海を泳いでいたらクジラに丸呑みされてしまった――そんな悪夢のようなアクシデントを描いた『クジラに落ちた男』が10月16日より公開された。人間なんて所詮、獲物。そんな謙虚な気持ちを教えてくれる巨大生物の丸呑みシーンは、“VORE”というフェチとして一部の熱烈なマニアを生みだすなど独特の魅力を放つ。ここでは豪快な丸呑みっぷりを、動物から植物まで生き物別に振り返っていきたい。
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■船、車ごと呑み込んでしまう海獣の王クジラ!
まずは巨大生物の代表格として外せないクジラ。この海の王者を題材とした映画は数多く作られてきたが、丸呑みという点ではディズニーアニメのクラシック『ピノキオ』(40)がまず思い浮かぶ。
終盤に登場する怪物クジラのモンストロは、ゼペットおじさんを捜しに海に出たピノキオを丸呑みし、クジラの体内で生き延びていたゼペットとの再会をアシストする。船ごと呑まれていたゼペットは、飼い猫と金魚と共に生き延びており、釣りをしながらのんびりと餌を待つ姿は危機感ゼロでなんとも呑気。「クジラの中で暮らすのもありかも」と思わせるある種のロマンにあふれていた。
また、ロビン西の漫画を湯浅政明監督が実写と2Dと3Dを融合させた映像で映画化した『MIND GAME マインド・ゲーム』(04)でもクジラが大活躍。本作では、初恋相手との再会も束の間、ヤクザによって殺されたものの神に歯向かい現世に舞い戻った青年の西が、ヤクザからの逃亡中に巨大なクジラに車ごと呑まれてしまう。クジラの体内で30年間暮らす老人に助けられると、風呂に入ったり、宴会をしたりと、それなりに快適な暮らしを送る西たち一行。『ピノキオ』同様、奇想天外な描写はどこか魅力的だ。
アニメーションによってファンタジックにクジラの体内を描いたこれらの作品に対し、ダニエル・クラウスの同名ベストセラー小説を映画化した『クジラに落ちた男』では、そんな希望もへったくれもない、壮絶な環境としてクジラの体内が描かれる。
単独でのダイビング中に巨大なマッコウクジラが、ダイオウイカを捕えようとする場面に出くわした青年ジェイ(オースティン・エイブラムス)は、イカの足に巻き込まれ、体長約24mものクジラに丸呑みされてしまう。酸素ボンベの残量切れが刻一刻と迫るなか、憎きダイビングの師である亡き父ミット(ジョシュ・ブローリン)からの教えを頼りになんとかサバイブしようとするが…。
クジラの胃袋に囚われた主人公の絶体絶命の状況を描くため、本作ではCGと実際のセットを組み合わせ、マッコウクジラの体内を表現。また、なるべく外の世界へ切り替えず、映画の大部分をクジラの体内で展開させることで閉塞感を高めている。呑み込まれる瞬間に迫り来る鋭い歯をはじめ、主人公を噛み砕こうとする複数の胃などクジラの体内をつぶさに描写した、圧倒的な恐怖を追体験できるはずだ。
■リゾートを恐怖に突き落とす無慈悲な海の暴れん坊サメ!
クジラと並ぶ海の強者といえばサメ。この海の暴れん坊を題材とした作品も数知れないが、パニック映画の金字塔『ジョーズ』(75)、『ジョーズ2』(78)に続く、水族館が舞台の『ジョーズ3』(83)にはシリーズ随一の巨体を誇る体長10mほどのホオジロザメが登場する。ずさんな管理によって子サメを殺され怒り狂う母サメが、人間相手に恐怖の大盤振る舞い。なかでもダイバーを丸呑みし、むしゃむしゃとあっという間に咀嚼する“お食事”の様子を体内から捉えたショットは衝撃的だ。
近年のサメ映画で外せないのが、体長23mにもおよぶ巨大ザメ、“MEG”ことメガロドンと、人類最強の男ジェイソン・ステイサムがタイマンを張る「MEG ザ・モンスター」シリーズ。1作目でもMEGを仕留めて油断していたクルーが、突如現れた2匹目にあれよという間に丸呑みされたりと人喰い満載だったが、さらにショッキングだったのが、次々と化け物が登場する続編『MEG ザ・モンスターズ2』(23)だ。マリアナ海溝での調査によって目を覚ましたMEGの群れがリゾートに大挙すると、必死に足漕ぎボートで逃げるカップルを船ごとパックンチョしてしまう無慈悲ぶりを見せつけた。
■大きな口と自慢の顎で人間を平らげるワニ!
