現有戦力から読み解く「2026ドラフトで獲るべき選手」〜阪神編
今年もドラフト会議の季節がやってきた。各球団ともシーズンを振り返りながら、来季に向けた補強ポイントを洗い出し、アマチュア選手の最終的な絞り込みに入っていることだろう。10月22日に迫る「運命の日」を前に、本当に獲得すべき選手は誰なのか──。藤川球児監督のもと、2リーグ制となった1950年移降で初のリーグ連覇を達成した阪神。投打ともに充実した戦力を誇るだけに、将来のエースや4番候補など、「近未来」を見据えた補強に力を注ぎたい。
【常勝軍団への進化に必要な戦力】阪神タイガース、2年連続リーグ優勝おめでとうございます!
振り返ってみれば、2023年からの4年間でリーグ優勝3度。優勝を逃した2024年も2位なのだから、セ・リーグは今や阪神の黄金時代と言っても過言ではないだろう。
円熟期を迎えた強力打線に、脇をしっかりと固める実力派の野手たち。さらには、若手、中堅、ベテランがバランスよく揃った盤石の投手陣......。投打のバランスも申し分なく、実にうまいことチームづくりをやってのけたものだ。
ざっと見渡したところ、弱点らしい弱点は見当たらない。だが、よくよく目を凝らしてみると、補強すべきポイントはある。今年はそこを徹底的に掘り下げてみたい。
今季の阪神は79勝62敗2分、勝率.560でリーグ連覇を達成した。チームを支えたのは、何と言っても投手陣だ。?橋遥人が16勝3敗、防御率1.87と圧巻の成績を残し、才木浩人、村上頌樹も2ケタ勝利をマーク。村上は防御率1.85で最優秀防御率、才木は175奪三振で最多奪三振のタイトルを獲得した。
ただ、これほど投手力が充実していても、2ケタ勝利を挙げたのは3人。言い換えれば、多くの投手がそれぞれの役割を果たし、勝ち星を積み重ねた結果のリーグ連覇だったということだ。
今の先発陣に、もう1、2枚の頼れる投手が加われば、さらに盤石になる。そして何より、数年後のエース候補も確保しておきたい。
投手としても野手としても規格外のスケールを誇る山梨学院の菰田陽生photo by Ryuki Matsuhashi
【次代のエースと近本の後継者探し】今年の高校生ナンバーワン投手が「甲子園のスター」なのだから、そりゃあ文句なしに織田翔希(横浜/投手/186センチ・81キロ/右投右打)の1位指名に手を挙げるべきだろう。
ただ、ちょっと待てよ......。今年はパ・リーグにウェーバー優先権があるため、リーグ優勝した阪神の2位指名は全体の最後、24番目になる。1位で確実に有望株を押さえたいなら、単独指名が狙える選手に向かうのもひとつの考え方だ。
しかし、過去にそうした安全策を選び、結果的に悔いを残したことはなかったか。ここは迷わず、織田翔希を貫き通したい。
仮に抽選で外れたとしても、夢のある選手を追いかけたいところだ。ならば、菰田陽生(山梨学院/投手/194センチ・102キロ/右投右打)でいこう。
彼だって十分に「甲子園」が生んだスターだ。投手としてのスケールはもちろん、二刀流の可能性も大いに秘めているだけに、ファンの抱く夢も膨らむ。投手として将来のエースを目指すのもいいし、打者として大山悠輔、佐藤輝明の後継を担うロングヒッターを目指すのも面白い。これほど夢を描ける高校生は、そうそう現れない。
将来のエース候補、あるいは4番候補を1位で獲得できたなら、2位では「近未来のリードオフマン」を狙いたい。
ドラフト上位は、どうしても投手や強打の内野手に人気が集まる。その点、リードオフマンタイプの逸材なら、2位まで残っている可能性もある。
地元・兵庫県高砂市出身の榊原七斗(報徳学園→明治大/外野手/173センチ・79キロ/左投左打)は、近本光司とはひと味違った「本塁打を打てるリードオフマン」になれる資質を持っている。
もし榊原が先に他球団に指名されていたら、明治大で榊原の先輩だった直井宏路(桐光学園→明治大→NTT東日本/外野手/172センチ・76キロ/左投左打)に切り替えたい。
近本と同様、盗塁王を狙えるスピードと鋭い野球勘の持ち主だ。近年は打力もぐっと向上し、盗塁王を狙ううえで欠かせない出塁能力にも磨きがかかってきた。近本が元気なうちに、その後継候補を確保しておく。これも常勝軍団を維持するためには必要な補強だろう。
【遊撃手は打力より守備力を優先】内野陣に目を向けると、三冠王に輝いた佐藤輝明が残留することを前提として、唯一、不安を感じるのが遊撃手ではないか。ほかの内野3ポジションがほぼ固定されている一方、遊撃手だけは熊谷敬宥、元山飛優、小幡竜平、木浪聖也と、複数の選手が入れ替わりながら守ってきた。
