アパレル企業の明暗が分かれてきました。衣料品は無難な商品を手ごろな価格で販売すれば売れる時代ではなくなり、そのブランドならではの明確な強みが必要になりました。
この傾向は特に低価格帯の衣料品で顕著。アパレル各社は激しいシェア争いを繰り広げています。
ジーユーの売上高はいずれ「1兆円規模」に?
業績が絶好調なのがユニクロのファーストリテイリングで、2026年8月期は純利益が前期比25%増の5425億円でした。過去最高益を更新し、小売で初めて最終利益が5000億円を突破しています。
ジーユー事業も堅調。売上収益は同2%増の3367億円、営業利益は同8%増の328億円でした。
ユニクロが機能性や素材を重視し、長く使えるブランドという地位を得る一方で、ジーユーは低価格を武器に、トレンドを抑えたデザイン性の高い商品を展開しています。ジーユーは低価格とトレンドを組み合わせ、様々なアイテムを自由に組み合わせて好みのスタイルを確立できる設計にしたのです。
ファーストリテイリングが築いてきた生産体制や素材の調達、需要予測、在庫管理などの仕組みをフル活用し、スタイリングの楽しさを提供できることに強みがあります。
グループCEOの柳井正氏は、ジーユーを成長の第2の柱とし、売上高を1兆円規模に拡大する考え。国内だけでなくグローバルブランドへと育てようとしています。
世界的なデザイナーを招聘
そうしたなか、ジーユーは2026年秋冬から、商品全体を刷新しました。
黒を基調とした「ミニマル」、ノスタルジックな「クラシック」など、現代の様々なライフスタイルから着想を得た6つのコンセプトを軸に商品を構成。新たなクリエイティブ・ディレクターにフランチェスコ・リッソ氏を迎えています。
リッソ氏はプラダで約10年デザイン経験を積んだ、イタリア出身のファッションデザイナー。ジーユーをグローバルブランドに引き上げるため、世界的に高く評価されている人物を招聘しました。
手ごろな価格を武器にしてきたジーユーが、トレンドやファッション性をより重視することを示すメッセージであると見ることができます。
ジーユーはリニューアルの過渡期にあたる2026年6月~8月は夏物需要に対応しきれず、販売に苦戦。新たなコンセプトの浸透も十分ではなかったため、ブランディング強化に向けて動き始めました。
今期のジーユーの業績は、ブランド刷新の効果を測る重要なものになります。
「無難さ」がセールスポイントでは…
消費者が衣料品に厳しい目を向ける様子は、家計調査からも伝わってきます。二人以上世帯の年間の洋服代は、2019年が8万1795円でした。2025年は7万1485円。コロナ前を回復しておらず、1割以上も少ないのです。
物価高で消費者の節約意識は高まっています。食費など生活に必要なものに優先的にお金を回しているのは間違いないでしょう。衣料品の単価が上がっている一方で支出額が減っていることから、商品を厳選して購入する姿も浮かんできます。こうしたことが、手ごろな価格の無難な商品が売れなくなっている背景にあると考えられます。
苦戦している会社の一つが「ハニーズ」を展開するハニーズホールディングス。2026年5月期の最終利益は2割を超える大幅な減益でした。2026年6月~8月は売上高が7%近く減少しており、純利益は5割減。ハニーズは2028年5月期を最終年度とする中期経営計画を下方修正しています。
不調の要因に物価上昇の影響による節約志向の継続や、天候不順を挙げています。しかし、こうした状況はどこも同じで、ジーユーやしまむらは好調を維持しています。
ハニーズは誰でも着やすいベーシックなアイテムに特徴があります。価格も手ごろ。一方、消費者が積極的にブランドを選択する理由に欠けている印象があります。ベーシックなデザインであれば、多少金額が高くても機能性が高く、長く着られるユニクロを選ぶでしょう。
しまむらもカジュアル衣料に力を入れています。しまむらはスーパーの敷地内やロードサイドに多く出店しており、普段の買い物の範囲内に立ち寄れるのが特徴。ハニーズはショッピングモールが中心で、立地面でも強みを活かしきれていません。
かつて上場を噂されたこともあったが…
「earth music&ecology」や「AMERICAN HOLIC」などを展開するストライプインターナショナルも苦戦中。2026年1月期は28億円を超える純損失を計上しました。赤字幅は拡大しています。
ストライプインターナショナルが展開するブランドは、アンドエスティHDの「GLOBAL WORK」や「niko and...」、パルグループホールディングスの「mystic」など、強力なライバルに囲まれています。価格だけで差をつけるのは難しく、買い物客の体形に合うパンツや、仕事着・普段着で失敗しない商品の提供など、他のブランドにはない積極的に買う理由が必要です。
ストライプインターナショナルは当初、20代中盤の女性にターゲットを絞り込んだ商品展開をしてきました。宮崎あおいさんを「earth music&ecology」をアンバサダーに起用していた時代です。
そこからターゲット層を広げてきましたが、差別化ポイントが薄まった印象があります。
=====
安いことが売れる理由だったデフレは過去のものとなりました。高単価でも売れるインフレの今は、企業が利益を得られやすい時代とも言えます。一方、購入してもらう価値や理由をつけなければなりません。生き残りをかけた厳しい時代に入りました。
<TEXT/不破聡>
【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
【関連記事】
・
「GUは若者向け」と思い込む40代は損してる。“若者の服を無理に着ている感”はゼロ。プロが「過去指折り」と絶賛する傑作3選
・
GUのパンツ「2990円とは思えないクオリティ」「価格を超えた完成度」大人が履くべきマストバイ5選
・
「楽な格好=だらしない」を卒業。ユニクロ・GU・無印良品でプロが愛用する“大人の普段着”6選
・
GU新作が凄すぎた…「トレンドのパンツは価格破壊」「コスパ最強のブルゾン」完売前に絶対買いたい“マストバイ5選”
・
ユニクロ新作「おすすめ商品」と「おすすめできない商品」。男性が知らずに買うと失敗する“最大の注意点”とは