現代の仕事に欠かせないチャットツール「Slack」。便利な一方で、「あり得ない」使い方をする上司に悩まされる人も少なくない。都内の企業に勤める高橋太一さん(仮名・30代)も、上司の「Slackの使い方」に悩まされた経験を持つ。
「うちの会社では、Slackを使って情報を共有しています。パソコンはもちろん、会社支給のスマホにもアプリのインストールを義務付けられていて。それでも、みんな大人ですから、基本的には業務時間内のやりとりだったんです」
高橋さんによると、新しい課長が着任すると、24時間いつでもSlackでメッセージを送ってくるようになったという。
「とにかくSlackが好きな課長で、業務時間中に細かく進捗を聞いてくるのはもちろん、退勤後、深夜や休日でも『これ、どうなってる?』とメッセージを送ってくるんです。『業務時間外です』とも言えず、対応に困っていました」
「時間外でも即レスしろ」と詰め寄る異常な日常
時間外や休日の連絡を当たり前と考える課長に、高橋さんたちは深く困惑していたという。さらに厄介だったのは、返信しなかった際の執拗な追及だった。
「ある日曜日に、『この提案書、間違ってるよ。月曜朝、出社する前に資料を直しておいて』とメッセージが来たんです。業務時間外ですから無視して、翌朝の業務時間内に返信していたのですが、出社するなり私のデスクにやってきて、『なんで昨日すぐ返事しなかったんだ』『スマホくらい見てるだろ、資料どうするんだ』とネチネチ問い詰められたんです。謝罪してその場は収まりましたが、納得がいかなかったですね」
「その後、課の社員全員が集められて、『Slackはしっかり返事をするように。たとえ休日でも、スマホは見ているだろ。返信くらいはできるはずだ』と訓示がありました。みんな納得していなかったのですが、その場で異議を唱える人はいませんでした」
全員の前で「馬鹿野郎」「やめちまえ」と大暴言
休日の「仕事の無茶ぶり」や、時間外のスケジュール確認など、昼夜を問わない連絡強要に耐え続けていた高橋さんたち。しかしある日、ついに我慢の限界を超える決定的なトラブルが発生してしまう。
「ある取引先に提出する書類の見積金額が間違っていたんです。課長が休日の深夜に『明日の朝までに用意して。できるでしょ?』とSlackで投げてきたことも原因だったと思うんです。翌朝、課長も書類を承認したわけですから、確認したはずなのに。それなのに課長は激高したようで、会議の参加者全員の前で、担当だった私を『なんで間違ってるの?』『こんな適当な仕事でいいの?』と徹底的に問い詰め始めました」
高橋さんは言い訳をせず謝罪したものの、上司の怒りは収まらなかったという。
「会議の場だけでなく、課のメンバー全員が閲覧できるSlackのチャンネルでも、『大学出てこれはヤバい』『こんなケアレスミスするなんて、頭がおかしいんじゃないのか』『馬鹿野郎、どうしようもねえな』とネチネチ粘着してきて。本当にムカつきましたね」
「私も腹が立って、『課長も資料を確認されたんじゃないですか?』『そもそも、指示が曖昧すぎるし、作成の時間も少ない。これも原因ではないんですか?』と言い返したんです。そしたらブチギレたようで、『お前なんかクビにしてやる。会社やめちまえ! 俺の権限をナメるなよ』と恫喝されました」
秘密の別グループを結成し「上司追放作戦」を決行
孤独を感じた高橋さんだが、これまで泣き寝入りしていたメンバーたちから、思わぬ声が寄せられた。
「罵倒の翌日に、ベテランの小柳さん(仮名)から『課長の振る舞いは酷いと思う。別のチャンネルを立ち上げるから参加してくれ』とDMが入ったんです」
「小柳さんの音頭で、『課長を追い出すチャンネル』が出来上がりました。賛同者が次々と加わって、結局、課長を除く全員が集まったんです。みんなに聞いてみると、これまで深夜や休日に送られてきた大量のメッセージが出るわ出るわ。なかには暴言的なものもあり、報告書にまとめました。私だけではなく、みんな不満に思っていたようでした。証拠は全て、人事部に提出しました」
動かぬ証拠の数々に会社側もすぐさま調査に乗り出し、事態は急展開を迎えたという。
「人事部の調査に対し、課長は『指導の一環だった』『ミスをしたのが悪い。これを許してしまったら、部下が成長しない』と言い訳をしたそうです。また、深夜や休みの日の連絡についても『社会人は、業務時間外でも仕事のことを考えるべきだ』と話していたといいます」
結局どうなったのだろうか。
「課長は課のSlackで全員に『行き過ぎた言動があり、反省しています』と謝罪しましたが、完全に総スカンを食らっていました。結局、異動となり、送別会も開催されないまま去っていきましたよ」
時間外の執拗な連絡や仕事の「無茶ぶり」はパワーハラスメントに該当する可能性があり、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)に抵触するおそれもある。何よりも、真面目に働く部下に対する迷惑行為にほかならない。Slackのような手軽にメッセージを交換できるアプリの使い方には気をつける必要がある。
<TEXT/佐藤俊治>
【佐藤俊治】
複数媒体で執筆中のサラリーマンライター。ファミレスでも美味しい鰻を出すライターを目指している。得意分野は社会、スポーツ、将棋など
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