人気漫画の実写化が発表されるたび、「また山﨑賢人?」――そんな声がネットを駆け巡っていた時代がありました。「とりあえず山﨑賢人さんにやらせておけば何とかなるのか?」と思ってしまうほど、2010年代の漫画実写化界は山﨑賢人無双でした。
それから約10年。最近、似たような気配をまとい始めている俳優がいます。それが高橋文哉さん(25)です。令和の漫画実写化界が「困ったら高橋文哉」になりつつある現在地を考察します。
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潔世一からしんちゃんまで。実写化と言えば高橋文哉
現在25歳の高橋さん。2019年に『仮面ライダーゼロワン』(テレビ朝日)で主役ライダーを務め、その後は『最愛』(TBS)や『女神の教室〜リーガル青春白書〜』(フジテレビ)などドラマや映画で着実にキャリアを重ねてきました。
しかし高橋さんが他の若手俳優と異なるのは、少女漫画、ヤンキー漫画、アート漫画、殺し屋漫画、サッカー漫画、ついには「25歳になった野原しんのすけ」まで、漫画の実写作品でたくさんのキャラクターを演じているのです。
最近だと、2026年8月に公開された映画『ブルーロック』で、主人公の潔世一役に抜擢されました。累計発行部数6000万部を突破した同名漫画の実写化で、櫻井海音さん、高橋恭平さん、野村康太さん、綱啓永さんら若手俳優がズラリ。他キャストの多くがオーディションで決まった中、この大型作品のセンターを、3年以上前からプロデューサーにオファーされていたのが高橋さんです。
もっとも、彼の“二次元実写化人生”は今に始まったことではありません。
2024年には『からかい上手の高木さん』で西片、『ブルーピリオド』では女子のようなルックスの鮎川龍二を演じ、ドラマ『伝説の頭 翔』では最強ヤンキー・伊集院翔と、いじめられっ子・山田達人の一人二役。
2026年には『SAKAMOTO DAYS』で朝倉シン役にも抜擢されています。
さらに驚くのが『クレヨンしんちゃん』。実写ショートムービー「もうひとつのクレヨンしんちゃん やかんの家族だゾ!」では、大人になった野原しんのすけを演じています。
これはコカ・コーラ「やかんの麦茶」の大型プロモーションで、2025年~26年8月にシーズン1・2の計12話がネットで公開中。総視聴数は2100万回(2026年5月末時点)を突破しているそうです。
身長も顔も“普通っぽい”ところが実写化に合う
高橋さんは、『ブルーピリオド』、『伝説の頭 翔』、『SAKAMOTO DAYS』、『ブルーロック』など、少年漫画や青年漫画の実写化作品に多く出演しています。しかも、「最初から圧倒的な王子様」というより、一見普通に見える若者が何かをきっかけに覚醒したり、別の顔を見せたりするキャラクターがよく似合います。
では、なぜ高橋さんはこれほど二次元キャラクターにハマるのでしょう。ここで地味に気になるのが、公式プロフィールで176cmという身長です。
もちろん176cmは十分高身長。でも俳優の中で「ものすごくデカい」というほどでもありません。また顔立ちもキリっとしたイケメンというよりも、柔らかさや素朴さがあり、親しみやすさや少年っぽさを残す雰囲気です。
高橋さんは画面の真ん中に立てる華やかさがありながらも、制服を着れば「クラスにいそう」と思わせる普通っぽさも残っている。大柄すぎず、小柄すぎず。マッチョすぎず、華奢すぎず。
顔も美形ではあるものの、「この役しかできません」という強烈なクセはありません。そのため髪型と衣装を変えれば、普通の高校生にもヤンキーにも殺し屋にもなれるという憑依型の俳優としての気質も持っているのです。
実写化ならではの難しさ
漫画実写化には、原作ファンが頭の中に作り上げた「正解」があります。俳優自身の個性が強すぎれば「○○じゃなくて俳優本人にしか見えない」と言われ、かといって存在感がなければ「似てない」と批判が来る。
つまり必要なのは、“主役の華”と“染まりやすさ”という、ちょっと矛盾した能力なのでしょう。そのバランスが高橋さんはかなり絶妙なのかもしれません。
「実写化請負人」と揶揄されたこともある山﨑賢人
