「ただ、人として話がしたかった」満員電車で大ケガを負った53歳女性。10年経っても忘れられない“事故後の対応”とは<漫画>

手術前のゆにこさん

「ただ、人として話がしたかった」満員電車で大ケガを負った53歳女性。10年経っても忘れられない“事故後の対応”とは<漫画>

10月21日(水) 8:45

提供:
満員電車での急ブレーキで大柄な男性の下敷きになり大ケガをしたゆにこさん(53歳※事故当時は43歳)。この不慮の事故により、全治2年以上の大ケガを負い、医師からは「完治はしない」と言われ、10年経った現在も走ることは難しく、日常生活でも膝の痛みに悩まされる後遺症が残ってしまいました。

そんな自らの体験を描いたのが実録漫画『満員電車で下敷きになりました』(幻冬舎)です。

ゆにこさんはグラフィックファシリテーター®︎として、企業の研修や会議などで組織内のモヤモヤした感情を絵として可視化する仕事をしていますが、そんな彼女が今回の事故で抱えたモヤモヤがかなりあったそう。今回は事故から10年経った今だから語れる想いを聞きました。

※本記事は全3回のうちの3本目です















































激しいスポーツはもうほとんどできない



――事故後、今でも後遺症はありますか?

ゆにこ: 走れなくなりましたね。信号がチカチカしてるから走ろうとすると痛くて走りきれないんです。夫はアメフトで両膝の前十字靭帯を切って、いつか歩けなくなるかもと言われてるので、筋トレしているんですね。だから私もがんばろうとは思うのですが……。事故から1年半後に9本のボルトを抜いた再手術後、夫に「リハビリや!」と沖縄の伊江島で約300段の階段を上らされましたが、もう死にかけました(苦笑)。

――300段の階段は普通でもキツいですよね。

ゆにこ: すぐに膝が痛くなってしまって。降りる時が特にキツいんですよね。膝が腫れてしまいました。自転車も、30分以上漕いでいると痛くなります。沖縄でバッティングセンターに行っても、左足の踏み込みが痛くて2打席が限界。あと大学からずっとやっていたテニスも本当に痛い。激しいスポーツはもうほとんどできないですね。

――大ケガをした足の膝は動かしたほうがいいんですか?

ゆにこ: もはやよくわからないんです。「動かしたほうがいい」という人もいれば、「痛いなら無理して動かすな」という人もいるので、試行錯誤です。医師からは「完治はしない」と言われ、通院の最後の日に「もうやることはない」と言われましたね。でもいつかカモシカのように走りたいから、整体、鍼、カイロプラクティックなどに今も通っています。

「お気の毒」とか心にもないようなこと言われて



――今回漫画を読んで、どんな感想が届いていますか?

ゆにこ: 鉄道会社に勤めている友達も問題意識を持ってくれてると言ってくれましたし、違う鉄道会社の方も一気に読んで「本当に問題だし、どんな現場でも起こり得ること」と言ってくれました。今回、会社を相手に民事調停まで行いましたが、友人・知人のように一人の人間として会話ができていたらよかったのになと思いました。

――駅員さんが、目の前にいるケガ人より、自分の立場ばかり気にして、何もやってくれないのがちょっとひどかったですよね。

ゆにこ: そうなんです。事故の後、救急隊、刑事さん、お医者さんみんなが「大変でしたね」って親身に声をかけてくれたんですよ。私は駅員さんともこういう会話がただしたかっただけなんです。もう本当にそれだけなんです。

事故後に病院から駅に電話しても、できる・できないとらちのあかないやりとりをした後に、突然「お身体の具合どうですか」とか「お気の毒に」とか言われても、まるで締めの言葉をマニュアル通りに言ってるようで……心にもないようなこと言われたときのダメージってものすごく大きいんですよね。いや、もう、電話を切るたびにアイスとか食べないとやってられませんでした(笑)。

――なんかそのモヤモヤがすごく感情移入できるなと思いました。

ゆにこ: 私は仕事で常日頃「モヤモヤに蓋をしたらダメですよ」とクライアント様に言っているせいか、改めて、できた漫画を読んでみると、私自身モヤモヤと向かい続けた記録だったのかなと思いました。この漫画のちょっと弱いところは、私自身がモヤモヤし続けているばかりで、激しく腹を立てていないので、読み手としては「どうしたいの?!」とイライラするかもしれません。

当時の私は、それほど強い問題意識もなく、色んな人のアドバイスをもとに「とりあえず電話してみよう」と行動しては壁にぶつかり、またモヤモヤしながらも、しつこく「ダメモトで電話してみよう」を繰り返していただけなので……。

モチベーションがないから続いた



――実際に民事調停はどうだったんですか?

