背景には、従来の仕組みが抱える2つの課題がありました。
1つ目は、「特別保険料」に関する問題です。1995年から2003年まで、ボーナスに対して1%(労使折半)の厚生年金保険料が徴収されていました。しかし、この保険料は労働者自身の年金には反映されず、高齢者年金の財源に充てられていました。
2つ目は、当時の報酬体系が抱える不公平さです。企業は社会保険料を抑制するため、月給を減らしてボーナスを増やす手法を取ることが可能でした。このような仕組みでは、同じ収入額でも報酬の内訳次第で負担額が異なるため、保険料負担の公平性に欠けていました。
こうした課題を解消するため、「総報酬制」が導入されました。この方式では、給与とボーナスを合わせた総報酬を基に保険料を計算することで、負担を収入全体に応じて公平に割り当てる仕組みを実現したのです。
ボーナス増額時に注意すべき「総報酬制」の影響
ボーナスが増額した場合、年末調整で追加徴収が発生することがあります。特に、個人業績や役職手当の増額によりボーナスが大幅に増加した際は、注意が必要です。
この追加徴収の原因には、「総報酬制」の導入と所得税の累進課税が関係しています。通常、毎月の給与から源泉徴収される所得税は、月給のみを基に計算され、ボーナス分は考慮されません。
しかし、年末調整では1年間の総収入が集計され、「総報酬制」に基づくボーナスも含まれるため、税率が引き上げられ、源泉徴収額が不足し、追加徴収が必要になることがあります。
まとめ
「昔はボーナスがほぼ全額手元に残った」と聞くとうらやましく感じるかもしれませんが、当時の仕組みでは、保険料が自身の年金に必ずしも直接反映されなかったこと、また社会保険料の負担において公平性を欠いていたことが問題でした。
この背景を知ることで、現在の仕組みが公平で納得のいくものだと感じられるのではないでしょうか。
出典
厚生労働省 特別保険料について
国税庁 賞与に対する源泉徴収額の算出率の表(令和6年分)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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