【動画】金曜ドラマ「LOST10」予告映像
横浜流星が主演を務める金曜ドラマ「LOST10」(毎週金曜夜10:00-10:54、TBS系)が、いよいよ10月16日(金)よりスタートする。放送を目前に控える中、本作の脚本を手がけた奥寺佐渡子氏と、監督を務める塚原あゆ子氏にインタビューを敢行。長年チームとして多くのドラマを生み出してきたからこその制作のスタンスや、本作に込められた思い、撮影の裏側などについて語ってもらった。
■登山ツアー中に起きた遭難事故をきっかけに物語が動き出す
本作は、北海道という壮大な大地を舞台に、登山ツアー中に起きた遭難事故「支樺岳(しからだけ)事件」をきっかけとして物語が複雑に絡み合っていく、完全オリジナルのヒューマンサスペンス。
「支樺岳事件」を捜査していく中で、刑事の小駒(横浜流星)や、小駒と共に事故の真相を追うフリーの保険調査員・直(小栗旬)らは、食い違う関係者の証言、裏切り、巨大権力、試される絆など、幾重もの“ロスト”に直面することに。そこから導き出される真実を通して、彼らは何を掴み取るのか…という物語が展開される。
また、遭難したツアー客の一人である中学校教諭の亜矢役で中村アン、事故が起きた登山ツアーのガイドを務める田畠役で飯豊まりえ、田畠の娘の主治医である小児科医・吉野役で井口理(King Gnu)、田畠の姉・知花役で野呂佳代の出演が決定している。
スタッフには、映画「国宝」(2025年)の他、ドラマ「Nのために」(2014年)、ドラマ「最愛」(2021年)、ドラマ「下剋上球児」(2023年、いずれもTBS系)の脚本を手掛けてきた奥寺佐渡子に加え、前述のドラマでメガホンを取ってきた塚原あゆ子監督、新井順子プロデューサーという、ドラマファンから圧倒的な支持を得る制作陣が集結。
登場キャラクターの正義や悪、繊細な感情の機微を綺麗に綴る奥寺が手掛ける緻密な“ヒューマンサスペンス”を、塚原が出演者の自然な演技を引き出し、唯一無二の感性で映像美や物語の伏線を回収する演出で紡いでいく。二転三転しながら中毒性のある展開が待ち受ける。
■新井P&塚原監督のムチャぶりに「たまにキレています(笑)」
――本作は奥寺さん、塚原監督、新井プロデューサーというおなじみのチームが久しぶりに再集結し制作されていますが、本作の企画が進んだ際のお気持ちなどはいかがでしたか。
塚原あゆ子:(以前この座組で制作された)「下剋上球児」(2023年、TBS系)が終わった後には、「次何をやるのか」みたいなことは話していました。金曜ドラマ枠に向けてやっていこうと動き出したのはもっと後のことですが、もともと(このチームは)金曜ドラマがスタートだったんで、この枠で奥寺さんとちゃんとしたサスペンスをまたやれるのはうれしいなと思っています。
――ドラマの制作にあたっては、まず塚原監督と新井Pの間で作品の“アウトライン”についてお話しされてから、奥寺さんにお話が行かれたということがあったかと思いますが、今回は脚本を作るにあたってどのようにディスカッションを重ねていかれましたか。
奥寺佐渡子:大体いつも「新井さんと塚原さんのやりたいことを私が書きます」みたいなスタンスでやっていますので…(笑)。
塚原:本当にごめんなさい(笑)。今回は「二転三転するサスペンスをやろう」という話になって。一つの殺人事件を10話まで追って「誰が犯人なのか」というようなものではない作品の企画書を持っていたので、奥寺さんにそれをお見せして相談してみるという。全部奥寺さんがやってくださりました。
奥寺:「(塚原監督と新井Pの)お2人とならやりますよ」という思いなんですが、お2人はいつも打ち合わせの時に無茶苦茶なことをリクエストしてこられるんです(笑)。「じゃあ奥寺さん、後はよろしくお願いします!」なんて言われながら打ち合わせが終わって、電車の中で「何がよろしくだよ!」って思いながら家に帰るという感じでした(笑)。
――そういったとき、奥寺さんは腹が立ったりしないですか。
奥寺:たまにキレていますけど(笑)、「1回持ち帰って書いてみます」となるのでその場ではあまりないです。持ち帰ってやってみたけどうまく行かないときは、「全然こうならないんですけど。ふざけんなよ!」というメールを送って(笑)。本当にやり取りしながら作っています。
――実際に本編で採用されているかは別として、塚原監督や新井Pからのリクエストで驚いたことや印象的だったことはありますか。
