元ゴールドマン・サックス社員が明かす、巧妙すぎる「ロマンス詐欺」の手口。“この言葉”が出たら要注意

※写真はイメージです(Unsplash)

元ゴールドマン・サックス社員が明かす、巧妙すぎる「ロマンス詐欺」の手口。“この言葉”が出たら要注意

10月11日(日) 8:54

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恋愛感情や親近感に乗じて巧みに金銭を騙し取る、ロマンス詐欺。SNSやマッチングアプリの発達、投資や副業のブームもあり、年々その巧妙さを増している。

今回話を聞いたのは、かつて米系大手投資銀行のゴールドマン・サックスにてコンプライアンスマネージャーをしていた千葉祥子氏。

金融犯罪防止のプロであり、『奪われない!お金を守る7つの習慣』(きずな出版)の著者でもあるが、自身もロマンス詐欺に引っかかりそうになったというほど、手口が巧妙化しているとか……。そんな彼女に、最近のトレンド、被害の実態について語ってもらった。我々は被害を未然に見抜くことはできるのだろうか?

「2400万円渡したけど音信不通」ゴールドマンに届く声

――ゴールドマン・サックス時代には、どのように被害者の相談を受けていたのですか。

千葉祥子氏(以下、同):会社の代表番号に電話がかかってくるのです。それが、詐欺的な要素があるものは、金融犯罪コンプライアンスを担当していた私のところに連絡が来ていました。基本、外部の個人の方と話をすることはなかったのですが、その時だけはお話を聞く機会があったのです。

そこでは「元ゴールドマンの営業の〇〇さんに、お金を渡してしまったんですが、本当にそんな人いるんでしょうか?」といったような相談が多く、金額は様々ですが多いものでは2,000万円を超えているものもありました。

「お前はおばさんだ」アメリカの婚約者が豹変

――金融犯罪のプロの千葉さんですが、ご自身もロマンス詐欺に遭いかけたことがあるのだとか……。

30代後半の頃、旅行でロサンゼルスに住む友人を訪ねたときのことです。友人の紹介で知り合った、50歳前後の男性と知り合いました。彼は裕福で、豪邸に住んでいて、食事や観光をしているうちに「結婚を前提に付き合おう」と言われたんです。

日本に帰国後も連絡を取り合い、再度ロスに行ったりしながら、トントン拍子に話が進んでいきました。親にも結婚することを報告しました。

――まさに順風満帆な国際結婚に聞こえますね。

会社に「渡米するので辞めます」と伝えた直後、彼からメールが届いたんです。

「自分のビジネスのキャッシュフローが回らなくなった。今すぐ支払いに必要だから1万ドル(約150万円)を送金してほしい、1週間経ったら返すから」と。共通の友人に泣きながら相談したら、強く止められました。

送金はできないことを彼に伝えると、相手の態度が一変しました。「正直、あんたはおばさんだ。外見だって本当は好きじゃなかった」と、暴言の嵐で。そこで初めて悟りました。

最初から結婚する気なんてなかったのではないか。お金が目的だったんだ、と。

狙われるのは「40~50代の、さみしい人たち」

――「まさかこの人が」という社会経験や金融知識がある人が騙されるケースは他にもあるのでしょうか。

薬剤師の女性・Aさん(47歳)のケースがあります。きっかけはFacebookに届いたメッセージでした。最初は他愛もないやり取りでしたが、相手からは毎日マメに連絡が届く。
でも、急に連絡を絶つんです。心を許し始めたタイミングで。

――かなり巧妙なテクニックですね。

急に引かれることで不安になり、相手のことを気にするようになりますよね。そのあと「仕事が忙しくてSNSをあまり見られないから、LINEでやり取りしよう」と誘われて、気づけば彼女の方がメッセージを送るようになっていたそうです。

依存状態へ陥ったタイミングで、彼は「投資でこんなに儲けた」とスクリーンショットを見せて信頼を得て、「将来の2人のために、僕が運用して資産を増やしてあげるよ」と提案します。
Aさんは、新NISAブームで「投資や資産形成は大事」という意識はあったものの、具体的な金融知識を持ち合わせておらず、指示通りに360万円を送金してしまいました。

数日後に男からの返信は途絶え、今どうしているのかFacebookを確認した時には、すでにFacebookではアカウントが削除されていたそうです。

――被害者に多い特徴はありますか。

女性は40代以上で、それなりに資産は持っているけれど、自己肯定感がそこまで高くない方たち。男性の場合はもう少し年齢層が上がるのと、頼りにされたい、褒めてほしい、という欲求を抱えている人が多いです。

