桑田佳祐の新曲に「デモテープみたい」の声も。大泉洋主演『俺たちの箱根駅伝』が抱える“根本的な問題”とは

『俺たちの箱根駅伝』(日本テレビ)公式サイトより

桑田佳祐の新曲に「デモテープみたい」の声も。大泉洋主演『俺たちの箱根駅伝』が抱える“根本的な問題”とは

10月21日(水) 8:46

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視聴者はドラマに何を求めるのでしょうか?その中で主題歌はどのような役割を果たすものなのでしょうか?

改めてテレビドラマの存在意義について考えさせられるニュースです。

「期待外れ」の声が聞こえてくる新ドラマ『俺たちの箱根駅伝』



10月10日からスタートした『俺たちの箱根駅伝』(日本テレビ系)が振るわないと話題です。初回視聴率は8.6%、2話目は8.9%とやや持ち直したものの、原作・池井戸潤、主演・大泉洋というゴールデンコンビにしては期待外れとの声が聞こえてきます。

そして、ドラマと同様に肩透かし感を訴える意見が、桑田佳祐の歌う主題歌「神々の襷(たすき)」にも寄せられているのです。

「最近の桑田佳祐の曲はこんなに音がチープなの?? 聞くに絶えない」(原文ママ・正しくは「堪えない」)というXの投稿は113万近いインプレッションを集めています。「確かにコレは酷い(笑)」とか「デモテープの音源みたい」と、投稿に同調する意見の一方で、「幼少からサザンを嗜む身としては馴染みのある音色と感じる」といった反論もあり、議論が加熱しています。

筆者もドラマを観て、桑田の曲を聴きました。それを踏まえての感想は、視聴率が低調なことと、なおかつ音楽に拍子抜けしたという意見は、どちらも理解できるものだと感じました。

どう転んでも美談になると決まっている



しかし、だからといって、これが大泉洋や桑田佳祐といった個人の資質の問題であると、短絡的に決めつけるわけにもいきません。

なぜなら、『俺たちの箱根駅伝』をそもそも「ドラマ」と呼んでいいものかどうか、という疑問が生じるからです。

どういうことかというと、お正月の風物詩である箱根駅伝を中継する日本テレビが、それを題材にしたドラマを制作するということは、どう転んでも美談だと決まっているからです。

それゆえに、独立したコンテンツとしてクオリティを追求するよりも、お正月の箱根駅伝本番の中継に向けての気運を高める、広告塔的な意味合いのほうが強くなってしまう。

早い話が、動機、展開、結末において、「素晴らしい話」にしかならないことがあらかじめわかっているものを、わざわざ時間を費やしてまで観たいと思う物好きはめったにいないのです。

つまり、面白いドラマであるための大きな要素のひとつである「プロットの意外性」が、『俺たちの箱根駅伝』においては、最初から排除されてしまう構造にあることが見えてきます。

桑田佳祐の個性よりも優先される“わかりやすい感動ストーリー”



そして、「意外性」の入り込む余地が極めて小さいことは、桑田佳祐の主題歌にも影響を及ぼしているように聞こえます。

箱根駅伝とは、日本テレビにとっての公共事業とも言うべき一大プロジェクトです。そうしたガチガチの縛りがあるなかで、ミュージシャン、ソングライターとしての個性を発揮するよりも、優先されるべきは、放送局とスポンサーの双方を納得させる、わかりやすい感動のストーリーです。

そして、音楽における「わかりやすい感動のストーリー」とは、耳に心地好く、軽快で明るいサウンドと、箱根のランナーや視聴者の背中を押す歌詞を持つ曲調ということになります。

その際、視聴者の意表を突くような刺激的な音や実験的な要素は極力削ぎ落として、ドラマ本編とベクトルを同じくする必要が生じます。

だから、「神々の襷(たすき)」の薄味なポップさは、こうしたやむを得ない事情によって、事務的に調整された結果の音楽性だという推測も成り立つのです。

エンターテイメントのドラマというよりも…



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こうして見ると、『俺たちの箱根駅伝』、そしてその主題歌である「神々の襷(たすき)」は、エンターテイメントとしてのドラマというより、政府広報の啓発ビデオのようなものと言ったほうが、性質が近いのかもしれません。

しかし、それを「テレビドラマ」として楽しめるかどうかは、また別の話。

まるでデモテープのような「神々の襷(たすき)」は、その音の薄さと軽さで、道徳的に正しい感動ストーリーに冷水を浴びせているようにすら聞こえるのです。

<文/石黒隆之>

【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4

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