奥寺:もう山岳事故からして「そんなの撮れるの?」ってまず思いましたし、そんなことの連続です。でも、(実際に映像を見たら)「ここまで丁寧に撮れるんだ」と思って。
塚原:「どうやって撮るんだろう?」とスタッフが頭を抱える設定が続々と出てきますが、乗り越えました(笑)。最後の1カ月くらいはずっと雨で、小栗さんに「監督が雨女だから」と責められながらも何とかやりきりました。
■誰かの証言に頼らざるを得ない状況を生み出すための「山」という舞台設定
――北海道を舞台に、山中で起きた事件をめぐって刑事とフリーの保険調査員がバディを組むという本作の着想のきっかけについて教えてください。
塚原:北海道の舞台設定は最初からありました?
奥寺:始めからあったような気がする…。「自然の中でやろう」みたいな話が。
新井順子P:「遭難するなら北海道だろう」っていう。奄美大島って提案もしましたけど、「絶対北海道」って仰っていました。
塚原:「暑い」って言ったんですよ。「夏の奄美に3週間もいたら、熱中症でスタッフがバタバタ倒れる」って。実際北海道は涼しかったのでよかったです。
――となると、「遭難」というところは最初からあったんですね。
塚原:ありました。きっかけは奥寺さんですか?
奥寺:どこから出てきたんだろう…。
塚原:「事が始まるのは山の中」というのは、“真相は藪の中”的な、誰もわからない、目撃者が少ないみたいなことで。昨今は防犯カメラだらけの世の中なので、「事故や事件が起きた時に誰かの証言に頼らざるを得ない」という状況設定を作ろうとすると結構難しかったので、思い切って山にしようってことだったように思います。
先々の物語では、事故から生還した人たちの言い分がずれてきます。そのときに、第三者がいれば「こっちの言ってること正しい」となるんですが、それが無い中で互いに違うことを言っていた場合、保険調査員はどうするのか、警察はどう捉えるのかというところで差が出てきます。そこで「防犯カメラに映っている」ということがない状況に落とし込むために森だったんだと思います。
奥寺:携帯電話が使えないという状況もそうですね。
塚原:携帯が使えないのは大きいですよね。携帯が使えないことって今時あまりなくなってきましたけど、山中や山頂はどうしても圏外ですよね。
――当初のタイトルは「LOST10」ではなかったとのことですが、「LOST10」というタイトルに込められた意味やテーマなどを教えてください。
奥寺:仮タイトルのままどんどん進めていったので、タイトルは全然決まっていなかったんです。アウトラインは決まっているんですが、脚本を書いている間に話が全然変わってしまうこともあるので、「タイトルは後で考えましょう」って(先送りにしていた)。
それでいざ「このタイトルどうしようか」となった時に、物語の中で誰かが何かを失っていることが多いとそこでようやく気づいたんです。「失う」というだけではなくて、道に迷ったり、自分の心を見誤ったり、勝負に負けてしまったり、いろんな「LOST」がある話だなということで、「LOST10」というタイトルに落ち着きました。
塚原:その「道に迷う」や「勝負に負ける」といった言葉を英訳すると「LOST○○」「○○LOST」という形になるので、(共通するテーマを)一言で表すならこの単語なのかなって奥寺さんが仰ったことに、すごくインスピレーションが湧いたんです。
毎回のサブタイトルには「LOST」が入っているんですが、1話ずつ10本の「LOST」にまつわる話として描いていて。もちろんドラマとしての連続性はあるんですが、それ以外にも1話1話の味わいが深くなればいいなと思って。深く読むのが楽しかったです。
――その中で初回に込めたポイントなどがあれば教えてください。
塚原:元々奥寺さんが作ってくださっていた仮タイトルがあるんですが、第1話にはそれも(要素として)残ってます。当初想定していたさまざまな要素が残されていたりもするので、「後でタイトルを決めても最初にあったインスピレーションは枯れないんだな、奥寺さん素敵だな」と思いました。
奥寺:とにかく第1話は、「登場人物の紹介だけにならないように」ということだけは気を付けました。だからこそ第1話って難しいんです。
――第1話の中で特にお気に入りのシーン、思い入れがあるやり取りなどはありますか?