海から陸地へと近づくという意味で、人間への脅威度がグッと増すのがワニ。爬虫類最強の生き物を題材とした映画も繰り返し作られ、大きなお口でパックリと人間を呑み込んできた。「U.M.A レイク・プラシッド」シリーズも捨てがたいが、代表格としてここでは「アリゲーター」シリーズを挙げたい。
“捨てられたペットのワニが下水道に住み着く”という都市伝説をベースにした1作目『アリゲーター』(80)では、トイレに流された赤ちゃんワニが巨大ワニとなって現れ、街は大パニックに。製薬会社の合成ホルモンの実験台にされた挙句、下水に廃棄された犬の死体を食べ、体長10mにも成長したアリゲーターは、下水に入ってきた人に襲いかかるだけでなく、地上に飛び出し家のプールに潜んで子どもを食べたりと老若男女問わずやりたい放題。なかでも捕獲を意気込む自称“狩りの達人”ブロック大佐(ヘンリー・シルヴァ)を、自慢の屈強な顎でホールドしながら呑み込む姿は、イキり人間の滑稽さを際立たせてくれるナイスなシーンだ。
このほかにも、『悪魔の沼』(76)で人喰いワニの活躍を描いた巨匠トビー・フーパー監督が、再びワニを題材とした『レプティリア』(00)も紹介したい。キャンプを楽しむ若者が巨大クロコダイルに襲われる本作では、キャラクターの1人がクロコダイルに丸呑みされるも、虫除けスプレーをしていたため、直後に吐き出されるというユニークな描写が楽しめるぞ。
■細い身体に人を詰め込むヘビ!
さてワニの次は同じく爬虫類のヘビといきたい。今年日本でも公開された『俺たちのアナコンダ』(25)のモチーフとして再注目を集めたのが、人気シリーズの1作目『アナコンダ』(97)。伝説の部族を探しにアマゾンの奥地にやって来た文化人類学者とその様子を映像に収めようとする映画監督の恋人ら撮影部隊にアマゾン川に潜む巨大なアナコンダが襲いかかる。
体に巻きついて動きを制すると、そのまま骨を締め砕き、次々と人間たちを始末していくアナコンダの恐ろしさはもちろん、呑まれた人間の顔がアナコンダのお腹に浮かび上がったり、呑み込む様子を体内から映したりと、丸呑みへのこだわりが随所に感じられる1作だ。
またヘビ丸呑み描写で忘れてはいけないのが、殺人事件の証人を護送する飛行機が、口封じを目論む事件の首謀者によって毒ヘビまみれにされてしまう『スネーク・フライト』(06)。トイレに潜んでいたヘビが股間に噛み付いたり、酸素マスクからヘビが降り注いだりと厭なシーンのオンパレードだが、なかでもニシキヘビが男性に絡みつき身動きを取れなくしたうえ、頭から呑み込んでいくシーンは、まさに捕食の瞬間を目の当たりにするようでショッキングだ。
■自慢の握力で人間を離さないゴリラ!
巨大動物映画で忘れてはいけないのが、霊長類最強ゴリラ。その代表作といえば繰り返し、リメイク、リブートされてきた「キングコング」シリーズだ。原点である1933年版など、ことあるごとに人間をムシャムシャしてきたが、丸呑みという点で外せないのが、息を吹き返したコングがレディコングを守るため人類と対峙する『キングコング2』(86)。
本作でコングは、面白半分で挑発してくるハンターたちにブチギレ。まず1人捕まえて真っ二つにすると、さらにもう1人を捕まえてパクリ。お食事後は指で口をホジり、歯に挟まった帽子を取り出すというオヤジムーブを披露。ユーモアを交えながらコングの脅威が描かれた。
■圧倒的な恐怖!巨大生物の代表格といえば恐竜!