共通しているのは、堅い職業の方ですね。やわらかい職業の方は世渡りに慣れているから(笑)。あとは「さみしい」と感じている人たちです。

今はSNSのやりとりから繋がることが多いので、詐欺師側が美男美女である必要はありません。だから外見の好みは関係ありません。

――最近の詐欺に顕著なトレンドはあるのですか。

昔は「事業が倒産しそうだから助けて」といった泣きつき方が主流でしたが、今のトレンドは複合詐欺と読んでいるのですが、詐欺が複合的になっているのです。例えばロマンス×投資詐欺です。

最終的に被害額が、1億円に上った例もあります。

「絶対に儲かるから」被害は1億円に

――1億円ですか?!

金融機関で働く女性・Bさん(53歳)は、ある男性から「絶対に儲かるから」と言われて、数十万円程度を預けました。

それで、実際に利益が出た分は対面で「利息の現金」を受け取ったそうです。目の前で現金を渡され、同じように現金を受け取りに来ている(ように見える)他の投資家とも顔を合わせることで、「これは本物だ」と信じてしまうんですね。

そのあとで「今の定期預金、解約してこっちに回したほうがいいよ」とそそのかされて、その通りにして、実のお姉さんにも「絶対に儲かるから」と勧めました。

Bさんは8000万、お姉さんは2000万円、あわせて1億円。でもそれは会社ごとダミーで、結局戻ってきませんでした。

――投資詐欺の他にトレンドはありますか。

ロマンス×副業詐欺です。

事務職の女性・Cさん(42歳)は、Instagramでメッセージが来た男性と仲良くなるうちに「この金融商品を友達に売ったら10%の手数料が入るよ。例えば、1000万円売れば100万円が入ってくる」と勧誘されました。

でも「そのためにはまず、50万円を払ってエージェントになる必要がある」と。

――エージェント、ですか。

かっこいい言葉に聞こえるけど、金融知識のない個人が資格もなく金融商品を売るなんて絶対にNG。50万円だったら10%だけど、初期費用をもっと払えばパーセンテージを上げることができる。そういう仕組みです。

でも、その勧誘した家族や友人にお金が戻ってこなかった場合、詐欺師の手先として周囲を巻き込んでしまうリスクすらあります。被害者のはずが、加害者になるんです。

危険信号は「エージェント」「現金」「あなただけ」「今すぐ」

――巧妙化するロマンス詐欺ですが、見抜くためのキーワードはありますか。

キーワードというより、こういうワードが出てきたら危ない、というレッドフラグ(危険信号)を伝えています。例えば、先程のエージェントと、現金。「銀行に記録が残ると国に没収される」などと適当な理由をつけて現金を持ってくるように求められたら、すぐ詐欺ではないかと疑って欲しいです。

あとは、急いで、今すぐ、と判断を焦らせてくること、「あなただけに伝える特別な話だから、他の人に話しちゃダメだよ」と秘密にさせようとすることです。

――好きになってしまったら、そのレッドフラグも頭から抜け落ちてしまいそうです……。

一対一の関係をやめてみてください。「友達も一緒に会おうよ」「ダブルデートしよう」と提案してみましょう。これは詐欺を見抜くだけでなくて、その人となりを知るいい方法なんです。

詐欺に遭った人は、最後まで一縷の望みを信じて、詐欺ではない証拠を探します。でも、いろいろ確認してやはり詐欺だったとわかった時に、被害者はよくこういいます。「やっぱり……」。冷静でいたら気づいたかもしれない違和感も、恋愛感情が判断を鈍らせてしまう。

だから、恋愛相手から投資や送金を求められた時点で、まず第三者に相談すること。恋愛感情と金銭判断を切り離すことが、お金を守ることに繋がります。

***

相手から投資や送金を持ちかけられた時こそ、ひとりで結論を出さず、友人や家族、警察などに相談することが、被害を防ぐ第一歩になる。

「さみしい」という心の隙間に、お金を入りこませてはいけない。

<取材・文/綾部まと>

【綾部まと】
ライター、作家。主に金融や恋愛について執筆。メガバンク法人営業・経済メディアで働いた経験から、金融女子の観点で記事を寄稿。趣味はサウナ。X(旧Twitter):@yel_ranunculus、note:@happymother

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