塚原:山に行って撮影をしていると、標高が高いので基本的に天気は変わりやすいんですが、まさに「LOST」という感じの、ほぼ物が見えないくらい一面霧に覆われるような瞬間はありました。最後の方で横浜さんと小栗さんが電話をしているシーンがあるんですが、小栗さんだけのシーンを撮っている時にめちゃめちゃ晴れていて。そこでようやく山の全景が見えて終わったという思い出があります。
奥寺:台本上ではいろんな状況を説明しなければならないので、その説明(がちゃんとできているか)に気を取られてしまったんですが、映像で見ると本当にすっきりしていて。いろんなことがちゃんと伝わってくるなと思って、そこが一番うれしかったです。
■「あくまでも小駒と直は“普通の人”として書いていました」(奥寺)
――キャラクターの中で「予想外に化けた」と感じたとか、脚本に込めていた部分が「あ、ちゃんと伝わってたな」と思った部分はありましたか。
塚原:小駒も直もああいう感じだと思っていましたか?
奥寺:思っていなかったです。想像以上でした。
塚原:私もあんまり思っていなかったから「こうなるんだ」という感じで。もっと違う人物だったというわけでもないんですが、お2人が演じられたからこその「柔らかさ」や「人間味」が表れているというか。
奥寺:人間味の部分はすごく大きかったですね。本当に生活している人って感じがします。
――お2人の中で、小駒と直のイメージは台本を読んだ段階ではどういったものだったのでしょうか。
塚原:小駒は田舎の刑事で、「出世したい」という彼の思いが「うだつが上がらない」に近い感じなのかなと思っていたんですが、横浜さんは身体能力に長けていらっしゃって、山に登るシーンでもぐんぐん登られるので、「うだつが上がらない」というよりも「出渋っている」というか。優秀な部分はきっとあるだろうに惜しいな、みたいな感じになった気はします。
奥寺:私もそこは思いました。動きが俊敏で、「こいつやればできるのに」感がすごくアップしていて(笑)。そこは見ていて楽しかったです。
――奥寺さんはキャラクター設定をしっかり固めていらっしゃるというお話でしたが、小駒の身体能力が高いという設定は、やはり横浜さんあってのものなのでしょうか?
奥寺:台本上は映像に映っているほど身体能力が高いイメージはなかったです。小栗さんも含めて、お2人ともとても身体能力が高い方なんですが、あくまでも小駒と直は「普通の人」として書いていました。
――1話の中でも序盤から小駒のトラウマのような描写が度々描かれていて、これからその辺りもしっかりと描かれていくのかなと思いましたが、小駒がトラウマを抱えているという設定についてはどのタイミングで、どなたから発信されて固まっていったのでしょうか。
塚原:そこについては、当初のキャラクター設定の中にありましたね。
奥寺:話し合いしつつ生まれてきたものですね。本人にも何か問題がないと、ただ事件を追っていくだけの人物になってしまうので、「じゃあどうしようか」という話をしていく中で出てきた要素でした。
塚原:このチームには素敵なCGマンがいて、何も始まってない段階で「北海道のCGを先んじて作りました!」と勝手にCG映像が送られてたんですが、そこに流氷の画があって。「(ドラマの舞台は)冬じゃない」と思いつつもそれが捨てがたくて。小駒のトラウマシーンの中に流氷っぽい画もちょっと入っているのは、実は彼発信なんです(笑)。
「北海道と言えば流氷とクリオネだ!」みたいな発想だったと思うんですが、そういう“北海道らしさ”に紐づいてくる発想力を逃さないように、何となくそのイメージとして使ってもいいかなと思って入れてみました。
――今お話にも上がった映像のことですと、今回大自然の中でもしっかり撮影をされていて、動物の映像なども出てきましたが、あれも実景なのでしょうか?
