18日に開幕した愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会。開会式で最終聖火ランナーを務めた
パラアルペンスキー
の
村岡桃佳
はその翌日、
車いすテニス
観戦に名古屋市東山公園テニスセンターを訪れた。冬季競技だけでなく、
パラ陸上競技
にも挑戦してきた村岡の目には、どのように映ったのだろうか。

名古屋市東山公園テニスセンターを訪れた村岡桃佳
車いすテニス会場は、非日常感いっぱいのワクワク空間
――開会式翌日の19日午前、リボンタイとチェックという上品で可愛らしい服装に身を包んだ村岡が待ち合わせ場所に現れた。
村岡桃佳(以下、村岡):
車いすテニスは少し体験したことがあります。あと、同じトヨタ自動車所属の
三木拓也
選手と交流があって、いつかテニスを教えてくださいねなんて話したこともあるのですが、実際に車いすテニスの試合を生観戦するのは初めてですし、こんな機会がないとなかなか体験できないので楽しみです。

冬季パラ通算11個のメダルを持つ冬の女王・村岡。この日は一人の観客として車いすテニス会場を訪れた
――観戦する競技を選ぶ際に車いすテニスを希望した理由を尋ねると、アスリートらしい答えが返ってきた。
村岡:
今大会の車いすテニスは、2年後にロサンゼルスで開催されるパラリンピックの出場権がかかっているじゃないですか。その分、ハイレベルな試合になるだろうと思いましたし、選手の皆さんにとって特別な大会なんだろうなと思ったことが大きいです。私も次の冬季パラリンピック出場を目指す選手の一人ですから。

試合結果がすぐに確認できる公式サイトのQRコードを読み込む。「アジア大会と同様に詳しい結果が見られてありがたいですね」
――観戦者と同じ入場口でチケットを提示して入場すると、すぐに村岡が目を輝かせた。
村岡:
まず会場がきれいですね。お客さんがたくさんも来ているのもいいですね。スポーツを観に来るって、それだけで非日常感があってワクワクする! それに、魅力的なキッチンカーがいくつもあったり、名古屋市の観光ブースがあったりして、さらに特別感が増していますね。冬の競技だと、キッチンカーはなかなかね……。あ、ミラノ・コルティナ2026パラリンピックのときはキッチンカーが出ていました。ただし、コーヒースタンドと冷たいパニーニだけだったそうで、しかもちょっとお高かったと聞いています(笑)

「やっぱり名古屋といえば……金のしゃちほこでしょう」と記念撮影
――名古屋市の観光コーナー前で、しゃちほこポーズで写真をパチリ。その隣にある大会オリジナルグッズの販売コーナーが目に留まった。
村岡:
ウズミン! かわいい!せっかくだから記念に何か買って行きたいけど、たくさんあって迷いますね……。あ、昨日の開会式で、このぬいぐるみをADカードにつけている人を見かけました! 私もこのぬいぐるみにしよう。「必勝」や「招財」、「シークレット」など種類があって、どれが当たるかわからないんですね。どうせなら「必勝」を当てたい! その真ん中の、ください!

ゲットしたのは、今大会の公式マスコット「ウズミン」のぬいぐるみストラップ
――引き当てたのは、猫のかぶりものをした「健康」のウズミンだった。
村岡:
ミラノ・コルティナ大会前に左鎖骨を骨折して、固定するプレートを入れていたのですが、先月取り除く手術をしたんです。リハビリもかねてゆっくり過ごしたおかげでだいたい治ったのですが、健康はいまの私に一番大切なものですね。
“応援の力”を自身のモチベーションに

ワクワクしながら客席へ
――観戦者として会場内を移動することで気づいたこともあった。
村岡:
配線コードを隠すためのカバーの高さが意外とあって、車いすユーザーにとってはちょっと進みづらいですね。ジョイント部分にキャスターが引っかかってしまう人もいるかもしれません。

車いすテニス観戦に初めて訪れた村岡
――村岡に気づいたパラスポーツファンから写真撮影を求められたり、会話を交わしたりと、交流を楽しみながら観戦会場であるセンターコートの2階へ。プレーが中断してから車いす観戦席に移動。まずはプレー環境に驚いたようだ。
村岡:
テレビで車いすテニスを観たことがあって、そのときもコートと観客席が近いなあと思ったのですが、実際に見ると、やっぱりすごく近いです。アルペンスキーは広いコースを一人で滑走するので、そもそも全然違います。陸上競技はスタジアムで行われますが、お客さんの話し声が聞こえたり、ボランティアやスタッフの方が動いているのが目に入ったりと結構にぎやかで、その中で自分や目の前のレースに集中することが大切なんです。でも、車いすテニスは、センターコートの試合を四方からみんなで見守っているという感じですし、審判員やボランティアの方々の動きも機敏で、緊迫感がありますよね。この空気感の中でプレーするって、かっこいい。私なら緊張しちゃいそうです。

ラケットを手に、巧みに車いすを操作するトップ選手のプレーに目が釘付けに
――センターコートの第一試合として行われていた
大谷桃子
対WU Yi-shan(チャイニーズ・タイペイ)の試合を観戦。すぐにあるプレーの特徴に気づいた。
村岡:
選手ごとなのか国によるのかはわかりませんが、チェアワークに違いがあるように見えます。私も車いすユーザーですし、パラ陸上競技で車いすレーサーに乗っていたのでわかるのですが、一度止まると漕ぎ出しが大変ですし、その分、遅れちゃうんです。でも、日本の選手はそれがないように動き続けていますよね。止まらないと疲れちゃうので、大変なんですけどね。こう来るだろうなという予測もお上手なのでしょうね。すごいです。
――試合は、大谷が勝利。試合後には勝者のサインボールの投げ入れやスピーチが行われ、大いに盛り上がった。
村岡:
観客も楽しめるすばらしいイベントですね。これをきっかけに、より応援したいと思うんじゃないでしょうか。私も思いましたもん、もっと車いすテニスをちゃんと観たいし、大谷選手についてもっと知りたいなって。
――他競技を生観戦したことで、自身の競技へのエネルギーにもなったようだ。
村岡:
もっとパラスポーツを知ってほしい、観てほしいと思いつつ、一方で「でも、パラスポーツだからね……」というぬぐい切れない思いがあったんです。でも、私を知ってくださっている方に会えたり、車いすテニス観戦を心から楽しんでいる観客の姿を目の当たりにしたりして、パラスポーツもたくさんの方に応援してもらっているんだと肌で感じられましたし、私もがんばろうと思えました。あと、競技をしている選手たちの姿に、私もちゃんとやらなきゃって思いましたね(笑)

ケガの療養からパラアルペンスキー復帰に向けてリスタートした村岡
村岡:
いまは競技復帰に向けたトレーニング期間ということもあって、「やってみたい」という思いを大切に、パラカヌーや車いすフェンシングなど、いろいろな競技を体験してみています。純粋に楽しむことが一番ではあるのですが、一見スキーと関係なさそうでも、似ているなとか取り入れられそうだなということがあったりして、視野が広がっています。そうはいっても、ボールが跳ねる競技はとにかくダメなので、車いすテニスや卓球はちょっと……(苦笑)自分の人生を豊かにすることを目標に、次の4年間に向けて走り続けます。
text by TEAM Aphoto by Atsushi Mihara
関連記事
アルペン村岡桃佳、恐怖越え安堵の銀
愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会日本代表のメダリストを一挙紹介!【随時更新】
アジアパラ代表三浦稟々 自分らしく進む18歳