小林薫“マスター”、初恋の女性の娘の学費援助を申し出た竹原ピストル“久保井”に「金で心は買えない」<深夜食堂 6>

漫画家の久保井(竹原ピストル)と担当編集者の平井(円井わん)/(C)2026安倍夜郎・小学館/「深夜食堂6」製作委員会

小林薫“マスター”、初恋の女性の娘の学費援助を申し出た竹原ピストル“久保井”に「金で心は買えない」<深夜食堂 6>

11月7日(土) 9:51

漫画家の久保井(竹原ピストル)と担当編集者の平井(円井わん)
【写真】作れるものなら、注文に応じ何でも作る「めしや」のマスター(小林薫)

小林薫主演ドラマ「深夜食堂 6」(毎週火曜深夜1:26-1:56ほか、MBS/TBSほか)の第3話「ピリ辛こんにゃく」が11月3日に放送され、初恋の女性と再会した漫画家・久保井(竹原ピストル)の“ピリ辛”すぎる恋のてん末が描かれた。(以下、ストーリーのネタバレを含みます)

■7年ぶりに復活した人情ドラマ

本作の原作は、全世界シリーズ累計発行部数900万部超の安倍夜郎氏の同名コミック(「ビッグコミックオリジナル」[小学館]にて連載中)。2009年に初のドラマ化。以来、5シーズンを重ね、世界190カ国でストリーミング配信もされている。映画版も2本制作された本作が「深夜食堂 6」として、7年ぶりに復活した。

舞台は、繁華街・新宿の路地裏にひっそりとたたずむ「めしや」。営業時間は深夜0時から朝の7時ごろまで。そのため、人々に「深夜食堂」と呼ばれている。マスター(小林)が1人で切り盛りしており、メニューは、豚汁定食、ビール、酒、焼酎のみ。だが、マスターが作れるものなら客の注文に応じて何でも作る。

マスターのおいしい料理、そして人情味あふれるマスターや客同士の会話を楽しみに、さまざまな職業、さまざまな事情を抱えた者が日々訪れ、常連客も多数。時にせつなく、時に温かな人間ドラマが展開する。

■苦節28年、やっと日の目を見た漫画家・久保井

「めしや」の客・久保井は、苦節28年で最近やっとヒット作が出た漫画家。その作品「D-CHILDREN」は、SNSのトレンドに上がったり、映画化の話も来るほどの盛り上がりを見せている。台湾などの海外でも人気があるようだ。

ある日のサイン会のこと。美和と名乗る女子高生に久保井がサインしていると、突然、「久保井くん!」と声が。声の主は、高校時代の初恋の女性・真季(映美くらら)だった。卒業以来の思わぬ再会に「えっ!?真季ちゃん?」と、驚きと喜びを隠せない久保井。美和は真季の一人娘で、久保井のファンである娘に付き添って彼に会いに来たのだった。

真季は、高校当時、久保井にとっては高嶺の花で、彼は密かに彼女の似顔絵を描いていた。それが同級生たちに見つかり、教室中に回されてイジられていた時、真季が「これ、もらっていいかな?久保井くんが有名な漫画家になったら、皆に自慢するから」と言ったことがあった。そのことが彼は本当にうれしくて、漫画家になろうと決意し、有名になるまで諦めずに頑張ってこられたのだった。

そんな手の届かなかった真季と再び縁を結べたことに久保井は有頂天。「めしや」で、真季は現在バツイチで娘と2人暮らしなのだと話す彼を、常連客の小道(宇野祥平)が、今の久保井なら射止めるのも夢じゃない、チャンスだ、と焚き付け、久保井はまんざらでもない様子ではしゃぐのだった。

■苦しい生活を打ち明ける真季

久保井は「めしや」に真季を連れてきた。そして、“ピリ辛こんにゃく”を注文。それは、彼が売れない頃からこの店で必ず頼む一品だった。売れても庶民的な味を好む彼に、真季は「安心した。変わってなくて」と微笑み、一緒に料理を楽しんだ。

真季は、離婚でつらい思いをさせてしまった美和への罪滅ぼしで、現在高3の美和が志望する美大に行かせてやりたいと考えていた。そのために、医療事務の仕事の他に時給の良いスキマバイトもして学費を貯めていた。

生活は大変だが、「私が働かなきゃ、娘と共倒れだもん…」と、しんみりした様で語る真季の横顔を、久保井は何か言いたそうな表情で見つめた。
久保井が昔から必ず頼む、ピリ辛こんにゃく


■久保井の申し出

後日、2人はまた「めしや」に。久保井が仕事で欠席した高校の同窓会のために地元の金沢へ帰っていた真季は、その様子を彼に報告し、卒業アルバムに挟んであった、と言って、久保井が描いた彼女の似顔絵を差し出した。

「持っててくれたんだ…」と胸がいっぱいになる久保井。そして「この前、ここに来た時からずっと考えてたんだ」と、意を決したように言った。「美和ちゃんの大学のお金、僕に出させてくれないかな?」