塚原:半分は撮影チームが実際に撮った映像で、もう半分は時期的に撮れるもの、撮れないものがあるので、映像をお借りしたものもありました。あとはクマが出なかったので、撮らなければならないものもしっかり撮れたのは良かったです。
■現場でのディスカッションで形作られた小駒と直の“生きた姿”
――改めて横浜さん、小栗さんの魅力はどんなところだと思われますか。
塚原:いつもの横浜さんのつるんとしたイメージから、ご本人がかなりワイルドな感じに振りきっていたんですが、この作品は小駒という刑事の成長譚でもあるので、だんだん服装とかも変化していくんです。
最初は一昔前に流行ったような服を着ているんですが、それは東京から流行が(舞台となる北海道の田舎まで)ゆっくり伝播していった結果、ずいぶん前に流行ったアイテムを古着屋で買って着ているという設定に衣装部がしているんです。
「汚いと思われなければいいな、古いと思われなければいいな」と思うんですけど(笑)、「今時着てなさそう」ということではなくて、衣装部とメイク部と横浜さんがこだわりのあるキャラクターに作り上げていて。
直のコートも、小栗さんと衣装部が相談して、丈感とか肩が抜けていく感じとかも計算して作られています。あれもだんだん変わっていくんですが、変わるものと変わらないものもあって。成長譚に向かってスタートを切る中でいろんな工夫をこらしていて、「みんな偉いな」と思います(笑)。
――横浜さんのひげも印象的ですが、そのあたりも横浜さんご自身が考えて決められたのでしょうか。
塚原: 3~4話あたりで小駒が「彼女いない」みたいなことを言うせりふがあって。支樺署は北海道の上の方という設定なんですが、「こんな田舎で彼女もいないのに、俺だったら毎日ツルツルになるほどひげを剃らない」というような発想なのかもしれないです(笑)。
奥寺:小駒は部屋も汚いですよね。
塚原:小駒の家に物がぎゅうぎゅうに詰まっているのも、スタッフが「俺だったら、ここにこれがあるよ」とか、横浜さんと相談しながらやっていて。例えばベッドの周りにテレビがあるかないかって、どちらかに意見が割れません?
テレビとともに寝落ちする派とそうじゃない派とで分かれるし、一人暮らしで食事をするためのデスクをあのサイズ感で置いている人もいれば、一人暮らしならキッチンでそのまま食べてもいいじゃないですか。そういう(小駒の生活感を)どちらにするかは相談してやっていました。
――横浜さんや小栗さんとは現場でたくさんお話しされていたかと思いますが、会話の中で印象的だったことなどはありますか?
