福田正博フットボール原論
■サッカー日本代表の4連戦は、北中米ワールドカップを戦った常連組が力を発揮したなかで、新戦力も起用され、将来の主力になるべくアピールした。その出来はどうだったか。福田正博氏がチェックした。
日本代表デビューとなったウルグアイ戦でゴールを決めた松木玖生photo by Daisuke Nakashima
【連係のよさを見せた鈴木唯人】
サッカー日本代表は9月下旬から10月上旬の4連戦でウルグアイに3-1、ベネズエラに2-1で2連勝。3戦目からのキリンカップは、エクアドルに0-0ながらもPK戦を5-4で制し、決勝ではニュージーランドに2-1で勝利して優勝を手にした。
まず、この4試合で印象的だったのは、対戦国の強度の高さだ。親善試合はともすると相手が集中力や強度を欠いたプレーに終始するケースもあるが、この4カ国は違った。どこも4年後に向けたスタートを切ったばかりで、日本相手に自分たちの現状を把握しようという意図があったのだろう。"本気度"を持って臨んできた。
そうした相手に勝利できたことは、来年1月のアジアカップに向けた第3次森保一監督体制にとって、いいスタートになった。
森保監督はこの4試合に新たな選手たちを数多く招集した。日本代表がさらなる成長を遂げるには、日本代表常連組に取って代わる新たな戦力の台頭が必要だからだ。ただ、この4試合を振り返ると、試合を決めるところで違いを見せつけたのは、常連組だった。
それでも、新戦力たちがダメだったわけではない。まだまだ成長が必要なものの、彼らに次のチャンスが与えられるだけの爪痕は残したように思う。
今回、もっとも注目していたのは鈴木唯人だった。北中米ワールドカップのメンバーだったものの、故障の影響もあって本大会では存在感を発揮するには至らなかった。久保建英らと同じパリ五輪世代で、今後は日本代表の中心選手になることが求められるなか、今季はブンデスリーガ開幕戦でハットトリックを決めるなど好調だった。そして、第1戦のウルグアイ戦、第3戦のエクアドル戦に左シャドーで先発出場し、周囲とのコンビネーションでその片鱗を見せてくれた。
これまでの日本代表の右サイドからの崩しは、久保建英、堂安律の連係によるパターン。だが、エクアドル戦では鈴木唯人がゴール前で右サイドへ寄っていき、久保と堂安のふたりの連係に加わるシーンが見られた。鈴木唯人が右に流れれば相手DFはマークにつかねばならず、それによって生まれるゴール左前のスペースにボランチや左アウトサイドの選手が入り込んでいくことができる。
相手がゴール前を固めてくることが想定されるアジアカップでは、こうした相手DF陣への揺さぶりが不可欠なだけに、そうしたプレーの頻度と精度を高めてもらいたいところだ。
あえて注文をつけるなら、やはり"数字"を残してほしかったと思う。ゴールという目に見える結果で、日本代表での地位を不動のものにしてもらいたいし、それができる選手なだけに期待している。
【ライバルが多い松木玖生、田中聡】
"結果"という面で言えば、松木玖生は日本代表デビューとなったウルグアイ戦で初ゴール。文句のつけようのない結果を残した。
ただ、松木の場合、日本代表で地位を築いていくにはポジション問題がつきまとうだろう。彼は青森山田高校3年時にインターハイ、高円宮杯プレミアリーグEAST、高校選手権を制し、鳴り物入りでJリーグ(FC東京)入りしたのを見てきたが、彼のよさが最大限に発揮できるのは"王様"のポジション。トップ下で自由にプレーできるのがいいが、今の日本代表にはそのポジションがない。
持ち味を見れば3-4-2-1の右シャドーが最適なのだと思うが、今の日本代表の序列では久保がいて、堂安と伊東純也もいる。それもあってウルグアイ戦でスタメン起用されたのは右ウイングバック(WB)のポジションだった。中央に切れ込んでシュートを決めたように、持ち味の左足のキック力が生きるところではある。