この「またあの人気漫画の実写映画の主演が高橋文哉か」となる現象、平成時代には山﨑賢人さん(32)が一手に引き受けていました。
山﨑さんは2014年の『L・DK』以降、漫画原作作品に次々出演。『ヒロイン失格』、『オオカミ少女と黒王子』、『四月は君の嘘』……。当時の山﨑さんといえば、制服を着てヒロインの隣に立てば、とりあえず少女漫画の世界が完成する男でもありました。
その後も『斉木楠雄のΨ難』ではピンク髪、『ジョジョの奇妙な冒険』ではリーゼント。そして『キングダム』の信、『ゴールデンカムイ』の杉元佐一と、むしろ「この人じゃないと成立しない」タイプの大型漫画原作作品を背負う俳優になっています。
そのあまりの登板数に、「山﨑賢人は漫画の実写化作品に出ないとひどい目にあう契約でもしてるのか?」「実写化請負人」と揶揄されることもありました。
山﨑さんと言えば、どんな役もこなす演技力や器用さもさることながら、端正な顔立ちでも有名。女性ファッション誌『ViVi』で2015年に始まった「国宝級イケメンランキング」で初代1位に輝き、2016年上半期でも1位を獲得して初代殿堂入りを果たしています。
イケメン王子の山﨑、クラスにいそうな高橋
長身でもあることから、隣に並んだヒロインがより小柄で可愛らしく見えて画面映えするということから、少女漫画のイケメン王子様役を大量に任されたのでしょう。学校一のモテ男だったり、ヒロインを振り回す美少年だったり。「こんな男子が学校にいたら」という女子の妄想を、三次元に召喚する役目はまさにピッタリでした。
山﨑さんが少女漫画から出てきた“王子様”なら、高橋さんは少年漫画に放り込まれた“普通の青年”という違いがあるでしょう。女性が目をハートにしてきゅんきゅんしやすい山﨑さんと、男性が「この主人公は自分だ」と自己投影しやすい高橋さん。同じ実写化俳優でも、求められるキャラクターが変わっているのが面白いところです。
「またこの人?」と言われるリスクも
漫画実写化に何本も出演すると、俳優にとって必ずしも歓迎の声ばかりが集まるわけではありません。漫画は原作ファンの脳内には、すでにキャラクターの顔も声も存在しているものです。そのイメージと比較され、場合によってはキャスト発表だけで炎上する世界です。
山﨑さんもかつては「また山﨑賢人?」と批判が来ることもありました。そのため漫画の実写作品に出演する俳優たちは決して楽ではないでしょう。中でも主演俳優が抱えるプレッシャーやストレスは相当なもののはずですし、制作側も普通の映画とは違うキャスティングの難しさに直面するものです。
それでも何度も漫画の実写映画に抜擢されるのは、演技力や表現力だけでなく、これまでの実写映画出演の実績や制作側からの信頼、世間からの好感度、主演を張れるスター性と責任感、メンタリティなど、さまざまなスキルや条件が求められるのでしょう。
2028年大河の主演までたどり着いた山﨑賢人
実際に高橋さんは『ブルーロック』の映画化に際して映画公開の3年前から、プロデューサーにオファーされていたことを製作報告会で語っていました。
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山﨑さんの場合は、そうした経験を積み重ねた先に『キングダム』があり、『ゴールデンカムイ』があり、2028年には大河ドラマ『ジョン万』(NHK)の主演までたどり着きました。その背景には山﨑さんのこれまでの実績に対するNHK側の圧倒的な信頼があるのでしょう。
平成の実写化界に山﨑賢人がいたように、令和には高橋文哉がいる。高橋さんが次から次へと人気漫画の実写映画に声がかかっているのは、すでに山﨑さんのようなルートを歩んでいる証拠ではないでしょうか。高橋さんの次の実写映画や大河主演が発表される日もそう遠くないかもしれません。
<文/エタノール純子>
【エタノール純子】
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中
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