塚原:台本の読み方について、「奥寺さんはどう思っているんですか?」というのをよく聞かれます。例えば「このシーンの直は最終的に明るいのか暗いのか」と思ったときに、どっちも選べるような余白というか行間が非常に豊かな台本なので、「読み方が間違っている」ということはないとは思うんですが、「奥寺さんはどっちのつもりなのかな」とか、「最終的に奥寺さんがここで言いたいところはこっちなのかな」とか、そういうことを3人で想像して話すのは楽しいです。
奥寺:(「こう書いていたけどこうなった」というようなことは)ほとんどの大部分で台本より面白くなります。本当にこのチームは素晴らしくて。撮影も音も編集も、私はこのチームの大ファンなんです。
この番組に限らずですが、玄関先しか映らなくても部屋の奥をちゃんと作り込んでくれたり、先ほどの衣装の話も出ましたが、借りてきた服をすぐ着せてみたいな感じではなくて、何度も洗濯をしてクタッとしていたり、本当に人が生きてきたことがにじみ出る細かいところを作ってくださるチームなんで、ファンとしてすごく楽しみに見ています。
――小栗さん演じる直の“フリーの保険調査員”という仕事は、結構珍しいキャラクター設定なのかなと思いますが、そこで意識して脚本を書かれた部分、演出された部分はありましたか。
奥寺:これもアウトラインの中に入っていたんですが、保険調査員のお仕事はすごく複雑です。「この場合はどうすればいいんだ」というのは本当にケースバイケースなんですが、だからこそ面白いというか。
保険金の受取人や関係者を1人ひとり探っていって、その人たちの気持ちを引っ張り出さなきゃいけないというところは、刑事の「捜査」とはまた全然違う形での「調査」になるので、そこは書いていて面白かったです。
塚原:以前NHKで連続ドラマをやったとき、保険調査員を扱ったことはあるのですが、彼らは「なぜそうするのか」ということを“動機”で追っていくんです。“動機”とはつまり“お金”という意味ですが、警察とは全く違う考え方で。行動原理で追う刑事と、欲がどこに起因するのかで追う保険調査員、その発想の違いみたいなところに興味がありました。
このドラマが動き出すときに、奥寺さんたちと一緒に本物の保険調査員の方にお話を聞きにも行きました。直のせりふに「預金通帳を見ればその人の人となりが分かる」という言葉があるんですが、保険調査員の方はまさにそういう感じで人を見ていて。
残高が多い人なのか少ない人なのか、借金があるのかないのか、そういう事実から人となりを想像していく人たちなので。警察と違う発想の仕方をすることで、事件を両側から見ることができて、面白いのかなと。
奥寺:人間の欲ってすごいなと思いました。調べていく中で、保険金詐欺って想像以上に多くて、お金があるのにさらにお金が欲しくて詐欺を働いたり、他人を陥れたりする人もいて。そうなってくると「動機とか全然分からないな」という風になりかねないなと思いました。
塚原:本当に私たちが考えるより、世の中のリアルは奇想天外なことになっているんだというのをちょっと垣間見ました。
■「想像力が求められるシーンは、真価を試される感じがしています」(塚原)
――このチームが集まった時の強みというか、このチームだからこそチャレンジできる部分などはありますか。
塚原:台本が出来上がった時にチームで読むんですが、このチームは「最愛」(2021年、TBS系)のチームでもあるので、サスペンスが繰り返しになってないことをチームとしてすごく喜んでいるというか。「『最愛』のチームが送る~」とか「湊かなえ作品のチームが送る~」みたいなことになってしまうと、同じような設定や内容に陥りがちなのをみんな結構心配していて。「4本もやってきたからさすがにどこか被るだろう」と思っていたら、全然被らなかったのでみんなから「良かった」って言われていました(笑)。
サスペンスドラマって、やっぱり一つの事件に対して10話を通してひも解いていくというフォーマットに陥りがちなんですが、今回はそうではなくゴロゴロ転がっていくような形になっているので、フォーマットとしての新しさにスタッフ一同ウキウキしながら撮っていました。
第1話のラストも第2話のラストも、毎回次に向かってのブリッジがすごく鮮やかにかかっていく台本なんです。先日第3話の編集をやっていたんですが、見ていて「おお~」ってなる展開が待ち受けているので、楽しみにしてください。
