離婚後も、元夫と同じ地元で暮らし続けることは珍しくありません。
今回は、「元夫の車が怖い」と話す女性から話を聞きました。
忙しくも充実した実家での日々
木村さやかさん(仮名・39歳/一般事務)は、5歳の息子を育てるシングルマザーです。
夫の浮気や性格の不一致で離婚したのは3年前。元夫とは、同じ地元同士での結婚でした。離婚した今も、家は違えど同じ町に住んでいるそうです。
「私は今、元夫が住むアパートから車で10分くらいの実家で暮らしています。
フルタイムで働いているので、頼れる両親がそばにいてくれるのは心強いですね。息子の保育園の送りは両親が、夕方の迎えはなるべく私が行っています」
毎日バタバタしているものの、充実した日々を送っているというさやかさん。
「離婚してよかったとは言い切れないけど、今の生活は自分で選んだもの。息子がいるから、落ち込む暇もなくて」と言います。
息子と元夫との面会日はざわつく
そんなさやかさんですが、月に一度だけ、気持ちがざわつく日があります。それが、息子と父の面会の日です。
「元夫が嫌い、とかではないんです。ただ……なんとなくソワソワしてしまって。自分でもうまく説明できないんですが。
毎月約束の日に、元夫の白いミニバンが家の前に止まると、息子が『パパー!』と駆け出していくんです。その日は、夕方息子が帰ってくるまで気持ちが落ち着きませんね」
帰宅した息子が、楽しそうに元夫との出来事を話す姿にも、まだ慣れないんだそう。
「ゲームをしたとか、遊園地に行ったとか……毎月本当に楽しそうに話すんです。その姿を見ながら、私だって月に一度の面会だったら、あちこち連れ出すのになって、モヤモヤしてしまいますね」
出先で遭遇してしまった
そんなさやかさんですが、最近衝撃を受けた出来事があったんだそう。
「あの時のことは忘れられません。普段は近所のスーパーで買い物するのですが、息子が面会日で帰りが遅いこともあって、その日は隣町のスーパーまで買い出しに行ったんです」
さやかさんが、買い物を終えて駐車場に戻ると、反対側の列に見慣れた白いミニバンが停まっていたんだそう。
「ナンバーも覚えているので、一瞬であの車だってわかりました。気まずいし、元夫と息子が車に戻る前に、一刻も早く駐車場を出ようとしたのですが……」
シートベルトを締め、エンジンをかけようとしたその時、店内から駐車場へと向かう、元夫と息子らしき姿が。その光景をみて、身動きが取れなくなってしまったというさやかさん。
楽しそうに歩いてくる元夫と息子の姿にショックを受けたのかと思いきや、さやかさんが身動きが取れなくなった理由はそれだけではなかったようで。
助手席に座ったのは息子ではなかった
「息子と元夫と、それから白いワンピースを着た女性がいたんです。3人とも、笑顔で会話をしながら車に向かっていきました。もう、びっくりしちゃって。想像していなかったので」
3人は、そのまま車に乗り込んだそうです。
「普段、運転席に元夫、助手席に息子が乗っているんです。でも、息子は後部座席に乗って、一緒にいた女性が助手席に乗り込みました」
そして助手席に座った女性と、後部座席の息子は楽しそうに笑顔で話していたといいます。
「あの時は、見てはいけないものを見てしまった、という感じでした。早く駐車場を出てくれって、それだけを思っていましたね。私は何も悪いことはしていないのに、すごく緊張して全身の体温が上がって、握った手の汗がすごかったです」
あおり運転よりも元夫の車に遭遇するのが怖い
家に帰ってもソワソワと落ち着かなかったさやかさん。近所のママ友に話を聞いてもらいに行ったんだそうです。
「もう、いてもたってもいられなくて、友人に話を聞いてもらいました。そしたら、話しているうちになんだか涙が出てきて。頑張っている自分が惨めに思えてしまったんですよね」
さやかさんは実家にいるとはいえ、子育てをしながら仕事をして日々をこなすワーキングマザー。男性と出かけるどころか、出会う暇もないといいます。
「私が、元夫のことを気にしすぎるのは、自分に余裕がないからなんですよね。ママ友に『あおり運転よりも、元夫の車の方が怖い』って言ったら笑われましたよ」
それでも地元で生きていく
数時間後、面会を終えた息子が帰ってきます。
笑顔で帰ってきた息子は、いつものように目をキラキラさせながら、楽しかった出来事をさやかさんに話したそう。そして、息子の顔を見た瞬間、胸にあった何かがスッと溶けていったと言います。
「この子が、ただいまと帰ってきてくれることが、今の私のすべてだと感じました。きっと、ここから引っ越せたら元夫のことで気持ちが揺らぐことはなくなる。でも私には両親の助けが必要。何より、息子はパパと楽しく過ごし、笑顔で帰ってきてくれるんですから」
もちろん、離婚後に元配偶者が新しいパートナーを持つこと自体は珍しくありません。
一方で、幼い子どもに新しいパートナーを会わせる場合には、子どもの気持ちを最優先にしつつ、一緒に暮らす親に事前に知らせたり、必要に応じて父母で話し合ったりする配慮も必要でしょう。
さやかさんも、このモヤモヤを「自分に余裕がないから」とだけ捉えて、飲み込む必要はないのかもしれません。子どもを介して関係が続くからこそ、気になることは父母の間で共有していくことも大切ではないでしょうか。
<取材・文/maki>
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