私は中学卒業後に働き始め、実務経験を積みながら資格を取得し、その後は高卒認定にも合格しました。現在は小規模なIT企業を経営し、企業向けのシステム開発だけでなく、学校のIT環境整備にも携わっています。妻と、妻の連れ子である娘・A子と暮らしていましたが、2人は私の学歴や仕事をどこか軽く見ていました。そんな中、A子の高校受験をきっかけに、家族の関係が大きく変わることになったのです。
合格を確信して私を見下す娘
その日、私は取引先でもあるB高校で、校内システムの打ち合わせを終えて帰宅しました。
B高校は、A子が第一志望にしている名門校でもあります。うちの会社が担当しているのは、校内ネットワークや教職員が使う業務システムの整備です。A子が受験することは学校側にも伝え、私は入試に関係する業務や情報には一切関わらないようにしていました。
帰宅すると、妻とA子がうれしそうに待っていました。A子は先におこなわれた選考で手応えがあったらしく、「筆記試験もかなりできたし、これなら特進コースに受かったも同然!」と興奮した様子です。私は「ここまで頑張ったのはすごいな」と声をかけました。
ところが、A子から返ってきたのは思いがけない言葉でした。
「でも、お父さんって中卒なんでしょ? 高校のことなんてわからないよね。もう私もB高校に行くんだから、いろいろ言われたくない」
妻も止めるどころか、「A子もこれから世界が広がるんだから」と笑っています。
ここ数年、妻とは会話が減り、私の仕事や考え方を否定されることも増えていました。家族としてこのまま暮らし続けられるのか。私はこの日をきっかけに、妻との関係について真剣に考えるようになりました。
思い込んでいた「合格」の結果
数週間後、B高校のすべての選考が終わり、正式な合格発表の日を迎えました。その日は以前からシステム導入作業の予定が入っており、私もB高校を訪れていました。仕事を終えて帰ろうとしていると、偶然A子の姿を見かけました。いつもの強気な様子とは違い、明らかに動揺していました。
声をかけると、A子は泣きながら「特進コースに入れなかった」と言いました。A子は筆記試験の手応えがよかったことから、自分はほぼ合格したと思い込んでいました。
しかし実際には、筆記試験だけで決まるわけではなく、面接などを含めて総合的に選考される仕組みでした。B高校では、一般コースに補欠候補の制度があり、A子はその候補になったそうです。
落ち込んでいたA子が、思い出したように「そういえば、お父さん、なんでここにいるの?」と尋ねてきました。そこで初めて、私は自分の会社がB高校のIT環境整備を担当していることを話しました。
「うちの会社が、校内ネットワークや先生たちが使う業務システムの整備を担当しているんだ。入試関係の仕事には関わっていないよ」
A子はしばらく黙った後、
「中卒なのに……B高校の仕事をしてるの?」
と驚いた表情を見せました。
「中学を出てから何も勉強していないわけじゃない。働きながら資格も取ったし、高卒認定にも合格した。今も仕事をしながら勉強することはあるよ」
私はそう答えました。学歴だけを見て「何も知らない人」だと思っていたA子にとって、私が自分の憧れていた学校の仕事に携わっていることは意外だったようで、しばらく何も言えない様子でした。
母娘が知らなかった私の仕事
帰宅後、A子は妻に「ママ、お父さんがB高校のシステムの仕事をしてるって知ってた?」と尋ねました。妻はB高校と仕事上の付き合いがあることは知っていましたが、具体的にどの業務を担当しているのかまでは知らなかったようです。
「B高校のシステムまで任されていたの? そんな仕事をしてるなんて知らなかった」
と驚いていました。
その後、一般コースで辞退者が出たため、補欠候補だったA子は繰り上げで合格し、B高校へ通えることになりました。
一方、妻とはその後も何度も話し合いました。しかし、以前から私の学歴や仕事を軽く扱う言動が続いていたことに加え、互いに大切にしたい価値観の違いも埋まらず、最終的には離婚することになりました。
システム導入を通じた付き合いがあったことから、離婚後しばらくして、B高校からIT分野の仕事や学びについて生徒向けに話してほしいと依頼されました。授業では、自分が中学を卒業してすぐ働き始めたことや、その後も資格取得や勉強を続けてきたことを話しました。
「私は高校には通っていません。でも、中学を卒業した時点で勉強が終わったわけでもありませんでした」
生徒たちには、学歴の良し悪しを語るのではなく、学校を出た後も学び続けることの大切さについて、自分の経験を交えて話しました。講義はA子の学年も対象になっており、その場にはA子もいました。
後日、A子から「あのとき中卒だからって見下してごめんなさい。学校の名前とか学歴だけで人を決めつけてた」と謝られました。私はすぐに以前と同じ関係に戻れるとは思いませんでした。それでも、自分の言葉を振り返ってくれたことは受け止め、今後も必要なときには相談に乗ろうと思いました。
まとめ
私は長い間、自分の学歴や、これまでどんな学びや経験を積んできたのかを家族に細かく説明する必要はないと思っていました。仕事をして生活を支えていれば、自分のことは自然に伝わると思っていたからです。
しかし今回の出来事で、同じ家族でも、自分がどんな経験を積み、どんな考えで働いているのかまで自然に理解してくれるとは限らないのだと感じました。
一方で、A子が憧れていた学校との仕事を通して、私自身も、学歴だけでその人が積み重ねてきた経験や学びを測ることはできないのだと改めて感じました。
中学卒業後に働き始めた私にとって、資格を取ったり、新しい技術を身につけたりすることは、仕事を続けるうえで欠かせない学びでした。家族との関係は変わりましたが、自分がこれまで積み重ねてきたものを改めて見つめ直すきっかけになった出来事です。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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著者:ライター ベビーカレンダー編集部/ママトピ取材班
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