奥寺:今塚原さんも仰っていましたが、「同じことをやりたくないよね」ということは打ち合わせでよく話していて。「これってあのドラマと一緒じゃん! やめようよ」とかよく言ってたんです。そういうことを禁じ手にしていくと、できることが減ってしまって大変なんですが(笑)。
――長年制作をご一緒されてきた中で、例えば他のチームに参加してから久々に集結したときに、違いを感じる部分などはあるんでしょうか。
塚原:奥寺さんは私がご一緒していない時の監督たちとのセッションも吸収されて、進化していっていらっしゃると思っていて。単語とかも時代に寄り添っていくんですが、元々奥寺さんが持っている単語の豊かさを失わずにバージョンアップされてくるので、それをスタッフ一同ウキウキしながら読むんです。
「『最愛』の時はこういう単語だったけど、今回はこういう単語ですね」とか言われて「なるほど」って思ったりもしますし。多分スタッフが誰よりも奥寺さんのファンなので、台本を読み込むのが楽しいです。
奥寺:私は連続ドラマってこのチームとしかやっていないので、「映画か、このチームか」という感じで。特に連ドラは塚原さんや新井さんの方が先輩なので、毎回教えてもらうことが多いんです。「こういう時ってどう書いたらいいの?」とよく聞いています。
――塚原監督にとって奥寺さんの脚本の1番の魅力はどんなところでしょうか。
塚原:奥寺さんの脚本は、各話の山場のところですごく言葉やト書きも少なくなって、「あとは現場でやってね」というような書き方なんですよ。普通力が入っているシーンって言葉が多くなるし、描写や人物の配置やせりふの指定などを多く書かれることが多いので、「ここを大事にされているんだな」と思いながら受け取るんですが、奥寺さんの場合は逆にすごく引き算されるんです。
「夜行観覧車」(2013年、TBS系)の時から、「わぁ、このシーン (ト書きが)全然書いてないから(撮るのが)怖いよ~」って思うことがあって(笑)。そこが楽しいんですけど、スタッフとも「ここやばいですね、2行しか書いてないです」「これですね、危ないですね」なんて言い合いながら、みんなで気合を入れていかないと(こなせない)。こちらの想像力が求められるシーンは、(ドラマがより)膨らんだかどうかで真価を試される感じがしています。
――そうした余白がある部分について、スタッフの皆さんも含め「これが大事なシーンなんだな」と分かっていらっしゃるんですね。
塚原:奥寺さんの脚本は分かります。他のところはちゃんと書いてあるのに急に書かれなくなって、私たちが試されるので(笑)。第1話で言うと、小駒がある人物を助けるまでのストロークはもちろん書かれていないんですが、「でもあそこを盛り上げるんでしょ?」というのは何となく伝わってきます。「何にも書いてないけど、ここはやるしかないぞ」ってみんなが理解する感じです。
――奥寺さんもあえてそういうメッセージの出し方をされているのでしょうか。
奥寺:書きすぎるとシーンに緊張感がなくなるので。でもそういうことを読み取ってくださるチームじゃないと、なかなかできないことですよね。(他の現場では)「あんまり書いてないね」とか、「もうちょっと書き足して」と言われることが多いですし。細かく書かなくても、たった2行だけでも、このチームはすごく豊かなシーンにしてくださるので、ありがたいです。
――奥寺さんは塚原監督とお仕事をする上で一番信頼できる部分はどこでしょうか。
奥寺:私が言うまでもなく、演出のうまさは本当に名実ともに名監督ですし、それだけでなく「人間的に好き」というのはあります。打ち合わせも楽しいですね。
――映像をご覧になって、またアイデアが浮かんでくることはあったのでしょうか。
奥寺:今回ちょっと残念だったのは、いつもは完パケ(※ドラマの完成映像)を見ながら先々の物語を書いていくんですが、今回は撮影前に全部描き終わっていて。なので、そこを反映できなかったのはもったいなかったですね。(全部書き上げた状態でクランクインするのも、現場の様子を踏まえながら書き上げていくのも)どちらの良さもあるんですが、どっちがいいんだろうって。
塚原:でも、まとめて書いていただいていなかったら、北海道で3週間ロケってできなかったと思うんです。なので、関東から地方へロケに行く上では、やっぱり10本書いていただけて助かったなというのはあります。
