全国最難関の東京大学で、女子学生の割合は約2割。男子学生と肩を並べて学ぶ東大女子は、努力家で堅物のイメージを持たれやすい。だが、よくよく目を凝らせばハングリー精神に溢れる学生もいる。今回紹介する馬耳内さん(文科Ⅲ類・2年)は、駒場キャンパス近くのボロアパートで、電気・ガス・水道なし生活を1年間続けたというクレイジーな経験の持ち主だ。
木登りに野宿、ヒッチハイク等々、野性味溢れるエピソードには事欠かない。なぜ彼女は、キラキラ女子の逆張りのような生き方を選ぶのか。
「夏は冷房代わりに水浴びをしていた」驚異の貧乏生活
――大学進学後、1年間ほど木造築60年のアパートで暮らしていたと聞きました。現在は退去されているそうですが、どんな物件だったのでしょうか?
馬耳内:
キャンパスから徒歩15分で家賃3万円というコスパの最強さに目がくらみ、入居を決めました。でも、よく見たら風呂なし(シャワーは有料)、トイレは共同。安いだけあって壁は薄く、隣人の笑い声が部屋中に響きわたるような異様な空間でした。シャワーは学校にある備え付けのものを使い、湯舟には1年浸かっていませんでした。
――風呂トイレを見落とすとは、本当に目がくらんでいますね。電気も通っていなかったとか。
馬耳内:
最初は契約しようと思っていましたが、電気がなくても生活できていたので、結局しそびれてしまいました。
それでも生活の大半は何とかなりましたが、一番の敵は気温。夏本番になると暑さで夜は寝付けず、冷房代わりに全身水浴びをしてから、眠りに就いていました。逆に冬は寒さがきつくて、午前3~4時頃の一番寒い時間帯に毎日目が覚めました。布団がなかったのでヨガマットの上に寝袋を敷き、10枚くらい重ね着してスキーウェアまで着て寝ていたんですが、それでも耐えられませんでしたね。
――布団はないのにスキーウェアはあるんですね……。そもそもなぜ、そのような極限の生活をしようと思ったのでしょうか?
馬耳内:
うちは父親が会社員、母親がパートのごく一般的な家庭なんですが、高校を中退して2浪に至るまで、両親に甘えながら散々迷惑をかけてきてしまったので、こういう生活でもすれば少しは自立できるのではないか、と考えていました。
名門都立高校中退→フリーター→東大合格まで
――どうして高校を中退することになったのか、差支えない範囲で教えてください。
馬耳内:
中学時代から不登校で、元々学校生活が苦手だったんです。都立日比谷高校に入学したはいいものの、根っからのコミュ障で友達ができず、体育祭すら欠席する始末で。そのうち夜遊びに出かけるようになって勉強についていけなくなり、高1の夏休みには退学しました。
――そこからどのようなルートをたどって東大に合格されたのですか?
馬耳内:
高校を中退後、しばらくは高等学校卒業程度認定試験(旧:大検)を取るためコンビニでバイトしながら半フリーター、半予備校生の生活をしていました。17歳の冬に、自分の生活がむなしくなり、東大に行こうと突然奮起して。1浪を経て一度は明治大学に入学しましたが、そこで意外と勉強が面白いということに気づき、「これが東大だったら」と思ってしまって。大学を7月に辞め、その後再度、受験生に戻りました。
笑って読めるウェブメディアを作りたい
――東大合格後は、ヒッチハイクも頻繁にしているとか。
馬耳内:
はい。2浪目の東大入試にあたって親から「入試に落ちたらワーホリでオーストラリアに行って働け」と言われたんですが、合格発表が怖くて頭がどうにかなりそうで、現実を忘れるために始めました。近いところでは山梨の青木ヶ原樹海、遠いところでは京都、福岡まで、10回以上はしています。
――20代前半の女性はブランド品とか有名リゾート地とか、キラキラしたものに憧れる人が多いように思うのですが、そういったものに興味はないのでしょうか?
馬耳内:
あまりないですね。自分が面白いと思ったことにチャレンジするのが好きなので。
――今後の展望を教えてください。
馬耳内:
友人と一緒に、ウェブメディアを立ち上げたいと思っています。「オモコロ」や「デイリーポータルZ」の東大版のようなイメージで、東大生が全力でふざけるメディアを作りたいんです。
3万円アパートやヒッチハイクのような、「やってみた」系の記事もどんどん上げていきたい。今年はその立ち上げに費やす予定です。
<馬耳内さん(22歳)>
2002年、東京都生まれ。中卒東大生。Xアカウント:@oishitonyu
立ち上げ予定のウェブメディア:「下馬評族」(作成中)
<取材・文/布施川天馬>
【布施川天馬】
1997年生まれ。世帯年収300万円台の家庭に生まれながらも、効率的な勉強法を自ら編み出し、東大合格を果たす。著書に最小限のコストで最大の成果を出すためのノウハウを体系化した著書『東大式節約勉強法』、膨大な範囲と量の受験勉強をする中で気がついた「コスパを極限まで高める時間の使い方」を解説した『東大式時間術』がある。株式会社カルペ・ディエムにて、講師として、お金と時間をかけない「省エネ」スタイルの勉強法を学生たちに伝えている。(Xアカウント:@Temma_Fusegawa)
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