1991年に日本のゲームメーカー、カプコンからリリースされ、世界中で大ヒットを記録したアーケードゲーム「ストリートファイターII」(以下「ストII」)。その誕生から35年を経て、新たな劇場映画として制作された『ストリートファイター/ザ・ムービー』が公開中だ。
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予告編からは熱いゲーム愛を感じることができ、キャラクターの表現や必殺技の再現度の高さなど大きな注目を集めている本作。監督を務めたのは、日本に生まれ、アメリカで生活しながらも日本文化を愛し続けた新鋭キタオ・サクライ。自身も「ストリートファイター」シリーズの大ファンであると語るサクライは、実写映像化にあたってどのようなこだわりを持っていたのか?作品に込めた想いを伺った。
■「あえてゲームが作られた時代である90年代を舞台にしています」
――原作であるビデオゲーム「ストII」との出会い、ゲームのどのような部分にファンとして魅力を感じているか教えてください。
「私の生まれは日本なのですが、幼いころにアメリカのオハイオ州に移住したんです。その後も日本にいる親戚から日本のマンガやアニメのビデオテープなどを送ってもらっていたので、アメリカにいながらもそうした日本のカルチャーに浸かって育ってきました。そんななかで、『ストII』にも出会いました。
このゲームはアメリカでも爆発的に大ヒットしていたんです。当時、自分の住んでいたオハイオを含めたアメリカメインストリームの文化のなかには、ああいった日本の要素があるゲームやアニメなどはまったく浸透していませんでした。そのようななかに登場したこのゲームは、アメリカ生まれ、アメリカ育ちの人にしてみるとかなりインパクトがあったと思います。そういう人たちが日本文化に対して向き合い方も含めて、このゲームの登場は大きな転換期になったのではないかと思いますね。
そんな『ストII』の魅力は、やはり強烈なキャラクターにあると思います。世界中のいろんな場所から、様々な背景を抱えた個性的なキャラクターが集まり、一堂に会すると一つの世界観には収まらないように思えるのに、なぜか成立してしまう。そこにみんな引きつけられるのではないでしょうか」
――今回手掛けられた『ストリートファイター/ザ・ムービー』では、多くのキャラクターたちの中から、リュウとケン、そして春麗を中心に据えた物語になっています。ある意味での王道とも言える3人を主軸に置いた理由を教えてください。
「『ストII』というゲームの中核を担っているのは、リュウとケンの2人による兄弟愛に近いようなライバル的な関係性なのではないかと思っています。そして、ゲームファンのなかで一番人気のキャラクターである春麗は外すことができないです(笑)。いちファンとして、この3人を中心にしなければならないと思いました。物語としても、“友情”は誰もが共感できるテーマだと思いますし、私自身、“友情”を描くのは大好きで、自分の得意分野だと思っているのでそこに主軸を置かせてもらいました。だから今回は、世界を救うとかマルチバースを行き来するというような壮大な話ではなく、誰が観ても共感して感情移入ができる友情を軸にしたストーリーを描きたいと思ったんです。
この映画の冒頭では、仲がよかったリュウとケンが仲違いして疎遠になってしまっている状態から始まります。2人の間になにがあって、どうして仲違いすることになったのか?一方、春麗は彼女自身の目的や計画があって行動していて、その3人がストーリーを推し進めていきます。それこそが『ストII』らしい形のまま、物語としては一番綺麗に収まるのではないかと思って、リュウ、ケン、春麗の3人が中心となる物語にしました」
――本作の舞台は1993年ということですが、これは新キャラが追加されてバージョンアップした「スーパーストリートファイターII- The New Challengers -」が稼働し始めた年ですね。物語の舞台を現代ではなく、あえて1993年にした理由を教えてください。
「ゲームをベースにした実写映画を制作するとなった場合、ほとんどの場合は現実世界と同じ年代にすることが多いと思います。でも、私はゲーム機からそのまま飛び出してきたようなゲームのキャラクターを実写として忠実に再現したい、描きたいという想いがあったんです。だからあえてゲームが作られた時代である90年代を舞台にしています。あのゲームのキャラクターたちが現代世界にいると違和感がありますが、90年代であればある意味異次元の世界のようにも見えて、キャラクターにもフィットするのではないかとも思いました。
また、ゲームから感じることができる90年代の音楽にしろファッションにしろ、お笑いのネタも含めて当時の独特の、ある意味楽観的な雰囲気や感覚も『ストII』の魅力だと思ったので、そういったスピリットも伝えたいという想いもありました。
ガイルや春麗みたいな見た目のキャラクターがスマホやタブレットを持っていたりするのもイヤだったんです。そういった描写を避けたいのも時代設定を過去にした理由でもあります。90年代の世界観を描くことに加えて、映画そのものがあたかも90年代に作られたようなトーンというか雰囲気を持つことができたらいいなという思いも、時代設定を決めた理由の一つです」
■「この映画は『ストII』をプレイして、愛してきた人たちのために作った映画です」
――劇中では、格闘アクションが大きな見せ場になると思いますが、アクション描写に関してはどのような部分にこだわられたのでしょうか?