一方で、今回は思わぬ事態にはならなかったですが、思わぬ事態が起きたときは取り返しがつかないことにもなりかねないので。例えば俳優さんの思いの中で物語が別の方向へ転がっていった場合、「どうするんだろう、これ」と思いながらやる可能性もありますし。セーフで良かったです(笑)。
■「何を信じたらいいのか分からないとか、そういう気持ちを残したい」(奥寺)
――今この作品を世に送り出す意義やメッセージのようなものについて、お2人はどのように考えていますか。
奥寺:何か特定のというわけではないんですが、この時代の不安みたいなものを少しでも画面に映していただいて、残していけたらなという思いはあります。10年後の方がドラマを見たとき、「2026年にはみんなこういうことを不安に思っていたんだ」と思い出してもらえればうれしいなと思っています。
その不安というのは、「これからどうなっちゃうんだろう」という社会に対する不安とか、人間関係における不安とか、何を「怖い」と思っているのかということです。何を信じたらいいのか分からないとか、そういう気持ちを残したいと思っていました。
塚原:「LOST」という単語を奥寺さんが出していただいたときに、やっぱり「生きる」というのは「失うこと」なので、小駒と直がどう救い、どういう結末を迎えるのか。
それは自分をも救い上げる手でもあるし、誰かを救い上げる手でもあるし、救えない手でもあり…という。生きることの切なさ、やるせなさみたいなものがすごく台本の中に溢れているので、それが金曜日に重くのしかかることなく、救いの手を期待しながら、気持ちも明るくなる、ワクワクする1時間になるように描くことがテーマだと思っています。
――今お二人語っていただいたようなことは、事前のやり取りの中ですでに話をしていたのか、それとも作り込む中ではっきりしてきたものなのでしょうか。
奥寺:作り込むうちに見えてきますが、「この作品のテーマは?」と聞かれたときに私は「ひとつには絞れないな」と思ってしまって。なので、そういうときはいつも塚原さんとか新井さんがうまく答えてくださるんです。
塚原:始まってすぐの頃、小栗さんから「それでこの作品は、最終的にどこに向かうの?」みたいな話をされて。主題というか訴えたいことは何なのかと聞かれたんですが、その時私は奥寺さんが打ち合わせで仰っていた「LOST」という言葉にいろんな派生があるといった話からインスピレーションを受けて、たくさんの「LOST」が付く物語が思い浮かんでいました。
それはキャラクターに寄せていく場合もあるし、物語の中心のこともあるけれど、主題として最後に何か「こうせねばならない」のだと謳わない。それが奥寺さんの脚本の素晴らしさなので、それよりも外側に、受け取る側に何かあるように作れたらいいと思っていて。
小栗さんにも、「まずは最終回まで読んでみて、自分で考えてもらいたいけれど、その中に言葉に落ちてはいないはずです」と。「行間を共に読んで、そこの部分を育てて、最終的にはお客さんに解釈してもらうまでの物語にしましょう」とお伝えした感じです。
――最後に、放送を楽しみにされている視聴者の方にメッセージをお願いします。
奥寺:第1話は「え、遭難救助モノ?」と思われるかもしれないんですが、第2話からは話のテイストやそれぞれの人物の印象がどんどん変わってきます。小駒と直がどこにたどり着くのか、ぜひ最後まで見届けていただければと思います。
塚原:金曜の夜にぴったりだなというぐらい、ワクワクするし、土日に考察したい人はしてもいいし、お友達と月曜日にランチの時に見たって話になるように作っているつもりなので、それぞれの楽しみ方で見てくださったら光栄です。人間ドラマとしても重厚な作品にもなってるので、気軽な気持ちで来て、金曜日の夜皆さんが受け取ってもらえるものがあればいいなと思っています。お楽しみに。
【関連記事】
・
【動画】遭難事故に秘められた謎とは…金曜ドラマ「LOST10」予告映像
・
井口理、初の連ドラレギュラー出演に「ぜひ僕の演じる役も疑いながら(笑)」話題作が相次ぐ野呂佳代も出演決定<LOST10>
・
中村アン&飯豊まりえが遭難事故の関係者役を熱演「前情報に惑わされすぎずにシンプルに観ていただきたい」<LOST10>
・
小栗旬が5年ぶりの民放連ドラでクセのある保険調査員役に「演じながら思うことや感じるものがたくさんあります」<LOST10>
・
横浜流星が大河以来の連ドラで遭難事件を追う刑事役に「情報があふれる現代、本作のテーマ“すべてを疑え”が必要」<LOST10>