巨大生物を題材としたパニックものの真打といえる恐竜映画にも触れていきたい。最近も『オークストリートの異変』(26)や『プリミティヴ・ウォー 恐竜戦争』(26)といった作品で圧倒的な力と容赦のなさを見せつけてくれているが、やはり恐竜映画の王者「ジュラシック・パーク」シリーズに触れないワケにはいかない。
丸呑みシーンもオンパレードで、『ジュラシック・パーク』(93)に登場したインジェン社顧問弁護士のジェナーロ(マーティン・フェレロ)は、ティラノサウルスと遭遇した際に1人だけ助かろうと車を降りトイレに駆け込むが、ティラノサウルスの突進で建物が崩壊し、丸ごといかれてしまう…。記念すべき(?)シリーズ最初の犠牲者としてインパクトを残してくれた。
また『ジュラシック・ワールド』(15)では、パークの管理責任者クレア(ブライス・ダラス・ハワード)の秘書ザラ(ケイティ・マクグラス)が、プテラノドンに捕まって、水面でいたぶられていたところを、全長20mほどの水棲爬虫類モササウルスがプテラノドン共々ザラをパクリ。食物連鎖のピタゴラスイッチを見せてくれた。
さらに昨年の『ジュラシック・ワールド/復活の大地』(25)でも、翼竜のケツァルコアトルスが任務に挑む傭兵ルクレール(ベシール・シルヴァン)をクチバシで捕え、そのままひと呑み。喉元を通過する際の生々しさには、丸呑みの魅力が詰まっていた。
■地底中から飛行物体まで…化け物の丸呑みもアツい!
実在しないモンスター映画もまた丸呑みシーンの宝庫。まず挙げたいのが、ミミズのような体をした地底怪物グラボイド(ズ)の活躍を描く「トレマーズ」シリーズ。ネバダの砂漠の田舎町を舞台にした1990年の1作目では、名付け親である町の飲食店の店主が、床を突き破って現れたグラボイド(ズ)の四方に開く大きな口に呑まれて犠牲に…。さらに『トレマーズ2』(96)では冒頭から油田作業員をペロリ、『トレマーズ3』(01)では一度は呑み込まれた男が体内からまさかの生還を果たすなど、シリーズを通じて丸呑みへのこだわりを見せてくれた。
南シナ海を航行する豪華客船を舞台にした『ザ・グリード』(98)では、未知なる化け物オクタルスが大暴れ。体の先に鋭い牙と口を持つワームの類かと思いきや、正体はそのミミズのような触手が無数に生えた巨大なタコ系モンスターで、「90分で3000人――喰って、喰って、喰いまくれ!」というキャッチコピーに偽りなく、あれよという間に乗客を喰いまくる。大きな口で瞬く間に立っている人間を頭から呑み込んだり、逆に足からじわじわといったり…ある種の“タコの踊り食い”を楽しむことができる。
近年の怪獣映画の傑作『パシフィック・リム』(13)も忘れてはいけない。次々と現れるKAIJUに人類が巨大ロボット“イェガー”で立ち向かう様子を描いた本作では、KAIJUの臓器を薬として売り捌く闇の商人チャウ(ロン・パールマン)が、死んでいると思われたオオタチの赤ちゃんにペロリといかれてしまう。ちなみにチャウはラストにオオタチの腹を突き破って奇跡の生還を果たした。しぶとい!
田舎町の空に突如現れた不気味な未確認飛行物体をめぐるジョーダン・ピール監督の『NOPE/ノープ』(22)では、円形の飛行物体の“Gジャン”が、中央の穴から人々を吸い上げていく様子を体内から描写。まとわりつく“Gジャン”の食道のような器官など、生きたまま食われる恐怖、気持ち悪さを覚える丸呑みシーンは、インパクト抜群だ。
■某キャラクターを思わせる食人植物!
最後に人喰い植物として、ロジャー・コーマン監督のSFホラーを基にしたミュージカルを映画化した『リトルショップ・オブ・ホラーズ』(86)を紹介したい。中国の花問屋から購入した珍しい植物が人間の生き血を餌に成長していく本作では、「オードリーII」と名付けられた宇宙植物がどんどんと巨大化し、「マリオ」シリーズのパックンフラワーを思わせる大きな口で、人を呑み込んでしまう。
劇場公開版ではオードリーIIが撃破されるハッピーエンドとなっているが、もともとのエンディングはまったく異なる。ディレクターズカット版で確認できるように、主人公らを呑み込み巨大化したオードリーIIが、人どころか、走っている電車を丸呑みにするなどブラックなオチで、個人的にはこっちのほうが魅力的だ。
人間丸呑みムービーの最新作『クジラに落ちた男』を観に劇場に足を運ぶと共に、これらの作品もチェックして、巨大生物が現れた際の参考にしてみてほしい。
文/武藤龍太郎
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