親の年金が少なく生活が困難であるなら、子どもとして何とか支援できないかと考える人も少なくないでしょう。 しかし自身の生活にも余裕がなく、十分な経済的援助ができないという悩みを抱える人もいるかもしれません。2025年の年金制度改革に向けて、低年金者に対する給付の充実化が検討されていますが、実現には相応の時間を要します。 このような状況で検討したい選択肢の一つが「生活保護」です。親の生活を支えるための制度として、生活保護の受給要件や手続き方法、メリット・デメリットについて知っておきましょう。
親が生活保護を受給するメリット
親が生活保護を受給することで、子や親族の経済的負担を軽減しながら、親自身が安定した生活を送れるようになります。具体的には、次のようなメリットが挙げられます。
・最低限の生活保障
生活保護制度は、健康で文化的な生活を営むために必要な最低限の生活費を支給するものです。これにより、食費・被服費・光熱費などの日々の出費の負担が減ります。
・医療費の補助
生活保護を受けると、医療費の自己負担が免除されます。高齢者にとっては、医療費の負担が減ることで生活の安定が図れ、健康管理も行いやすくなります。
・住宅扶助
家賃の一部または全額が支給される場合もあります。特に家賃負担が大きい都市部では、住宅扶助が大きな支えになります。生活保護を受けることで、これらの支援が親の生活を支える手段となります。また、子ども自身の生活にも安心感が得られます。
図表1
厚生労働省 生活保護制度 保護の種類と内容
生活保護の受給要件
生活保護を受給するには、以下の要件を満たしている必要があります。
・資産の活用
生活資金に充てられる預貯金や不動産、車などがある場合は、まずこれらを活用することが求められます。通院に必要な車など、生活に不可欠なものの所有は例外として認められる場合があります。
・能力の活用
働く能力がある場合、可能な範囲で就労を試みることが求められます。高齢や病気などで就労が難しい場合は対象外です。
・あらゆるものの活用
他の公的支援制度や給付金、援助を利用できる場合は、まずそれらの活用を検討する必要があります。
・扶養義務者による扶養
申請者に扶養義務者(子どもや配偶者)がいる場合は、まずその家族からの支援が可能かどうかが確認されますが、家族に支援する余裕がない場合は生活保護費の受給が可能となることもあります。
生活保護の申請手順
生活保護の申請は、以下の手順で行います。
1.福祉事務所での相談
まずは福祉事務所で相談をします。担当者が申請者の生活状況を詳しく聞き取り、手続きの案内や必要書類の確認を行います。
2.必要書類の準備
申請には、収入証明書、年金の受給証明、資産状況を示す書類などが必要です。これらを申請書とともに提出します。なお、必要書類がそろっていない場合でも、申請が可能なケースもあります。
3.申請と審査
書類を提出し、正式に申請を行います。その後、家庭訪問や収入調査などを通じて生活状況が審査され、要件を満たしているか確認されます。
申請手続きが完了すると、審査結果が通知され、支給が開始されます。申請に不安がある場合は、福祉事務所の担当者にサポートを受けながら進めることも可能です。
親と自身の生活のために生活保護を検討しましょう
「子どもがいると生活保護は受給できない」という誤解を抱く人が多いです。しかし、生活保護を申請する際は、扶養義務者である家族が援助できるかどうかが確認されるものの、必ずしも扶養義務者が支援を行う必要はありません。
扶養義務者自身が経済的な余裕がない場合には、申請者の生活保護の受給が可能と判断されるケースが多くあります。正しい知識を持ち、必要な支援を前向きに活用することで、親の生活に安心をもたらすことができるでしょう。
出典
厚生労働省 生活保護制度
執筆者:西村りえ
2級ファイナンシャルプランナー、AFP
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