福田正博フットボール原論
■アジア大会で銀メダルという結果だったU-21日本代表。ロサンゼルス五輪を目指すこの世代には、すでにA代表に選ばれているメンバーもいる。この先の成長が楽しみな選手たちを福田正博氏にピックアップしてもらった。
アジア大会で銀メダルを獲得したU-21日本代表photo by Miki Sano
【今回のA代表に4人のU-21選手】
2028年に開催されるロサンゼルス五輪世代のU-21日本代表は、愛知・名古屋で開催されたアジア競技大会で準優勝した。結果だけ見れば、3大会連続で韓国に決勝で苦杯をなめた形だが、今回の試合内容は大きく違った。
前回大会(2023年/中国・杭州)の決勝では、日本は先制点こそ奪ったものの、それ以外は韓国が終始ペースを握って1-2の逆転負けだった。だが、今回はシュート数、ボール支配率ともに韓国を上回った。それだけにサイド突破を許し失点した後半16分のシーンが悔やまれるし、攻撃面でもシュートを決めきる力がなかったことが残念でならない。
ただ、今大会はこの世代のベストメンバーで挑んだのかと言えば、そうではない。同時期に行なわれたA代表の活動に塩貝健人(ヴォルフスブルク)、後藤啓介(フライブルク)、佐藤龍之介(バレンシア)、齋藤俊輔(ウェステルロー)が招集されていたからだ。
塩貝はウルグアイ戦、エクアドル戦、ニュージーランド戦に途中出場し、ウルグアイ戦では代表初ゴールを決めた。一方で、ボールを持った時に味方を使わずに自分で持ち込もうとして、ボールロストするシーンも多く見られた。
「自分で決めたい」という思いの強さと、技術的に「周りが見えていない」ことの両方に理由があるのだろう。プレーへの批判が少なくないが、現状のガムシャラにゴールに向かう姿勢はFWとしての大切な資質だと思う。
FWというのは、まず「自分が決める」という思いがなければ務まらない。技術が高く、視野が広くても、シュートへの意識が希薄だと絶好機にシュートではなくパスを選択してしまうからだ。
「シュートを打つメンタリティ」を教えるのは至難の業だが、ゴールに貪欲な選手にはゴールを量産できる技術を教えることは可能だ。塩貝が視野を広げ、技術を高めながら、味方をうまく使ったほうが数多くゴールを決められると気づく日を心待ちにしている。
【選手層は厚くなっている】
後藤はベネズエラ戦にスタメン出場して前半のみプレーしたが、インパクトを残すことはできなかった。ラフなボールを収めるプレーや、DFラインの裏への抜け出し、あるいはサイドからのクロスに対するポジショニングなどで、可能性を感じさせるプレーをもっと見たかった。
そのベネズエラ戦でシャドーに入ったのが齋藤と佐藤。佐藤は北中米W杯の日本代表から漏れたものの、入っていても不思議ではない力を持っている。所属クラブの監督交代もあって途中離脱となったが、クラブで確固たる地位を築いて次回の日本代表戦でもっと長くプレーを見せてもらいたい。
齋藤は、見ていて気持ちのいいプレーぶりで、ドリブルやパスなどで才能の片鱗を見せてくれた。初めての日本代表の舞台に萎縮することも、大きく見せようとすることもなく、今の自分の力を発揮しようとしていた。
ゴール前で違いを生み出せるポテンシャルを備えたこの4選手が、A代表ではなくアジア大会のU-21日本代表に加わっていたら、結果は違っていたかもしれない。ただ、それ以外のポジションでも、アジア大会のメンバーも、選手層が確実に厚くなっていると示してくれた。
左サイドアタッカーの横山夢樹(セレッソ大阪)は、ドリブルでの仕掛けがA代表レベルでどこまで通用するか見たいと思わせるものがあった。MF大関友翔(川崎フロンターレ)はチームの中心としてプレーしたが、相手の逆を取る彼のプレーはまさに川崎のプレーヤーという感じだ。
センターバック(CB)の市原吏音(AZ)は所属クラブで出場機会がなく試合勘の面で大会当初は苦しんだように映ったが、徐々に安定したプレーを見せてくれた。アンカーの石渡ネルソン(シント=トロイデン)はスケールの大きなプレーが魅力だし、左サイドバックの小杉啓太(フランクフルト)も攻守で躍動していた。
MFながら1トップでも起用された嶋本悠大(清水エスパルス)はゴール前で何度も競り勝っていた。まだ19歳で、順調に成長していってもらいたい選手だ。前回大会は10人いた大学生選手は、今大会では3人。そのひとりでCBの岡部タリクカナイ颯斗(東洋大)は決勝の韓国戦でのプレーが特によかった。
準決勝のウズベキスタン戦で値千金の同点ゴールを決めたFW石橋瀬凪(湘南ベルマーレ)もいい選手だ。彼は右利きで、佐藤龍之介、齋藤がチームに加わった時に、どのポジションを任されるのかも興味深い。
その点で言えばMF石井久継(湘南)の存在は大きい。今大会は背番号10番でプレーしたが、右サイドでも中盤でもプレーでき、技術の高さと器用さを備えた彼は、チームをつくっていくなかで貴重な存在になっていくはずだ。
【チームの強化、五輪出場の道が険しい】
このU-21日本代表の目標は、2028年のロサンゼルス五輪の出場権獲得だ。参加国数はこれまでの16から12となり、アジア枠も前大会の3.5から2に減った。予選を勝ち抜く難易度が格段に上がっている。予選を兼ねたU-23アジアカップは2028年に日本で開催されるが、そこに向けて選手たちはさらなる成長を遂げる必要がある。
U-21日本代表を率いる大岩剛監督は、来年のA代表のアジアカップ終了後からA代表監督を兼任することが決まっている。森保一監督がA代表と東京五輪代表の監督を兼務し、両チームを融合させながら強化した形を踏襲したのだろう。
大岩監督はA代表を強化しながら、五輪チームの強化も進めなければならないが、ロス五輪世代には海外組が増えている難しさもある。限られた活動時間のなかでは満足な強化ができないかもしれない。
だが、森保監督はそうした日本サッカーが置かれた状況に配慮する監督でもある。A代表の試合に東京五輪世代の中心選手を招集して経験を積ませ、五輪チームの成長を促したこともあった。それと同じように、ロス五輪世代の中心選手数人をアジアカップに招集し、厳しい戦いを経験させる判断をしたとしても不思議ではない。
A代表でも活躍できる、ロス五輪世代の選手が出てくるのか。注目していきたい。
text by Ichiro Tsugane
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