第39回東京国際映画祭のフェスティバル・ディレクターを務めた久松猛朗氏が取材に応じ、次回、節目となる第40回目に向けたロードマップの一端を語った。2017年3月から21年3月にもフェスティバル・ディレクターの経験があり、5年ぶりの再登板。今年は、映画芸術科学アカデミーよりCEOのビル・クレイマーらを招いたイベント開催も大きな話題を集めている。
――毎回の積み重ねが、東京国際映画祭の歴史を築き上げてきたなかで、やはり次回、第40回は大きな節目になるのではないでしょうか。
その通りですね。今年に限っては、4月からの就任だったので、会期なども決まっていて、すべてを一からやるわけにはいかなかったですが、それでも「Nippon Cinema Now」部門にコンペティションを導入したり、現在制作中または仕上げ作業中の日本映画や、日本とアジア(東アジア、東南アジア)の共同製作映画を対象に、参加作品を募集する「TIFF-WIP(TIFF ワーク・イン・プログレス)」をオープンにし、拡大したり、いくつかの施策を進めてきました。
そして、来年は第40回ということで、大事な節目であり、次の10年を占うことになると思うんですよね。「第40回目をどうするか?」。それも頭に置きながらの今年の東京国際映画祭でした。
――具体的にお話いただけることはありますか?
まだ、そこまでは(笑)。映画祭を終えたばかりで、客観的に見られない部分もありますし、多方面から、いろいろなご意見をいただくことも必要ですから。まずは今年、第39回の成果を精査し、自問自答も含めて、振り返る。そして色々な方と相談しながら、そこから方向性を定めていくということになるんだと思います。
ただ、ありがたいことに、政府がこうやって支援をしてくださっているわけで、私も映画業界の一員なので、日本の映画、映画人を海外に紹介するという東京国際映画祭の機能は強化したいですね。先ほどお話した「Nippon Cinema Now」部門のコンペ化もそうですし、来年はその観点から、もっと強い方向性を打ち出せたらなと思っています。
――国際的な視点から、東京国際映画祭の役割や意義をどのように定義されますか?
第40回を迎えるなかで、その点も重要なポイントです。いまは釜山(釜山国際映画祭)が台頭し、中国でも大きな規模の映画祭が開催されている。そんな状況下で、我々のポジショニングや役割とは何なのか?今年の第39回についても、そういう視点で模索をしてきたわけです。アカデミーの認定映画祭の中に釜山は選ばれて、東京は選ばれていない。そこも何としても巻き返したいと思っています。
――いま、アカデミー賞の話題があがりましたが、今年の東京国際映画祭では、アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミー(Academy of Motion Picture Arts and Sciences)から、CEOのビル・クレイマー、プレジデントのリネット・ハウウェル・テイラー、メンバーシップ・インパクト&インダストリー最高責任者のメレディス・シェイが来日し、「アカデミー・イン・東京」をはじめとしたイベントが開催されました。これは非常に重要なトピックだったと思うのですが。
えぇ、まずは東京国際映画祭のことを知ってもらう。生で体験してもらい、魅力を肌で感じてもらうことが第一の目的ですね。上映作品のラインナップや、運営のオペレーションも含めて、第一歩は知ってもらうことじゃないですか。こちらから何かを働きかけるとか、そういう話ではないんです。
――ビル・クレイマーさんのインスタグラム(https://www.instagram.com/billkramer_/)には、東京国際映画祭での体験がアップされていますね。
ビルさんも、東京国際映画祭のことはすごく気に入ってくれていて、「絶対来年も戻ってきたい」とおっしゃってくれました。やはり、日本ならではのホスピタリティでしょうね。オペレーションも非常にスムーズだと。ビルさん主導で、アカデミー賞自体もグローバル化を進めているので、東京国際映画祭の作品ラインナップについても、注目してもらえたのではないしょうか。
――根本的な話に立ち戻りますが、やはり映画祭の主役は、作品ラインナップです。
方向性としては、シネフィルだけが集まるアート映画祭にはしたくないですね。もちろん、私もアート系の作品は見ますし、要はエンタメ作品とのバランスが重要です。誰もが見たい映画が見つかる。そんな映画祭にするためには、多様で多彩な作品ラインナップが必要です。
映画業界で50年仕事を続けてきましたが、「いろんな映画があって、それぞれに楽しみ方がある」。それが映画の魅力なんです。それを東京国際映画祭という場で、たくさんの皆さんに届けたいと思っています。その上で「日本の作品を海外に紹介する」「海外の作品を日本に紹介する」という2つのミッションを達成していきたいですね。
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