以前、ある偉大な投手が、こんなことを言っていた。
「ほかのポジションはともかく、ショートだけはいつも同じ選手に守っていてほしいね。マウンドにいて後ろを振り返る時って、なぜかいつもショートなんだよね。そこにいつも同じヤツがいてくれると、すごく安心するんだよ」
そういえば、阪神には古くは吉田義男、藤田平、平田勝男、そして鳥谷敬と、絶対的なショートストップが君臨してきた歴史がある。
次世代のレギュラーとして期待されているのは、プロ3年目の山田脩也だろう。今季はファームで93試合に出場し、打率.214、4本塁打、19打点。遊撃手としてはチーム最多の69試合に出場したものの、20失策、守備率.920と、まだまだ課題を残している。
高校生遊撃手は、ともすれば打撃面を高く評価して指名するケースが多い。だが、プロ入り後に一軍の壁を突破できない要因のひとつが、守備力の不足だったりする。ならば、最初から守備力を最優先にして指名してもいいのではないか。西武の滝澤夏央などは、そのすばらしい成功例だ。
候補として挙げたいのは、宮本紘成(海星/遊撃手/170センチ・75キロ/右投右打)、高田瑛大(えいだい/都城/遊撃手/172センチ・70キロ/右投左打)、若藤芽空(わかとう・ひそか/高川学園/遊撃手/177センチ・70キロ/右投左打)の3人だ。
宮本、高田については、プロの現役遊撃手と比べても遜色ないほどのフィールディング能力をすでに備えている。甲子園で何度もプレーした若藤は、柔らかなグラブさばきに加え、スピード感あふれる快足も兼ね備える。
打撃はプロに入ってから鍛えればいい。まずは、投手が安心して背中を預けられる遊撃手を育てる。そんな発想で選手を獲得するのも、今の阪神なら十分に可能だろう。
【坂本誠志郎直系の頭脳派捕手】そして今年は、坂本誠志郎の後継として期待できる、ヘッドワークに長けた捕手がいる。福原聖矢(東海大菅生→明治大/捕手/167センチ・74キロ/右投右打)だ。
坂本にとっては明治大の後輩にあたり、まさに「直系」の後継候補と言っていい。小柄ではあるが、捕手として非常に高い感性を持ち、ディフェンス能力でメシを食っていけるだけの資質を備えている。
名門・明治大では主将の重責を担い、以前はやや非力に感じられた打撃にも、実戦のなかでインパクトの力強さが見えてきた。
二塁送球タイムが何秒、遠投が何メートルといった数字だけでは、捕手の能力は測れない。投手の持ち味を引き出し、打者の狙いを読み、試合の流れをつくっていく。そうした「ゲームメーカー」タイプの捕手は、なかなか出てこないものだ。坂本という格好のお手本がいる今の阪神だからこそ、ぜひとも獲得を考えてほしい選手である。
最後に、「大きなお世話だ!」と叱られてしまうかもしれないが、書き手としての率直な印象をひとつ。
今の阪神は、実に洗練されたチームになった。技術も高く、試合運びもうまい。だからこそ、あえて言わせてもらえば、ユニフォームを泥だらけにして、なりふり構わず体当たりでプレーするような、泥くさいタイプの選手がもう少しいても面白いのではないか。ムードメーカーというか、たったワンプレーで試合の雰囲気を一変させてくれるような存在だ。そんなガムシャラな野球ができる、うってつけの「ガッツマン」がいる。
今津慶介(旭川東→慶應義塾大/二塁手/180センチ・80キロ/右投左打)と、小原大和(花巻東→慶應義塾大/外野手/174センチ・76キロ/右投左打)だ。
たまたま、どちらも「慶應ボーイ」になったが、一般的に抱かれるスマートなイメージとは正反対。火の出るような闘志を前面に押し出す、根っからのガッツマンだ。
もちろん、気持ちだけで野球をしているわけではない。たしかなバットコントロールに加え、振って、振って、振り抜いて鍛え上げたスイングには、十分なパンチ力がある。守備でも、打球に対して身を挺して向かっていく。そのひたむきな姿勢は、きっとチームメイトの胸を強く打つことだろう。
今の阪神に足りないものを探すのは、簡単ではない。それほどまでに戦力が充実している。だからこそ、目先の弱点を埋めるだけでなく、将来のエース、4番打者、リードオフマン、守備の要となる遊撃手、坂本の後を継ぐ捕手、そしてチームに新たな活力をもたらす選手を、今のうちから揃えておきたい。
安倍昌彦●文text by Masahiko Abe
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