だが、このポジションには縦への突破も求められる。堂安はもともとアウトサイドでの起用当初、縦突破がないことで相手DFに怖さを与えられなかったが、そこから縦突破を磨いて今に至る。松木がこのポジションを自分のものにするためには、彼の課題もそこになるだろう。
これが4-2-3-1の右ウイングなら、縦への突破は右サイドバックも担ってくれるし、松木がトップ下を務める可能性も出てくるだろうが、4-2-3-1は3-4-2-1よりも攻撃的な選手のポジションがひとつ減る。そのため日本代表での生き残りはさらに厳しいものになる。そうした現実を理解しながら、松木がどういう成長を見せるのか。左足のキックとフィジカルの強さという武器を極限まで高め、日本代表での立ち位置を築くことを期待している。
ボランチで起用された田中聡は、ボールを刈り取る力ではワールドカップでも戦える基準にあることを見せてくれた。ボールをつなげられるし、技術力や判断力もあるため、ボールを受けることをいとわない。ボールロストになるシーンもあるが、そこは今後の成長余地でもある。
ただし、ボランチには鎌田大地、佐野海舟、田中碧がいて、佐野航大も今回ボランチで起用された。未招集には守田英正、藤田譲瑠チマなどもいる。
ただでさえ層が厚いうえ、鎌田、佐野海舟が充実し、実績のある田中碧が守備強度や粘り強さで目を見張る成長を遂げているだけに、日本代表に招集されても出番は限られるだろう。それでも、出場機会は巡ってくると信じ、所属クラブで課題に向き合い、しっかりした準備をしながら、ひとつずつステップアップしてほしいと思う。
【谷村海那の代表ストーリーは始まったばかり】
FWでは28歳にして代表初招集となった谷村海那に注目していた。今季はJリーグで得点ランキング3位タイにつける(第8節終了時)活躍を見せている谷村の実力が、日本代表でどれだけ発揮できるかを楽しみにしていた。
ベネズエラ戦の後半36分から出場して日本代表デビューし、続くエクアドル戦ではスタメン出場。1トップの谷村以外は日本代表の主軸というメンバー構成だったが、谷村にとってはゲームの流れが難しい展開になってしまった。
日本代表の攻撃はサイドに起点をつくってからの展開が多く、谷村がJリーグで見せるような中央でボールを収めて起点になったり、ボックス内でシュートに持ち込んだりというプレーがあまりできなかった。
初めて組むメンバーのなかで、お互いの特徴やボールが出るタイミングを完全に理解し合うまでの難しさもあったのだろう。谷村も周囲の選手たちもタイミングを合わせようとしすぎるあまり、余計にズレてしまったように見受けられた。それでもいい形でボールを受けた時にシュートまで持ち込んだのはポジティブな材料だった。
だが、上田綺世と比べれば物足りない面が目立ったのは事実だ。上田だけではなく、ウルグアイ戦で1トップに起用された前田大然も、前線でしっかりボールを収めていた。前田は谷村と同じ28歳で、あれほど足もとの技術を高めているとなれば、谷村が日本代表に割って入るには磨くべき課題が少なくない。
1トップとして出場する以上、厳しい状況のなかでも前線でボールを収めることや、相手DFラインを下げさせるアクションを起こすプレーが求められる。今後はそうした面で存在感を示してほしい。
JFLからキャリアをスタートして日本代表にまで駆け上がった彼のストーリーには夢がある。ただ、その物語はまだ始まったばかりだ。日本代表という特有の空気感を味わい、さらに成長する糧を得たはずだ。課題に向き合って成長を続ければ、再び招集されるチャンスはあるはずだ。日本代表の戦力となって、谷村の物語がさらに壮大なものへと昇華することを期待している。
>>後編「サッカー日本代表、新たな主力へ台頭したDFとは?」
text by Ichiro Tsugane
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