ゆにこ: 鉄道会社は、とても鉄壁だということが徐々にわかりました。病院では「バスだったら良かったのに」って言われましたが、鉄道事故の判例は、多くの乗客が死亡した大きなケース以外出てこないんです。私のような事故はそれなりに起きてるはずなのに、泣き寝入りしてるのが2〜3例あるだけ。言い換えると、ほとんどは声すらあげていないのではないでしょうか。

裁判は訴えるだけだけど、民事調停は話し合える場だということで、相談できる弁護士さんも見つかったこともあり、そこに望みをかけました。

当初、調停に素人の私は、駅員さんには教育研修を受けてほしいとか、車内の危険を周知するポスターを掲示してほしいとか、具体的なTO DOリストを作っていました。でも、弁護士の先生から止められました。「やっておきます」と言われて終わってしまうと。向こうから何かを提示してくる聞き方をしないといけないそうです。

――何年もかかる民事調停ができたモチベーションは何だったんですか?

ゆにこ: それがモチベーションがなかったから、多分続いたんだと思うんです。民事調停って何だろうっていう興味と、離婚している人たちから離婚調停の話を聞いてたこともあって、調停員が入れ替わり立ち替わり入る場に行ってみたかったんです。あと弁護士先生と話すというのも興味がありましたね。やり始めてからも好奇心だけでズルズル続けていった感じです。

話し合えば分かり合えると思っていたのに……鉄道会社との民事調停は不成立に



――民事調停はどういう展開になっていったんですか?

ゆにこ: 民事調停も、なかなかどういう落としどころがいいのかわからないまま、最後まで主張が食い違い、不成立で終わってしまいました。

調停が終わってしまった時は「話合ったらわかり合える」と信じていただけに、虚しさに襲われて落ち込みもしましたが、「いいもん、私には漫画があるもん」「伝えるべき相手には伝えた」「今度は乗客の側から意識を変えてボトムアップだ」と開き直ってはいたんですね。でもいざ本が出来上がってきたら、「この本が売れなかったら、本当に終わってしまうんだ」と思ったら、夜中に初めて涙が出てきました。

今も泣きそうなんですけど、10年ズルズルやってきたことがとうとう終わる。これが最後のチャンスだと思うと怖いです。入院中は電話ひとつするのも大変ですごく忙しいから、流れるままにやってきたから、悲しいとか悔しいといった感情に蓋をしていたんでしょうね。多分、痛みの感情も今出てきたようで、涙がこみあげてくる自分に自分でもビックリしました。

この1冊目の漫画が売れたら、続きもあるかもしれませんが……まずは、駅員さん任せにはできない現実があって、安全はみんなでつくっていくもの、ということを一人でも多くの方に知ってもらえたらと思います。

<取材・文・撮影/谷亜ヒロコ>



【関連記事】
・ 満員電車が急ブレーキ!→大柄な男性の下敷きに…「10年経っても走れない」53歳女性が語る、一瞬で人生が変わった日<漫画>
・ 乗っている電車が急ブレーキ→下敷きになって膝の骨が陥没…後遺症が残る大ケガに。本人が問う「事故の責任は誰に?」<漫画>
・ ああっトイレが間に合わない!“お腹が弱い”女性の、人に言えない日常。引き金はストレスだった<漫画>
・ 女性の離婚を描いた漫画で、夫たちに“名前がない”理由。『離婚するなら、今日かもしれない』作者が語る<漫画>
・ 「酔っていないと働けない」仕事中コンビニに走り缶ビール一気飲み。アルコール依存体験を描く作者を取材<漫画>
女子SPA!

生活 新着ニュース

合わせて読みたい記事

編集部のおすすめ記事

エンタメ アクセスランキング

急上昇ランキング

注目トピックス

Ameba News

注目の芸能人ブログ