更年期はネガティブな時期じゃない
閉経の前後約10年を指す「更年期」。英語では「menopause」(メノポーズ)ですが、遠回しに「Change of Life」と呼ぶこともあるそうです。
〈更年期を「チェンジ・オブ・ライフ」と呼んでみる〉とポジティブにとらえ、2025年からYouTubeチャンネル「羽田美智子のChange of Life」を運営する、女優の羽田美智子さん(58)。
視聴者の悩みにこたえて羽田さんが赤裸々に語るこの番組は、開設1年で登録者10万人を突破しました。
このYouTubeをベースに、『羽田美智子、素敵なおばさんやってます』(羽田美智子著、KADOKAWA、2026年10月)を刊行しました。羽田さんは1988年に女優デビュー、『特捜9』シリーズ、『おかしな刑事』シリーズ、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』などで知られます。
そんな羽田さんが語る、“素敵なおばさん”ライフとは?
30代後半から始まった不調
疲れているのに眠れない。寝たと思ったらすぐに目覚め、真夜中に時計だけを眺める日々。羽田さんの不眠状態が始まったのは、35歳くらいの頃だそうです。まさか自分が眠ることに苦労するなんて、と共感する女性は多いのではないでしょうか。
不眠に加えて喉の痛みや微熱。検査しても数値には出ない不調があらわれます。〈37歳から39歳くらいの女性に訪れるこの時期を、「魔の中年期」と呼ぶお医者さまがいるそうです〉と本書(〈〉は同書からの引用、以下同)。
30代後半は、今の基準では十分若いです。でも人生50年といわれた昔なら立派な中年。時には心よりも体が先に、辛さをうったえてくるのです。
〈「前のめり」を、やめる〉と、羽田さんは悟りました。頑張り過ぎて、一生懸命になり過ぎて、気づけば力が空回りして、疲れだけが残る。頑張りが、一生懸命さが悪いのではなく、体がもう十分やりきっているとサインを出しているのです。
抜け毛に老眼、さあどうする?
わかりやすいプレ老化現象といえば、抜け毛と老眼かもしれません。排水溝にからまる髪の量がホラーレベルだったり、説明書の文字が小さくて読みづらかったり。
羽田さんも〈排水溝に毛玉のような塊。朝、目覚めれば枕にごっそり〉と、急に増えた抜け毛は悪夢のようだったそう。私達は目先の現象にとらわれ、シャンプーやスカルプケアに頼りがちです。しかし羽田さんが皮膚科に駆け込んだところ、原因はなんとインフルエンザ。数ヶ月前にインフルエンザに罹患したさい、咳をし過ぎて肋骨を骨折したのも起因のひとつでした。
さらに亜鉛とビタミンDの不足も発覚し、サプリメントを摂取。抜け毛はじょじょに収まったそうです。
そして40代半ばにやってきたのが、老眼問題。手元のものがだんだん見えにくくなって、手元と目の距離を試行錯誤しながらはかるのを、ひとりで苦笑いしてしまう。老眼を自覚するのは切ないですが、〈老眼鏡をかけている人を見ると、その人の人生の深さを知るようで敬意を感じ、素敵だなと思うんですよね〉と羽田さんは語ります。
年齢を重ねて変化していくのは、決して後ろ向きなことではなく、前向きでしかないのです。
尿漏れや加齢臭は、あなただけじゃない
まさか私が? と不安と驚愕、やがて落胆してしまう現象が、骨盤底筋群のゆるみと体のニオイ。お腹に力を入れたとたんに尿が漏れてしまう。子宮が外に出てきてしまって「子宮脱」になる場合も。加齢臭は男性独自の現象ではなく、女性にもあります。
顔の筋肉がたるむように、体の中の筋肉も然りです。加齢臭は酸化した古い油の匂いといわれ、年を重ねれば、皮膚も頭皮も平等に変化するのは当然なのでしょう。
こうした変化はなかなか人には打ち明けられません。でも〈たいていのことは、あなただけの問題ではありません。みんな、口に出さないだけで、同じことで、そっと困っている〉。骨盤底筋群は鍛えられますし、加齢臭は食生活で改善が見込めることもあります。
大切なのは、変化を恐れず、新たな自分として受け入れることではないでしょうか。変化していく仲間はたくさんいるというのを忘れないでほしい。本書はそう伝えているのです。
転ばないために、今、できること
羽田さんは胆のうの手術を受けてから、体の左右のバランスがあまりよくないそうです。そんな羽田さんがチャレンジしているのが片足立ち。医師に「内臓を強くするためにも、目をつぶって3分間、片足で立っててごらんなさい」とアドバイスされたそうです。
〈片足立ちは転ばないための貯金〉とはいえ、さすがの羽田さんも最初は手強かったそうで「目をあけたまま5分」と自分でルールを決めました。体の声を聞いて臨機応変に対応するのも、続けるための秘訣。〈挑戦される方は転倒のおそれもあるので無理のない範囲でお願いしますね〉とのアドバイスも。やはり無理は禁物なのです。
70歳だって、恋していい
年齢によってつい後ろ向きになってしまうのは、体の衰えだけではなく、心のありよう。
「もう50歳も近いのに、今更恋だなんて、恥ずかしい。こんな年で、人を好きになってしまっていいのでしょうか」というお便りも、羽田さんの元へ届くそうです。人生80年、現在では人生100年ともいわれているのです、50歳を過ぎてから約40~50年に、自ら恋愛禁止令を課すなんて、もったいなくないですか。
〈「誰かを好きになりたい」と思える。そのこと自体、「あなたの心がみずみずしく生きている」という何よりの証拠です〉と、本書はやさしく背中を押してくれます。
とりわけ女性は、“お母さん”“妻”という役を一生懸命に生きてきた人が多いです。70歳になってもいい、100歳だっていい。〈「自分」という役をようやく生きられるということ〉。素敵なおばさんライフは、まさに自分ファーストな生き方なのです。
<文/森美樹>
【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx
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