福田正博フットボール原論
■サッカー日本代表の4連戦での新戦力を福田正博が評価。DF陣ではケガによる離脱者が多く出たなか、瀬古歩夢の台頭が見られた。11月の代表戦、そして来年1月のアジアカップはどんな顔ぶれになるだろうか。
>>前編「サッカー日本代表攻撃陣の新戦力の出来は?」
日本代表4連戦でDF陣の中心として活躍を見せた瀬古歩夢photo by Hisato Ushijima
【安定感のあるプレーを見せた瀬古歩夢】
森保一監督には不思議な力がある。サンフレッチェ広島を率いた時代から、主力選手を欠くと新戦力が頭角を現すのだ。
指導者には移籍や故障で新たな選手を使わざるを得ない状況が多々起きるものだが、森保監督の場合はそこで起用した選手が、離脱した主力選手を超えるほどの選手へと成長するケースが少なくない。日本代表監督を務めてきたこの8年間でも、何度もそうして成長した選手が現れた。
9月下旬から10月上旬の4連戦でもそれは見られた。DF瀬古歩夢だ。
当初のDF陣の招集メンバーは、瀬古のほか、板倉滉、渡辺剛、冨安健洋、伊藤洋輝、鈴木淳之介の北中米ワールドカップ組に、安藤智哉を加えた選考だった。
だが、冨安がケガで不参加、合流後には安藤と渡辺が負傷のために相次いで離脱。代わりに荒木隼人と望月ヘンリー海輝のJリーグ組が追加招集になったなか、瀬古がひと際存在感を高めた。
瀬古の北中米ワールドカップでの立ち位置は、渡辺とともにDF陣のバックアッパー的なものだった。ポテンシャルの高さは疑いようのないもので、フィジカル強度にも優れているが、いい時と、雑なプレーが目立つ時の差が激しい印象だった。
しかし、今回はDF陣が手薄になったなかで4試合ともスタメン出場し、うち3試合はフル出場。ボールホルダーへのチェックの厳しさや当たり負けない強さに加えて、4試合すべてで集中力が途切れることなく安定感のある守備を見せた。
安定感があって、センターバックなら右も中央もでき、ボランチでもプレーできるユーティリティー性もある。今の瀬古なら今回は故障で呼べなかった選手たちが戻ってきても、日本代表DF陣のファーストチョイスになっても不思議ではない。そう感じさせてくれた4試合だった。
【代表デビューを飾った中野就斗、小久保玲央ブライアン】
中野就斗は今回が日本代表初招集で、ベネズエラ戦では3-2-4-1の右ウイングバック、ニュージーランド戦では4-2-3-1の右サイドバックとしてスタメン出場。今後も招集されるだけのプレーを見せてくれた。
プレースタイル的に言えば、カタールワールドカップの日本代表だった山根視来に似ている。機を見るに敏で、気の利いたポジショニングをする。ただ、山根との違いはフィジカル能力の高さだ。中野がロングスローをすればピッチ中央まで強いボールを放り込める。身長も183cmあり、センターバックとしてもプレーできる。海外移籍して強度の高い日常に身を置いて揉まれれば、さらにひと皮剥けることだろう。
このポジションには、今回は未招集だった菅原由勢、橋岡大樹などもいる。中野と同世代の彼らが切磋琢磨しながらレベルアップを遂げていけば、日本代表の底上げにつながるだけに楽しみにしている。
佐野航大は、ウルグアイ戦では兄・海舟と並んでボランチでスタメン起用され、攻守で持ち味をしっかり発揮。ニュージーランド戦は後半に鎌田大地に代わって出場した。
昨シーズンはクラブでも、もう1列前のポジションでプレーしていたが、今夏に移籍したPSVではボランチで起用されている。それもあって、森保監督は今回ボランチで試したと思うが、プレー時間が限られたなかでしっかりとアピールできていた。
GKは鈴木彩艶、早川友基の北中米ワールドカップ組に加え、約1年ぶりに招集された小久保玲央ブライアンがベネズエラ戦で日本代表デビューを飾った。
鈴木彩艶は後半から出場したベネズエラ戦こそケガの影響もあってか低調なパフォーマンスだったが、その後の試合ではビルドアップを含めて本来の安定感のあるプレーを見せた。
早川はウルグアイ戦でフル出場。ビルドアップでのミスから招いたピンチで失点したが、彼にとって不運だったのは、日本代表の正守護神が鈴木彩艶という点だろう。鈴木彩艶はフィードのコントロール精度とキックレンジで世界屈指との評価を高めている。早川もフィードが得意なGKだが、そこを意識しすぎたがゆえにミスにつながったのかもしれない。
小久保はデビュー戦ながらも、しっかりアピールはできていた。ビルドアップのところでもDF陣としっかり連係しながら安定していた。高さもあって、シュートストップ力も高いGKだけに、日本代表の活動に慣れていけば、さらに成長を遂げてくれるはずだ。
【11月、そしてアジアカップの招集メンバーに注目】
日本代表の次の活動として、11月にシンガポールでブラジル戦、パラグアイ戦に臨む。今回招集された選手たちをもとに、故障で招集できなかった選手たちの回復具合を見て選手の入れ替えは行なわれるだろう。
たとえば、北中米ワールドカップメンバーだったFW小川航基は、今回は招集されなかった。選手のクラブにおける立ち位置を重視する森保監督だからこそ、今夏にJリーグに復帰した小川がFC町田ゼルビアでの活動にまずは集中できるように見送った可能性はある。それだけに小川が今後のJリーグで"違い"を発揮していけば、当然ながら招集リストに載るだろう。
ほかの選手たちも同様だ。まずはクラブでの立ち位置を確固たるものにし、代表活動に注力できる選手から呼ばれるはずだ。そして、それは来年1月からのアジアカップ日本代表選考にも通じる部分でもある。
Jリーグ(J1)は、年内は12月19日で中断し、年明け2月に再開する。したがって、Jリーグからアジアカップに招集された選手は、高い集中力で大会に臨める。
しかし、ヨーロッパ組はシーズン真っ只中。クラブでの序列が微妙な選手がアジアカップに招集されれば、代表活動中に自チームでのポジションを失うリスクが高まる。アジアカップに集中しきれない姿勢は、チーム一丸となって戦う空気に水を差しかねない。
アジアカップでの優勝確率は、日本選手たちがワールドカップに挑む時のような集中力や緊張感を全員が持てれば、相当な高さになるだろう。
だが、残念ながらアジアカップに対する選手たちのモチベーションは、ワールドカップのそれよりは劣りやすい。そこに加えて選手がクラブでの事情を代表活動に持ち込めば、チームとしての一体感を欠き、足もとをすくわれかねない隙が生じる可能性がある。
そうした危うさが海外組主体の日本代表に同居することを、森保監督はこれまでの経験から承知しているだろう。それだけに、11月の日本代表活動に誰が呼ばれるかに注目している。
text by Ichiro Tsugane
【関連記事】
◆【前編>>>】サッカー日本代表の新戦力を福田正博がチェック「次のチャンスが与えられる爪痕は残した」
◆【注目記事】サッカー日本代表、ひさびさの4バックは機能したか?3バックでも4バックでもアジアカップへ残る不安
◆【自転車】「これが五輪でもお前は脚を止めるか」世界選手権に挑む内野艶和が自らに問い続ける言葉
◆【動画】サッカー日本代表2030年W杯のメンバーを大予想!守備の要&キャプテン候補は!?
◆【動画】対談林陵平×岩政大樹が語る、2030年ワールドカップへ日本が積み上げるべきもの