突然の申し出に「えっ?」と聞き返した真季に、「今の僕なら力になれる」と久保井は告げた。「何それ…。私、そんな物欲しそうな顔してた?」と、情けなさと悲しさが混じった表情で言った彼女に、久保井は慌てて、施しのつもりではない、と否定し、似顔絵を描いてイジられた時の真季の言葉で今の自分がある、その恩返しなのだと訴えた。

真季は、自分がそう言ったことを覚えていなかった…。だが、彼の熱意を受け入れ、学費の援助を受けることにした。

久保井は1人で来店した時に、マスターに、今までずっと自分のためだけに漫画を描いてきたが、真季のために何かしてあげられるのがうれしいのだと語った。しかしこんなやり方は間違ってるのだろうか、と悩む彼に、マスターは「久保井ちゃんが頑張って稼いだ金だ。何に使おうと自由だ」と告げた。

だが「けど…」と続け、「金で心は買えない、っていうからな。あとは、受け取る側の気持ち次第なんじゃないのかな」と、マスターなりの考えを伝えた。

■「私たち…結婚するの」

年が明け、2月の半ばを過ぎた頃、久保井が来店。真季から「美和が第1志望の美大に合格した」と連絡があり、祝杯をあげようと待ち合わせしたとのことだった。

真季が店のドアを開けて入ってきた。その後ろから「よう久保井!」と同級生の池田(忍成修吾)が。戸惑う久保井におかまいなしで、再会を喜び一方的に話しかける池田…。3人で乾杯した後、池田は久保井に、美和の学費援助に対し礼を言った。

池田は、最初は久保井に下心があるのでは…と疑っていた、と詫び、「何の見返りも無しに、カネ出すヤツなんかおらんやろ?男と女の間にも友情ってあるんやな!」と、感動したことを明るい口調で語った。

状況がつかめないまま池田の言葉を聞いていた久保井は、そこでやっと「ちょっと待って。なんで池田が僕に礼を言うの?」と疑問を口にした。「そもそもなんで真季ちゃんと一緒に居るの?」と尋ねた久保井に、真季が「私たち…結婚するの」と言った。

数秒間があって、「結婚!?」と驚く久保井。池田も昨年離婚しており、先日の同窓会で再会した真季とバツイチ同士で話が合って仲が深まったとのこと。養育費の支払いが残っていて美和の学費を出す余裕が無かった池田は、「久保井の厚意は、本当にありがたいと思っとる」と、改めて彼に頭を下げた。

真季は、美和を東京に残し、池田の住む金沢に戻ることにした、と告げ、その前に久保井に感謝を伝えるために2人でここにやってきたのだと語った。

■「僕が稼いだお金、どう使おうと僕の自由」

あまりにも想定外の急展開に理解が追いつかず、久保井は「結婚…そりゃよかった。お似合いだよ。そっか…ハハハハ」と空笑いするしかなかった。ピリ辛こんにゃくを食べ、むせる久保井。水を持ってきたマスターは、「唐辛子の量、間違ったんじゃないですか?ピリ辛すぎますよ」と、この“ピリ辛”すぎる状況に掛けて訴えた久保井の心情を察し、「ゴメンゴメン。ちょっと効かせすぎちゃったかなぁ」と乗っかった。

後日、久保井は、2人の結婚式に80万円もする二尺玉の花火を打ち上げてやったのだった…。「頼まれてもいないのに大金かけて、どうかしてる」と呆れる担当編集者の平井(円井わん)に、久保井は「いいんだよ。僕が稼いだお金、どう使おうと、僕の自由なんだから」と言い、マスターに同意を求めた。マスターは「そうだね…」と苦笑いして、足早に厨房に戻っていった。

そして彼は、連載の合間を縫って読み切り短編を描き、行き場の無い気持ちを昇華させた。初恋の女性と再会した中年男が、一方的に恋して空回り…というストーリー。それを読んだ平井は「才能の浪費」とバッサリ。「とっとと忘れて、連載のネーム考えましょう」と告げた彼女に、久保井はピリ辛こんにゃくを食べながら「ピリ辛~!」と叫ぶのだった。

真季は本当に久保井の思いに気付いてなかったのだろうか…。「恩返し」だと言われても数十年ぶりに会った人間からすんなり貰って良い金額ではない。少なくとも好意があったことはわかっていたはずで、非常にズルくてしたたかだ。

池田も高校時代の“似顔絵事件”で久保井の真季への思いに気付いていたはず。それに、プライドがあれば義理の娘になる美和に無償で援助をしてもらうことなどできないはずで、「養育費を払い終えたら少しずつでも返そう」という気がさらさら無さそうなところに腹が立った。

視聴者も、真季と池田に対し、「援助辞退しろよ」「よく金もらえるな」「胸糞すぎる」「こんな2人、絶対すぐ別れる」と怒りが収まらない様子。そして久保井に対して「いい人すぎる」「可哀想すぎる」と同情の声が集まった。

もし久保井が同窓会に行っていれば、また援助を申し出る前に「好きだ」「付き合わないか?」と言っていれば、違う未来があったのだろうか…。これから4年間、他人の妻になった女性の娘のために学費を払い続ける久保井を思うと、せつなさでいっぱいになった。

◆文=鳥居美保


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