近年急速に普及している生成AIは便利な一方、AIの情報を信じすぎてしまうことで、周囲からの信用を失ったり、大事な場面で思わぬ大失敗に見舞われたりすることもある。
今回、専門学生時代に生成AIを使用したことで、人生が崩壊しかけてしまうほどの大失敗をしてしまったというユヅルさん(仮名・24歳・男性)が、自身の経験を赤裸々に語ってくれた。
いつも通りAIを使って課題を提出
ユヅルさんは今から4年前、とある市内の専門学校に通っていたという。将来的にクリエイティブ職への就職を希望しており、大学でも就職に直結するような分野を専攻していたそう。
「将来はマスコミやメディア関係で働きたくて、映像制作やライティングなどを学べる3年制の専門学校に通っていました。なかなか学費も高かったんですけど、自分の熱意を親に伝えて、なんとか入学させてもらいました」
入学当初は、勉学にかなり力を入れて励んでいたというユヅルさん。しかし2年生の後半からはAIを使って課題をこなすようになっていったという。
「ちょうどその頃からChatGPTがサービス開始したので、試しに小課題で使ってみたんです。
素早く課題を仕上げてくれて、かつ課題の評価もなかなか良くて。このことをきっかけに、課題でAIを使うことが常態化してしまったんです。“これは大発見だ!”って当時はかなり浮かれていました」
ユヅルさんは、AIを使うことに対してさほど罪悪感はなく、むしろ効率よく終えられるなら積極的に使ったほうが得だと考えていたそう。
ある日、ユヅルさんが受けていた授業で、期末評価に関わる大きな課題が出されたという。
「webライティングの授業で出された2年生最後の集大成となる課題でした。
課題の内容は、ここ1か月で印象に残ったニュースについて、データを使いながら要約と考察を4000字でまとめるというもの。僕はいつも通りAIに課題文をすべて作成してもらうことにしました。
要約、データ、専門家のコメントまで、すべてAIでリサーチし、その情報をさらにAIを使って繋げて一つの課題文に仕上げました。構成もよくできたので当時は自信がありました」
教授に呼び出され、まさかの事態が発覚
期日に余裕を持って提出し、無事に課題を終えたユヅルさん。
しかし1週間後の期末評価期間中、提出したwebライティングの課題の授業を担当する教授に突然呼び出されたという。
「教授からは『データの整合性が取れてない』と指摘されました。出典不明の箇所が複数あったんです」
教授に「このコメントをしている識者、調べても出てこないんだけど、どこの情報?」と問われ、その場でパニックになってしまったというユヅルさん。“もう言い逃れはできない……”と決心し、正直にAIを使ったことを話したそうだ。
「これまでAIを使った課題では問題がなかったので、今回も一次情報の精査などはせずAIに提示された情報をそのまま使ってしまったんです。
教授からは厳しい口調で『存在しない人の発言を事実みたいに書くの、それはもう課題としてアウトだよ』と言われてしまいました」
ユヅルさんはwebライティングの授業では、これまで高評価のA判定をもらっていたものの、このトラブルがきっかけで一気に最低ランクのEにまで下がってしまったそうだ。
校内全体を巻き込んだ大問題に。友達からも距離を置かれ……
その後、事態を重く受け止めた教授が、校内にユヅルさんの課題の件を共有したそう。
「当時校内で、AIで課題を仕上げたことが発覚した事例は、僕が初めてだったようです。
翌々日に学校から、“課題におけるAI使用に関する注意”という内容のメールが全学生宛てに送られました。そのメールに僕の名前は出ていなかったものの、『webライティングの授業で2年生の学生がAIを使用した』と明記されてしまっていたんです」
webライティングの授業を受講していた学生は十数名と限られていたそうで、後日ほかの学生たちから、ユヅルさんがAIを使った学生だと特定されてしまったとのこと。
これまで卒なく課題をこなし、校内でも優等生のように慕われていたユヅルさんだが、このことがきっかけで、校内に悪い評判が広まってしまったという。
「友人からは“ヤバい人”扱いされるようになって、そこから距離を置かれてしまいました。ときどき廊下ですれ違う面識のない学生からも“あの人、AIの人っぽいよ”と噂され、かなりつらかったです。
だんだんと学校に居づらくなってしまって、学校をいっそ辞めようかと本気で考えたことも……」
学校から両親に報告、母親の涙
また、このトラブルについてはユヅルさんの親にも学校側から事情が伝えられたという。
「僕が将来やりたいことのためだったらと、専門学校に入学させてくれた親には本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。母親からは『あなたがやりたいことだと言うから、真面目に頑張っているって期待していたのに……』と泣かれてしまいました。
高い学費も払ってくれていたので、両親を失望させてしまったことに自分自身すごく胸が痛くなりました」
一時は退学を考えたというユヅルさんだが、親の期待に応えるため、残り1年の在学期間は真面目に勉学に取り組んだという。
「あのトラブルが起きてからは、AIは補助程度にしか使わず、AIが提示した情報も鵜呑みにせずに、しっかり一次情報を精査するということを徹底するようにしています。もうAIで人生が崩壊するような体験は絶対したくないです」
――AIの情報を丸々信じたことで、友人も失い、親にも泣かれてしまったユヅルさん。AIは使い方に十分注意しなければ、職を失ったり、大事な人を失ったりしかねない危険なツールであるということを、改めて意識する必要があるのかもしれない。
(取材・文=瑠璃光丸凪/A4studio)
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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