「『ストII』という対戦型格闘ゲームが原作であり、1対1の戦いとなる『格闘』がアクションの基本ですよね。そのゲームのルールを活かしてアクションをきっちり描きたかったんです。私自身、90年代に絶大な人気があったジャッキー・チェンやジェット・リーが主演するアクション映画が大好きで、生身の人間が闘っている感じがすごく伝わってきたんですよね。例えば、ジャッキー・チェンがバスに掴まって犯人たちを追うアクションや、ジェット・リーのワイヤーを使ったアクションは、本人たちが演じているからこその迫力と親しみやすさがあった。そういうアクションを復活させたいという想いがありました。
近年のスーパーヒーロー映画だと、特殊効果や視覚効果を駆使して、完璧で綺麗な映像としてのアクションを描いている。それはそれでいいんですが、私は先ほども言った90年代のフレーバーみたいなものを全面的に活かしたいというのに加えて、90年代の映画を彷彿とさせる、血管が浮き出て血が通っているのがわかるような生々しさや、そこにある親しみやすさを感じさせるアクションを見せる映像を目指しています。」
――近年は「ストリートファイター6」が世界的にヒットし、そこからシリーズのファンになったユーザーも多いと思います。また、新しいゲームでの演出慣れた人たちも本作に触れるという部分を含めて、映像のタッチとしてはどのように見せているのでしょうか?
「ティザーの映像を観たファンの方からのコメントでは、『ストリートファイター6』の色づかいに近いという感想も聞かれるんですが、自分としてはあまりそこは意識していません。むしろ、先ほどから言っている90年代ビジュアルのトーン、例えば迷彩色を結構使うようなことを意識していますし、映画作りの手法もレンズのチョイスも含めて90年代に寄せています。
皆さんがご存知の『ブレードランナー』という名作がありますが、あれが公開された時はものすごく革新的で大胆な映画だったことが評価されたと思うんです。『ブレードランナー』のように、『この監督は賭けに出たな』と感じてさせてくれる作品が好きなんです。私自身も安全策ばかりとって、『これは王道で鉄板』というところばかりをチョイスするわけではなくて、映画監督、映像作家としてリスクは伴うけれど、そういうリスクも含めて挑戦したい気持ちがある。本作では制作会社がそうした私の思いを全面的に支えてくれました。だから、超大作映画のような非常にクリーンで大企業の気配を感じる映画ではなく、もっと自分の美意識やスタイルをきちんと反映した形で映画になったのではないかと思います」
――日本には『ストII』をプレイしているファンが期待して公開を待っていると思います。そうした日本のファンに向けてメッセージをお願いします。
「まずお伝えしたいのは、この映画は『ストII』をプレイして、愛してきたあなたたちのような人たちのために作った映画です。ファンのために作った映画であるということは強くアピールしていきたいです。自分も含めて『ストリートファイター』というゲームシリーズを愛する人々が全身全霊、愛を込めて作りました。キャストもスタッフも『ストリートファイター』シリーズにはなにかしらの個人的な繋がりや思い入れがあり、そういう人たちが集まって一生懸命自分なりに背景とつながり、歴史などを投影して作り、それが伝わるような作品になっていますので、皆さんぜひ楽しんでいただければと思います」
取材・文/石井誠
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