『DIGGER/ディガー』の妙演も納得!演技派としても魅せるトム・クルーズの超一流ぶり

そういえば演技派だった!トム・クルーズの輝かしいキャリアを振り返り/[c]2026 WBEI and Legendary

『DIGGER/ディガー』の妙演も納得!演技派としても魅せるトム・クルーズの超一流ぶり

10月12日(月) 19:30

「ミッション:インポッシブル」や「トップガン」シリーズを大ヒットさせ、誰もが認めるアクションスターのトム・クルーズだが、最新作『DIGGER/ディガー』(公開中)ではその演技力が高い評価を得ている。40年以上、ハリウッドのトップに君臨するトムなので、俳優としての実力の高さは当然といえば当然。改めて“演技派”トムの輝かしいキャリアを振り返ってみよう。
【写真を見る】トムのキャリアでも最上位にランクインする演技(『ザ・エージェント』)

石油採掘会社のCEOで傲慢な権力者でもあるディガーをトムが演じた『DIGGER/ディガー』

■『卒業白書』のブレイクと『レインマン』で見せた心に残る名演

いわゆる「青春スター」として注目されたトム・クルーズだが、最初のブレイク作である『卒業白書』(83)でゴールデン・グローブ賞主演男優賞(コメディ/ミュージカル部門)へのノミネートを果たしており、早くからその実力は証明されていた。当時21歳のトムが、ワイシャツとブリーフ姿で踊るシーンが有名だが、高校生ジョエルを演じるにあたって減量を敢行。そのうえで未来への不安や、若さゆえの危うい心情を丁寧に表現するという、実はハードルの高い挑戦をこなしている。

高校生が持つ未来への不安や、若さゆえの危うい心情を丁寧に表現した『卒業白書』

『卒業白書』の成功によって、その後の出演作が常に大きな話題となるなか、トムの演技が“開花”したと言っていいのが『レインマン』(88)だろう。父の遺産をめぐって、長年疎遠だった自閉症(サヴァン症候群)の兄と再会する、輸入車ディーラーのチャーリー役で出演。最初は自己中心的だった彼が、兄との旅で思いやりの心にめざめる。

疎遠だったサヴァン症候群の兄と再会し、共に旅するなかで思いやりの心にめざめる男を演じた『レインマン』

そのプロセスをトムはナチュラルに演じ切り、観る者の心を揺さぶることに成功した。本作は兄役のダスティン・ホフマンがアカデミー賞主演男優賞に輝いたが、スクリーンタイム(登場時間)はトムのほうが長く、彼がノミネートすらされなかったのは、アカデミー賞の残念な歴史の一つ。タイトルの「レインマン」の意味を伝えるワンテイクや、監督のバリー・レヴィンソンが演じた医師とのシーンでのアドリブなど、改めてトムの名演技に感動する。

■『7月4日に生まれて』『ザ・エージェント』のアカデミー賞主演男優賞級の演技

そして『レインマン』の翌年、ついにアカデミー賞主演男優賞に初めてノミネートされたのが、『7月4日に生まれて』(89)。ベトナム戦争で下半身不随となり、反戦運動に加わった実在の人物がモデル。役作りのために1年間、車椅子に乗って生活したという、トムらしいエピソードも語り継がれる。

アカデミー賞主演男優賞に初めてノミネート(『7月4日に生まれて』)

それまでのイメージから一変した彼が、主人公の悲しみと怒りを文字通り全身全霊で表現。そのテンションは全編で緩むことがない。トムのキャリアで最もアカデミー賞受賞にふさわしい演技だが、同年は強力な相手、ダニエル・デイ=ルイス(やはり車椅子に乗った役の『マイ・レフトフット』)に敗れた。トムが受賞していたら27歳で史上最年少の主演男優賞。その記録は現在も破られていないはずだった。

主人公の悲しみと怒りを全身全霊で表現(『7月4日に生まれて』)

トムにとって2度目のアカデミー賞ノミネートが、やはり主演男優賞部門での『ザ・エージェント』(96)。彼が演じたのは、スポーツ界のエージェントとして多忙な日常を送るジェリー・マクガイア(その名前が原題)。基本的には熱血漢なので、派手な演技も見せつつ、失敗や迷い、やや哀れな姿…と、バラエティ豊かな感情表現で、しかもそれが物語にフィットする。それまでトップスターとしての正統派のカッコよさを貫いてきたトムが、軽妙なコメディのセンスも多々発揮。演技のテクニックとしては、この作品はキャリアで最上位にランクインする。30年後の『DIGGER/ディガー』にリンクする瞬間も発見できるはずだ。

アカデミー賞にノミネートされなかったことが不思議なくらいの名演を見せた(『レインマン』)

■演技派&アクション俳優としてのスキルが凝縮された『マイノリティ・リポート』

『7月4日に生まれて』、『ザ・エージェント』と、アカデミー賞主演男優賞ノミネートは2回のみのトムだが、その後は主演以外の作品での演技が強烈な印象を残すことになる。アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた『マグノリア』(99)では、自己啓発セミナーのカリスマという難役で、怪しさと自信満々の豪快さという両極を行き来しながら、父親に見捨てられた悲しみを引きずる内面も表現。死が迫った父と対面するシーンでは、キャリアでも最もエモーショナルな演技を見せている。

アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた『マグノリア』

そのほか、“助演枠”ではゴールデン・グローブ賞にノミネートされた『トロピック・サンダー 史上最低の作戦』(08)の高圧的な映画プロデューサー役や、『コラテラル』(04)の殺し屋役(クレジットはトップだが、実質的な主人公は被害者役のジェイミー・フォックスのタクシー運転手)のように、普段のイメージを変えるパターンでトムの演技が高く評価されてきた。もちろん、そこも実力の幅を示すわけだが、堂々たる主演で彼の才能を実感するうえで挙げたいのが『マイノリティ・リポート』(02)だ。

スティーヴン・スピルバーグ監督のSFアクション『マイノリティ・リポート』

スティーヴン・スピルバーグ監督のSFアクションながら、息子を失ったトラウマと孤独感、罪を着せられての逃走の苦悩、違法ドラッグに依存する悲痛さと、実は全編で難しい演技が要求される役どころを、いとも簡単にこなしているように見せている。そして、一人の人間の、強さと弱さをナチュラルに行き来していた。

そんなトム・クルーズの真価を知ったうえで、最新作『DIGGER/ディガー』に接すれば、別次元のインパクトを受け取れることだろう。

文/斉藤博昭


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