電車やバスで、ゴミの置き去りを見かけてモヤモヤしたことはありませんか?
今回は、電車内でそんな場面に遭遇した女性が、子どもの純粋な一言に思わず心が温かくなったエピソードをご紹介しましょう。
優先席でお菓子を食べる中学生たち
ある休日の午後。浅田咲子さん(仮名・34歳)は、買い物帰りの電車に乗っていました。
車内は座席がほぼ埋まる程度の混み具合。咲子さんはドア付近に立ち、スマホを眺めながら目的地へ向かっていたそう。
すると、近くの優先席に座っていた中学生くらいの男子2人が、お菓子を食べ始めました。
「別にそこまで大騒ぎしていたわけじゃないんです。でも食べ終わった袋を座席にポンと置いたままにしているのが気になって」
袋を座席の上に置いたまま談笑を続ける2人。その様子を見た咲子さんは「このままゴミを置いて降りるつもりじゃないでしょうね?」と心配になったそう。
「誰か注意しないかな」と思いながらも、自分から声を掛ける勇気はありませんでした。
「注意して逆ギレされたら嫌だなとか、余計なトラブルになるかもしれないと思ってしまって……。結局、見ていることしかできませんでしたね」
誰も注意できない中、小さな男の子が近づいて
やがて電車が次の停車駅に近づき、男子2人が立ち上がると、やはりお菓子の袋は座席に置いたままだったそう。
「やっぱり置いていくんだ……」咲子さんがそう思ったその時でした。
「近くに座っていた小学校3年生ぐらいの男の子が立ち上がって、袋を手に取って男子たちへ駆け寄りました。そして、『これ置いていくの?』とニコニコしながら話しかけたんですよ」
突然声を掛けられた中学生たちは、思わず顔を見合わせました。すると男の子は悪気のない笑顔のまま「じゃあ、僕が捨てておくね」と言ったそう。
大谷選手に憧れる男の子の純粋な言葉
「さらに少し照れくさそうにもじもじしながら『大谷選手って、ゴミを見つけたら拾うのがかっこいいんだって。だから僕も真似してるの』と続けたんですよね」
大谷翔平選手が試合中にも球場でゴミを拾う姿は、メジャーリーグでもたびたび話題になっています。その背景には、花巻東高校時代に佐々木洋監督から教わった「ゴミは人が落とした運。ゴミを拾うと運を拾う。そして自分にツキを呼ぶ。そういう発想をしなさい」という教えがあるとされています。
大谷選手は高校時代に作成した目標達成シートでも、「運」を引き寄せる行動の一つとして「ゴミ拾い」を掲げ、現在まで実践を続けています。こうした姿は海外メディアでも取り上げられ、その謙虚な姿勢や人柄が称賛されています。
中学生たちが見せた、照れくさそうな反省
その言葉を聞いた瞬間、車内の乗客が男の子に注目し、中学生男子2人も一気に気まずそうな表情になったそう。
「すると中学生の一人が小さく『……いや大丈夫』と言って男の子の手から袋を受け取り、もう一人も照れくさそうに頭をかきながら『ありがと』と言うと、2人はドアの方へ向かったんです」
すると男の子のお母さんが「急にごめんなさいね」と申し訳なさそうに声を掛けました。
しかし男子2人は振り返ると「こちらこそ、ごめんなさいです」と笑顔で答え、そのまま袋を手にホームへ降りていったそう。
子どもの一言が、車内を優しい空気に変えた
そのやり取りを見届けた咲子さんは、思わず胸が温かくなりました。
「その光景を見ながら、大人が『ルールだから』と注意するよりも、子どもの純粋な一言の方が人の心を動かすことがあるよなって何だかホッコリしてしまって」
誰かを責めたり怒鳴ったりするのではなく、憧れの存在をまっすぐ真似する子どもの素直な気持ちが、周囲の空気まで優しく変えていきました。
「大谷選手の行動に憧れた男の子の一言は、中学生だけでなく、その場にいた乗客の心にも小さな気付きを届けてくれたのかもしれませんね」と微笑む咲子さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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