水害から土砂災害、山火事リスクまで‥‥防災専門家が指摘する「メガソーラー」の危険性

山林を削って建設されるメガソーラーは、災害リスク以外にも景観上の問題が指摘されている

水害から土砂災害、山火事リスクまで‥‥防災専門家が指摘する「メガソーラー」の危険性

10月13日(火) 8:00

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山林を削って建設されるメガソーラーは、災害リスク以外にも景観上の問題が指摘されている

山林を削って建設されるメガソーラーは、災害リスク以外にも景観上の問題が指摘されている





世界各地で水害や土砂災害が続発した今夏。国内でも6月下旬に発生した、福岡・鹿児島で死傷者8名を出した集中豪雨にはじまり、7月中旬に栃木県足利市の住宅を飲み込んだ土砂災害や、8月から9月にかけて複数回襲来した台風による土砂崩れや冠水被害でも、千葉県や神奈川県で多数の死者が出た。

「地球が壊れた‥‥」

世界で頻発する極端な気象現象や気候変動の原因に、温室効果ガス排出による影響を指摘する声も上がっている。ところが一方で、「温室効果ガスの抑制」を謳(うた)い文句に普及した太陽光発電施設が、災害時の被害を拡大させるリスクも指摘されていることはあまり知られていない。

【自然の水循環システムが崩壊】 「自然の土壌には多くの微生物が棲み、菌糸や粘着物質を出して土の粒子をくっつけてくれるおかげで、隙間の多い団粒構造になっています。雨水はこの隙間に染み込み、一時的に保水されます。さらに土壌の中で雨水が飽和すると、押し出されるように沢に流れ出る。

森林では、樹木の根が土壌の水を吸い上げ、余った水は葉から蒸散して大気に戻ります。土壌中の雨水は、さらに岩盤の割れ目に浸透し、地下水となります。これが本来あるべき水の循環システムです」

そう話すのは、水害防災に詳しい山梨大学の鈴木猛康名誉教授だ。近年、日本の山間部に雨後の筍(たけのこ)のように出現している太陽光発電施設は、こうした水の循環システムを壊す恐れがあるという。

メガソーラー建設のための造成により、土壌の保水性が損なわれれば、水害のリスクも高まるという

メガソーラー建設のための造成により、土壌の保水性が損なわれれば、水害のリスクも高まるという





「太陽光発電施設の建設では、樹木を伐採、伐根して整地します。すると、土壌を団粒構造にしてくれる微生物もいなくなって雨水が染み込まない土壌になり、地中の水分を吸水して蒸散させる樹木も抜根されてしまいます。そうなると雨水の行き場がなくなり、地表の土砂を侵食し、下流に流出します。

さらにその上に敷かれるソーラーパネル上に降った雨水は、100%パネル下にまとまって落ち、地面に川のような水みちを形成する。こうして雨水がそのまま山の斜面を下ることで、河川の氾濫や低地の冠水などの水害を引き起こします」(鈴木教授)

さらに、太陽光発電施設の造成は土砂災害のリスクも高めるという。



「水量の多い水みちが土壌を深く侵食すると、斜面を崩壊させ、沢に集まって土石流等の土砂災害が起きやすくなります。また、樹木の皆伐によって土壌が不安定になることも土砂災害の原因になりえます」(鈴木教授)

事実、太陽光発電施設が影響したとみられる土砂災害は枚挙に暇がない。

2017年10月、埼玉県小鹿野町で、台風21号による大雨で太陽光パネルが設置された造成地が崩落し、土砂が長留川をせき止めて周辺住宅が浸水する被害が発生。 同年11月には千葉県市原市で、太陽光発電施設建設のための林地開発現場の盛土が崩壊し、大量の土砂が市道へ流出した。

また、2024年1月に起きた能登半島地震では、石川県内の複数のメガソーラーに斜面崩壊や沈下による被害が発生。能登町や穴水町では、メガソーラー敷地外への土砂の流出が確認されている。

【山林火災を引き起こす可能性も】 さらには、太陽光発電施設が災害時に火災を引き起こすリスクもある。

9月24日、台風25号による大雨で冠水した千葉県成田市では、メガソーラーで火災が発生。断続的な発火や爆発音が複数回確認されたものの、感電の危険性があることから消防隊員らは、現場に近づけず、ドローンで状況を確認するにとどまった。火は約2時間半後に自然に鎮火したが、水につかった電気系統の設備が水位の低下で露出し、ショートしたことなどが出火原因とみられる。

同様の事例は、2019年9月、台風15号が千葉県を襲った際にも発生している。市原市山倉ダムの水上メガソーラーの係留ワイヤーが強風で破損し、漏電によって発火したのだ。

「ソーラーパネルが発電を開始すると、破損したソーラーパネルでも、ケーブルでも、パワコン内でもショートが起こって発火する可能性があります。バッテリー部分にも延焼すると階差の規模はさらに大きくなります。鎮火が困難なだけでなく、雨に濡れた草木であっても燃え移り、山火事を発生させることも考えられる」(鈴木教授)

危険を孕(はら)んだ太陽光発電施設が野放しにされている裏には、行政の機能不全もあるようだ。

「0.5ヘクタール以上の事業用の太陽光発電施設を新設するには、都道府県からの林地開発許可が必要になる。ところが、行政には発電施設の危険性を見抜く力が欠けています。

まず、ソーラーパネルは周囲に囲いを設置することで建築基準法の適用外となり、都道府県や政令指定都市、中核都市による建築確認は原則行われません。また、林地開発許可では、開発後の流出係数(雨水のうち、蒸散や地下水浸透を除き、河川へ流出する割合)の変化に基づいて、事業者は調整池を建設しなければならないことになっていますが、行政が事業者の説明を鵜呑みにして十分な規模の調整池が作られていないケースもあります。

都道府県や林野庁は新設既設問わず、太陽光発電施設の安全性のチェックを厳格化するべきです」(鈴木教授)

「地球にやさしい」はずの太陽光発電施設が、災害を誘発するとすれば、元も子もない。

●鈴木猛康(すずき・たけやす)

山梨大学名誉教授、特定非営利活動法人防災推進機構理事長、東京大学生産技術研究所リサーチフェロー。著書に『増災と減災』(理工図書)など

文/吉井透写真/photo-ac.com

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